“スーパーバイクのホモロゲーションマシン”という謳い文句は、多くのスーパースポーツ乗りにとって魅惑的だ。でも、実際にワークスマシンと市販車にどの程度の違いがあるのか、直接比較で試す機会はほとんどない。ホンダイタリアはこの問いに対し、ホンダレーシングUKの協力を得てタイムアタックを敢行した。
ブリティッシュスーパーバイク仕様 vs CBR1000RR-RファイアーブレードSP
ホンダが誇るスーパースポーツ「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」は、MotoGPマシンのレギュレーション上限と同じボア径φ81mmの並列4気筒エンジンにはじまり、フレームやエアロダイナミクスにおいても同社のワークスマシンRC213V、およびその公道版であるRC213V-Sで得たノウハウを参考にして開発された、真のホモロゲーションマシンだ。
218ps/14500rpmという最高出力は、ドゥカティのパニガーレV4R(221ps/15500rpm)に次ぐスペック。しかし実際には、逆回転クランクの4軸構成であるパニガーレに対し、3軸構成のCBR1000RR-Rはクランク軸出力でこそ3ps差であっても、後輪出力では同等と言われている。
そんな“Born to Race”のCBR1000RR-RファイアーブレードSPは、ノーマル状態でどのくらいのポテンシャルを持っているのだろうか。特に、スーパーバイク選手権を走るレーシングマシンとどの程度の違いなのかは、スーパースポーツを所有するライダーならずとも気になるところだが、一方で実際にその違いを試すことができる機会は極めて限られている。
当たり前ではあるが、市販車のCBR1000RR-Rに乗ることはできても、比較してみたいスーパーバイクマシンに触れる機会があるライダーは、とても少ないからだ。
そんな興味を実際に行動に移してしまったのはホンダイタリアだった。ブリティッシュスーパーバイク選手権(BSB)に参戦しているホンダレーシングUKの協力を得て、マシンとライダーを用意。走るのはBSBに参戦中のグレン・アーウィン(Glenn Irwin)選手で、2020年にはデビューイヤーでランキングは4位を獲得している。
スーパーバイク仕様のファイアーブレードとストックのCBR1000RR-R SPは、ともにピレリ・ディアブロレーシングのスリックタイヤを装着。コンパウンドはSC0、同じ日に同じ条件でグレン・アーウィン選手がライドした。
タイムアタックは6周で行われ、CBR1000RR-R SPがその最後に記録したのは、BSB仕様の1分36秒182からわずか2秒872遅れの1分39秒054だったという。信じがたいことに、CBR1000RR-R SPは公道を走るためのミラー、ヘッドライト、ウインカー、ナンバープレートホルダーの全てを装着したまま、このテストの1か月後に開催された2021年開幕戦のスーパーストッククラスの予選で、真ん中に入れるほどのラップタイムを記録したのだ。
グレン・アーウィン選手のコメント
「今日の経験は印象的でした。ディーラーから持ってきたままのノーマルCBR1000RR-R SPが、コース上でこれほどのパフォーマンスを見せたのは驚きです。スーパーバイク仕様のファイアーブレードとよく似ていることには驚きませんでしたが、ノーマル仕様はなんの調整もしていなかったのです。自分でレバーを調整して、数周かけてマシンがフィットしてくる感触を得ました。でも、時間があればもっと自信を付けることが可能で、さらに速く走ることもできたと思います」
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