原付二種と軽二輪スクーターの勢力図を瞬く間に塗り替えてしまったホンダPCXシリーズは、誕生から11年目。来たるユーロ5に対応するため全面的に刷新し、早くも第4世代となった。その進化ぶりを旧型と比較して徹底解明する。後編ではテスター・大屋雄一氏が新旧モデルを乗り比べた。
4バルブ化で車体まで刷新。死角なしのフルチェンジ! 原付二種と軽二輪の両クラスで快進撃を続けているホンダPCXシリーズ。フレームを大刷新した先代モデルは、量産2輪車では世界初となるハイブリッドや、フル[…]
PCXインプレッション:実用域の力強さアップ。旋回力も高まっている
前編に引き続き、新型PCXの進歩を明確にするため、今回の試乗では先代も用意して比較した。まずは売れ筋の125から。エンジンを始動して最初に気が付く違いは、静粛性と振動の少なさだ。前者については、4バルブ化によってメカノイズが増えてもおかしくないのに、むしろ静かになった印象なのだ。低振動については、この新型で初採用となったハンドルホルダーのラバーマウント化が功を奏しているようで、スタート時に遠心クラッチがつながる際、特にその差が顕著だ。
発進加速/追い越し加速とも、新型の方が明らかに力強い。ライダーの要求に対してレスポンスよく、ギクシャクしないレベルで気持ち良く加速するのは新型であり、旧型はワンテンポ遅れるとまでは言わないが、ややトルクが薄いような印象がある。となると気になるのが加速差だが、スロットル全開でのスタートダッシュは、60km/hまでなら全くといっていいほど同じなのだ。つまり、力強く感じさせている一番の要因はスロットル低中開度でのトルク感で、この領域なら160や150との差を小さく感じるほどだ。
ハンドリングも進化した。旧型のフレームは、それ以前のアンダーボーンからダブルクレードルとなり、剛性を向上させると同時に高い旋回力を獲得した。新型は、諸元上の名称こそアンダーボーンへと戻ったが、形状としてはさらにモーターサイクル的なダブルクレードルへと進化。前後タイヤのワイド化もあって接地感が高まり、さらにフロントからグッと旋回する印象が強まった。積極的に操縦しようとすると、ラバーマウント化されたハンドルの微妙な揺れが気になるが、それも最初だけ。リジッドマウントの旧型に乗り換えると、むしろエンジンや路面からの振動が多く伝わり、リニアな操作感よりもそちらの不快さが目立つ。
ブレーキは、旧型のリヤドラム&前後連動から、新型はリヤディスクとなり、前後連動を廃止して1チャンネルABSが標準装備に。左レバーだけで減速できる旧型のイージーさも捨てがたいが、新型のリヤディスクは初期からコントロール性が高く、優れた旋回力とのバランスならこちらが上。またABSもフロントのみだが作動に不満は全くなく、やはり安心感は高い。
PCX160インプレッション:動力性能差が明らかに。車体の進化を実感する
続いて新型PCX160と旧型PCX150の違いをチェック。高速道路で全開加速を比較したところ、新旧の差がスーッと広がっていき、100km/hに到達するころにはかなりの開きに。125と違ってこちらは明らかに動力性能差があり、特に高速を多用する人にとってはありがたい進歩と言えるだろう。
エンジンよりも感心したのは車体の進化だ。エンジンリンクとリヤサスペンションの取り付け角度が最適化され、リヤのホイールトラベル量は10mmアップの95mmに。125では何となく乗り心地が良くなったかな、くらいにしか感じなかったが、160は常用速度域が上がることで旧型との差が顕著で、特に高速道路で大きなギャップを通過した時の吸収性が高く、さらに収束の早さや安定性は新型フレームやタイヤサイズの見直しも効いていると思われる。
より上質さが高まったスタイリングや、足元が広くなったライディングポジション、拡大したラゲッジスペース、純正アクセサリー群の充実など、全方位に進化した新型PCXシリーズ。何より驚いたのは、ほぼ据え置きと言っても差し支えない価格設定で、まさに死角のないモデルチェンジと言える。通勤通学からツーリングまでマルチに使えるスクーターだ。
開発者インタビュー:キープコンセプトでさらなる進化を目指すクルーザーを
新型PCXの開発責任者は、先代に引き続き大森純平氏(下写真中央で車両にまたがっている方)が務めた。今回のフルモデルチェンジは欧州のユーロ5対応ありきでスタートしており、eSPエンジンが各国のさまざまなモデルに搭載されていることから、ヨーロッパで人気のSHシリーズとともに開発が進められた。
エンジン/車体ともに全面刷新されたが、”パーソナルコンフォートサルーン”という初代からのコンセプトは不変だ。4バルブ化やボア×ストロークの変更などが注目されがちな新型eSP+エンジンも、実はPCXならではの疲れにくい走りの構築に大きく貢献したのは、意外にもエアクリーナーボックス内に新設された整流板だという。また、車体についてはさらなる乗り心地の向上と安定性を強化するためタイヤ幅を太くしたが、一方でPCXらしい軽快感を失わないよう腐心したとのこと。まさに正常進化なのだ。
なお、デザインを担当されたのは、BIG-1シリーズやCBR1100XXなどホンダを代表するモデルを手掛けてきた大ベテラン・岸敏秋氏(写真いちばん左)だ。新型PCXをデザインするにあたり、パワークルーザーのイラストまで自身で描き起こし、イメージを膨らませたとのこと。
※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
4バルブ化でパワーアップした「eSP+」エンジンを搭載 ホンダは、軽快で使い勝手がよく、燃費に優れたエンジンを搭載するなどで好評のベストセラースクーター「PCX」シリーズをフルモデルチェンジ。新型「P[…]
さらに完成度爆アゲの第4世代。王座は盤石か 日本のみならず世界各国で支持される快速スクーター・ホンダPCXシリーズが4世代目に進化した。新型125は、エンジンをはじめ、車体、外観と全面リニューアル。新[…]
4バルブ化でパワーアップした「eSP+」エンジンを搭載 ホンダは、軽快で使い勝手がよく、燃費に優れたエンジンを搭載するなどで好評のベストセラースクーター「PCX」シリーズをフルモデルチェンジ。新型「P[…]
外観を刷新し、シート下スペースもさらに拡大 外観デザインは現行型のイメージを引き継ぎつつ全面刷新されており、デイライトを備えたLEDヘッドライト、X字型のLEDテールランプともに新作。シート高は従来型[…]
近藤スパ太郎[タレント/プロデューサー] 環境番組のパーソナリティを担当したことを機に、電動バイクの強烈なパワーにひと目ぼれ。俳優・MCの他、企画プロデューサー、芸能プロダクションSPANCHOOSの[…]
最新の記事
- 1
- 2