探求・エンジンオイルの世界[モトメカニック]

ヤマハ製エンジンとの並行開発で進化を続けるエンジンオイル「ヤマルーブ」【オイルは液体パーツ】

ヤマハ製エンジンとの同時開発で進化を続けるエンジンオイル「ヤマルーブ」

●文/写真:モトメカニック編集部(栗田晃) ●取材協力:ヤマハ ワイズギア 

安価なオイルを頻繁に交換するべきか? 高価なオイルなら長く使えるのか? エンジンオイルを考える際、オイル単体の性能やブランドで判断され、語られることもまだまだ多い。そんな風潮をよそに、ヤマハは半世紀以上前からエンジン開発と並行してエンジンオイル開発に取り組んできた。「YAMALUBE(ヤマルーブ)」と名付けられた純正オイルが生み出された経緯に迫ってみよう。

オートルーブの分離給油がオリジナルオイル開発の契機

オイルメーカーがモータースポーツ参戦を通じて開発した製品は、実績があるからこそ高性能。一方でバイクメーカーが自社ブランドで販売するオイルは、安全で無難だがこれといって特長のない製品ばかり。エンジンオイルに対してそんなイメージを持つサンデーメカニックは少なくないだろう。

バイクメーカーのエンブレムが付いているとはいえ、自ら精製するわけではなく石油メーカーから供給されたものだから、”餅は餅屋”で専業メーカーの方が優れているという考え方も間違いではない。

だが、そんな憶測とはかけ離れた次元で自社内でのオイル開発を長く続けてきたのがヤマハである。2ストローク車の開発製造でバイク業界に参入したヤマハは、それまでガソリンタンク内で混合していたエンジンオイルを、オートルーブポンプによって別タンクから供給する分離給油潤滑方式の実用化にあたり、専用の「ヤマハオートルーブオイル」を開発。

スロットル開度に応じて混合比が変化しても焼き付かない強い油膜と潤滑性能、カーボンが堆積しにくい燃焼性能、冬季でも確実にポンプから送り出すことのできる流動性など…。それまでの混合用とはまったく異なるオートルーブオイルには、オイル専業メーカーでは分からないノウハウが詰まっており、エンジンを開発するヤマハにしかできないものだった。

原付からモトGPまで、エンジンとオイルは並行開発

オートルーブオイルをきっかけにオイルの開発を行うようになったヤマハは、’70年登場のXS1で4ストローク市場に参入して以降も、エンジンとエンジンオイルの開発を並行して行なった。

エンジンオイルには、潤滑/冷却/密封/防錆/洗浄などの役割があるが、それらのすべてがエンジン性能を引き出すための要素として考慮されているのがヤマハのエンジン開発の特長である。メカニカルな部分の開発が終わった後で、別途製造されたオイルを注入するのであれば、市販品を使用するのと違いはない。

ヤマハ製エンジンとの同時開発で進化を続けるエンジンオイル「ヤマルーブ」
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潤滑:部品の表面に油膜を作り摩擦抵抗を減らす
冷却:摩擦や回転で高温になった各パーツを冷やす
密封:ピストンとシリンダーの間を塞ぎ、圧縮漏れを防ぐ
防錆:結露や湿気による錆を防ぐ
洗浄:カーボンなどの汚れを取り除く

現在、ヤマハのエンジンオイルは「YAMALUBE(ヤマルーブ)」の名称で統一されているが、このヤマルーブはエンジン開発を行うエンジニアが設計しており、エンジン開発の初期段階からそのオイルを使って仕様を決め、性能を作り込んでいる。

古くはバイクブームが盛り上がった’85年、前代未聞の1万6000回転まで回る250ccモデルとして話題となったFZ250フェーザーのエンジン開発では、フリクションロスを低減するために湿式クラッチながらモリブデンを添加した「エフェロFX」を開発。

モトGPに参戦するヤマハファクトリーチームの要求性能に応えた技術を生かして作り出された「RS4GP」も、モータースポーツやレース使用をも視野に入れたフラッグシップ4ストロークオイルとして、エンジン性能を最大限に発揮させるために開発が進められた。

ヤマハ製エンジンとの同時開発で進化を続けるエンジンオイル「ヤマルーブ」

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ピストンやカムシャフトなどと異なり、どれだけ高性能で高価でも定期的に交換しなくてはならないエンジンオイル。それだけに、ともすれば単なる消耗品と認識され、何を使っても大差はないのでは? と思われることもあるかもしれない。

だがヤマハでは、2ストローク時代からエンジン部品の一部としてオイルを開発し、現在のヤマルーブも原付からスーパースポーツまで、それぞれのカテゴリーや機種に応じた最適のオイルを用いて開発を行なっている。”液体パーツ”と呼ばれるヤマルーブは、間違いなくヤマハ製エンジンの一部なのである。

カテゴリーや機種で選べるヤマルーブラインナップ

ヤマハ製エンジンとの同時開発で進化を続けるエンジンオイル「ヤマルーブ」
[左から] ヤマルーブ RS4GP(100%化学合成油) プレミアムシンセティック(化学合成油)
スポーツ(部分合成油) スタンダードプラス(鉱物油) ブルーバージョン For スクーター(部分合成油) レッドバージョン For スクーター(鉱物油) [写真タップで拡大]

中/大型車に最適なプレミアムシンセティック

化学合成油のプレミアムシンセティックは中型車や大型車に適したオイルで、高温高負荷状況下で蒸発が少なく、夏場の渋滞運転など油温が上がりやすい過酷な状況でも油膜保持性能が持続し、酸化安定性も高い。粘度は10W-40。価格は1リットル缶が2750円、4リットル缶が9900円。

ヤマハ製エンジンとの同時開発で進化を続けるエンジンオイル「ヤマルーブ」
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スクーター用オイルは2種類

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ヤマルーブには2種類のスクーター用オイルがあり、レッドバージョンは’18年以降に発売された50cc向け。これはホンダとの共同開発によるジョグ/ビーノ用であり、ホンダ製エンジンに最適化された鉱物油だ。価格は1リットル缶が1540円。ブルーバージョンはヤマハ製エンジンを搭載したスクーター用(TMAXを除く)の部分合成油で、価格は1リットル缶が2090円。

ヤマルーブシリーズ最高峰=RS4GP

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RS4GPは、モトGPレーシングチームがエンジン開発と並行して磨き上げたテクノロジーをフィードバックした、ヤマルーブのフラッグシップオイル。10W-40の粘度の中でフリクションロスを低減しながら、高回転/高負荷でも油膜を保持し、鋭いスロットルレスポンスとシフトフィーリングを安定して発揮できるのが特長。価格は1リットル缶が3795円、4リットル缶が1万3420円。

ヤマハ製エンジンとの同時開発で進化を続けるエンジンオイル「ヤマルーブ」
ヤマハ製エンジンとの同時開発で進化を続けるエンジンオイル「ヤマルーブ」

エンジンオイルの交換時期は機種によって異なるものの、大排気量車だから短期間で交換した方が良いというわけではない。オイルへの負荷は回転数と発熱によって高まるので、たとえば100km/h 走行時に3000回転しか回らない大排気量車よりも、6000回転回さないと100km/hを維持できない250cc クラスの方がオイルには厳しく、実はさらにシビアなのはオイル容量が少なくエンジン回転が高い原付クラスだ。オイルフィルターはオイル交換3回に1回の交換が指定されていることが多い。 [写真タップで拡大]


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※この記事はバイクいじりの専門誌『モトメカニック』に掲載したものを加筆修正したものです。最新の雑誌は書店もしくは下記サイトにてお買い求めください。

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