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ホンダPCX/160新旧モデル比較試乗インプレッション#2【らしさをそのまのままに全面刷新】


●文:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:真弓悟史 ●取材協力:ホンダ

原付二種と軽二輪スクーターの勢力図を瞬く間に塗り替えてしまったホンダPCXシリーズは、誕生から11年目。来たるユーロ5に対応するため全面的に刷新し、早くも第4世代となった。その進化ぶりを旧型と比較して徹底解明する。後編ではテスター・大屋雄一氏が新旧モデルを乗り比べた。

ホンダPCX/160新旧モデル比較試乗インプレッション
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【TESTER:大屋雄一】自転車/キャンプ/2次元などなど数多く持つ趣味すべてに全力投球な2輪ジャーナリスト。それもこれも“映え”る原稿のため!?

PCXインプレッション:実用域の力強さアップ。旋回力も高まっている

前編に引き続き、新型PCXの進歩を明確にするため、今回の試乗では先代も用意して比較した。まずは売れ筋の125から。エンジンを始動して最初に気が付く違いは、静粛性と振動の少なさだ。前者については、4バルブ化によってメカノイズが増えてもおかしくないのに、むしろ静かになった印象なのだ。低振動については、この新型で初採用となったハンドルホルダーのラバーマウント化が功を奏しているようで、スタート時に遠心クラッチがつながる際、特にその差が顕著だ。

発進加速/追い越し加速とも、新型の方が明らかに力強い。ライダーの要求に対してレスポンスよく、ギクシャクしないレベルで気持ち良く加速するのは新型であり、旧型はワンテンポ遅れるとまでは言わないが、ややトルクが薄いような印象がある。となると気になるのが加速差だが、スロットル全開でのスタートダッシュは、60km/hまでなら全くといっていいほど同じなのだ。つまり、力強く感じさせている一番の要因はスロットル低中開度でのトルク感で、この領域なら160や150との差を小さく感じるほどだ。

ハンドリングも進化した。旧型のフレームは、それ以前のアンダーボーンからダブルクレードルとなり、剛性を向上させると同時に高い旋回力を獲得した。新型は、諸元上の名称こそアンダーボーンへと戻ったが、形状としてはさらにモーターサイクル的なダブルクレードルへと進化。前後タイヤのワイド化もあって接地感が高まり、さらにフロントからグッと旋回する印象が強まった。積極的に操縦しようとすると、ラバーマウント化されたハンドルの微妙な揺れが気になるが、それも最初だけ。リジッドマウントの旧型に乗り換えると、むしろエンジンや路面からの振動が多く伝わり、リニアな操作感よりもそちらの不快さが目立つ。

ブレーキは、旧型のリヤドラム&前後連動から、新型はリヤディスクとなり、前後連動を廃止して1チャンネルABSが標準装備に。左レバーだけで減速できる旧型のイージーさも捨てがたいが、新型のリヤディスクは初期からコントロール性が高く、優れた旋回力とのバランスならこちらが上。またABSもフロントのみだが作動に不満は全くなく、やはり安心感は高い。

【よりキビキビとした走りを獲得】新型PCXはスロットル低中開度での加速感がアップ。刷新されたフレームや前後タイヤのワイド化と併せ、さらにキビキビと走れるように。リヤブレーキのディスク化も好印象だ。

PCX160インプレッション:動力性能差が明らかに。車体の進化を実感する

続いて新型PCX160と旧型PCX150の違いをチェック。高速道路で全開加速を比較したところ、新旧の差がスーッと広がっていき、100km/hに到達するころにはかなりの開きに。125と違ってこちらは明らかに動力性能差があり、特に高速を多用する人にとってはありがたい進歩と言えるだろう。

エンジンよりも感心したのは車体の進化だ。エンジンリンクとリヤサスペンションの取り付け角度が最適化され、リヤのホイールトラベル量は10mmアップの95mmに。125では何となく乗り心地が良くなったかな、くらいにしか感じなかったが、160は常用速度域が上がることで旧型との差が顕著で、特に高速道路で大きなギャップを通過した時の吸収性が高く、さらに収束の早さや安定性は新型フレームやタイヤサイズの見直しも効いていると思われる。

より上質さが高まったスタイリングや、足元が広くなったライディングポジション、拡大したラゲッジスペース、純正アクセサリー群の充実など、全方位に進化した新型PCXシリーズ。何より驚いたのは、ほぼ据え置きと言っても差し支えない価格設定で、まさに死角のないモデルチェンジと言える。通勤通学からツーリングまでマルチに使えるスクーターだ。

【プラス7ccの余裕】高速では印象だけでなく実際に旧型よりも速いことを確認。車体の進化、特にリヤのホイールトラベル量アップの効果を実感できるのはPCX160の方で、乗り心地良し。

開発者インタビュー:キープコンセプトでさらなる進化を目指すクルーザーを

新型PCXの開発責任者は、先代に引き続き大森純平氏(下写真中央で車両にまたがっている方)が務めた。今回のフルモデルチェンジは欧州のユーロ5対応ありきでスタートしており、eSPエンジンが各国のさまざまなモデルに搭載されていることから、ヨーロッパで人気のSHシリーズとともに開発が進められた。

エンジン/車体ともに全面刷新されたが、”パーソナルコンフォートサルーン”という初代からのコンセプトは不変だ。4バルブ化やボア×ストロークの変更などが注目されがちな新型eSP+エンジンも、実はPCXならではの疲れにくい走りの構築に大きく貢献したのは、意外にもエアクリーナーボックス内に新設された整流板だという。また、車体についてはさらなる乗り心地の向上と安定性を強化するためタイヤ幅を太くしたが、一方でPCXらしい軽快感を失わないよう腐心したとのこと。まさに正常進化なのだ。

なお、デザインを担当されたのは、BIG-1シリーズやCBR1100XXなどホンダを代表するモデルを手掛けてきた大ベテラン・岸敏秋氏(写真いちばん左)だ。新型PCXをデザインするにあたり、パワークルーザーのイラストまで自身で描き起こし、イメージを膨らませたとのこと。

岸敏秋氏はパワークルーザーから新型PCXのイメージを膨らませた。


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