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ホンダPCX/160新旧モデル比較試乗インプレッション#1【これ以上ない正常進化!】


●文:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:真弓悟史 ●取材協力:ホンダ

原付二種と軽二輪スクーターの勢力図を瞬く間に塗り替えてしまったホンダPCXシリーズは、誕生から11年目。来たるユーロ5に対応するため全面的に刷新し、早くも第4世代となった。その進化ぶりを旧型と比較して徹底解明! まずはスペック上の相違点を洗い出して紹介する。

’21ホンダPCX/160新旧モデル比較試乗インプレッション
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【TESTER:大屋雄一】自転車/キャンプ/2次元などなど数多く持つ趣味すべてに全力投球な2輪ジャーナリスト。それもこれも“映え”る原稿のため!?

4バルブ化で車体まで刷新。死角なしのフルチェンジ!

原付二種と軽二輪の両クラスで快進撃を続けているホンダPCXシリーズ。フレームを大刷新した先代モデルは、量産2輪車では世界初となるハイブリッドや、フル電動のエレクトリックを追加するなど、常に話題の最先端にいた。ゆえに今回のフルモデルチェンジに対して「もう?」という声が聞こえてくるが、’00年デビューの初代から数えてすでに4世代目(初代をeSPエンジン以前と以降に分けるなら5世代目)であり、モデルチェンジのスパンとしては平常運転と言えよう。

今回のフルモデルチェンジのきっかけは、欧州のユーロ5や令和2年排ガス規制への対応だったという。新設計となったエンジンは、SOHCのまま2バルブから4バルブとなり、ボア径を拡大。また、摺動抵抗を低減するためにストローク量を短縮し、圧縮比を高めている。さらに、ピストンオイルジェットや油圧カムチェーンテンショナーリフターなどの採用も注目に値しよう。これらにより125ccモデルは、厳しい排ガス規制をクリアしながらも12psから12.5psへと微増。また、軽二輪クラスの150は排気量を7cc増やして156ccとなり、車名を「PCX160」に変更。こちらも15psから15.8psへと最高出力をわずかに高めている。

“eSP+”と名付けられたこのエンジン。先のeSPから懸架方式が変更されたことで、フレームも完全新設計に。タイヤ幅は前後とも1サイズずつ太くなり、リヤはADV150と同じ13インチに。ブレーキはリヤがディスク化され、さらに125も含めABSが標準装備となった。

【’21 HONDA PCX/160】初代の水平基調デザインを現代的に解釈してアレンジされた4代目。125の車重は先代から不変、160は7kg増に。●色:白 赤 黒 グレー シルバー(125のみ) ●価格:[125]35万7500円/[160]40万7000円 ※写真はSTD(125)

【’20 HONDA PCX/150】フレーム刷新でライバルとの差をさらに広げた3代目。ハイブリッドやエレクトリックなどの新展開でも活躍。※写真はSTD(125)

先代で4mmアップしたシート高(764mm)を新型も継続。フットスペース平面部のさらなる拡大により、PCXらしいゆったりとしたライディングポジションに磨きがかかっている。[身長175cm/体重62kg]

エンジン:燃焼効率向上を目指して新開発

来たるユーロ5に対応しつつ競争力を高めるために、エンジンを新規に開発。現行の2バルブや3バルブなども含めて検討した結果、プラグがセンターにある方が燃焼効率がいいことから、最終的に4バルブが選択された。125と150で共通だったストローク57.9mmは55.5mmとなり、それぞれボアを拡大。圧縮比アップによりピストンがより高温となることから、耐久性を高めるためにピストンオイルジェットを新設した。さらに油圧カムチェーンテンショナーも導入。

【厳しい規制に対応しながら、出力は両モデルともに微増】両モデルともスロットルボディ径をφ26→28mmに拡大し、エアクリーナーボックス内部には特許出願中の整流板を新設した。

【低抵抗技術は引き続き採用】4バルブ化に伴い名称が“eSP+”となったが、ローラーロッカーアームやオフセットシリンダー、スパイニーシリンダースリーブといった基幹技術はeSP以前から不変だ。

出力特性イメージ(左:PCX / 右:PCX160)

シャーシ:乗り心地を徹底的にアップ

快適で上質な走りを実現するためにフレームを刷新。ホイールは新デザインとなり、リヤは14→13インチへ。タイヤ幅は前後とも1サイズアップし、リヤは2名乗車時のみ指定空気圧を225kPaから250kPaへ。リヤサスペンションはレシオを変更し、トラベル量を10mm増やして95mmへ。スプリングは線径を上げて、内側に樹脂ケースを追加して防塵性を高めつつ、外観に力強さを付加した。

【ダブルクレードルが進化。760gもの軽量化】初代前期、初代後期~2代目、3代目、そして今回で4世代目となるフレーム。よりダブルクレードルに近付き、リヤフレームは2代目以前と同様に1本のパイプで構成。エンジンリンクは初代前期と同じ上部へ。CAE解析による最適化によってフレーム単体で760gも軽量化。

【トラクションコントロール初導入で安心感アップ】HSTC(ホンダ セレクタブルトルクコントロール)を新採用。後輪のスリップ率を算出して燃料噴射量を制御するもので、作動時はインジケーターが点滅する。オン/オフの選択も可能だ。

手に伝わる振動を軽減するため、ハンドルホルダーを初めてラバーマウント化。操縦性とのバランスを考慮してラバーの硬度を決めたという。

【リヤディスク化&前後連動廃止】フロントのみが作動する1チャンネルABS。PCX125は初採用で、PCX160はこれに一本化。リヤはドラムからφ220mmディスクとなり、コンビシステムは廃止。パーキングは今回も採用せず。

装備:コスト度外視で利便性マシマシ

【新旧の区別は灯火類で明確】ヘッドライトは特許まで出願した主体色のカバーを廃止し、代わりに5本の光のラインで先進性をアピールする。テールランプはマルチオプティクス技術を応用し、奥行き感を表現。

【水平基調メーター】大型液晶メーターは車体と同様に水平を基調としたデザインに。新たにバッテリー電圧低下警告灯(e:HEVはエラー警告灯)とトラクションコントロールインジケーターを追加。

【朗報! 電源ソケットがUSB-Cに】500mlのペットボトルが入るインナーボックス。その内部にあるアクセサリー電源がシガーソケット(12V/1A)から最新のUSBタイプCソケット(5V/3.0A 充電専用)になった。

【さらにフロア拡大】先代でもフットスペース平面部が車体前方へ拡大されたが、新型はさらに前方と外方向へそれぞれ30mmずつ拡げている。特に前方へ足を伸ばした際の差が顕著だ。

【容量が28→30Lへ。利便性大幅アップ】ラゲッジボックスの容量は2L増えて30Lに。底面の段差が少なくなり、間口も大きくなったことで、数値以上に容量が増えた印象を受ける。なお新型のグラブレールは310g軽量化された。

【これ便利!】タンクリッドの裏側に燃料キャップを固定できるギミックを追加。これは給油の際に便利だ。タンク容量は従来の8.0Lから8.1Lへと微増。

【スマートキーも継続】利便性の高いスマートキーを引き続き採用。デザインは変更されたが、アンサーバックスイッチなど主要な機能については基本的に継続。

【注目オプション:トップボックス35L スマートキーシステムタイプ】スマートキーを携行していれば、取り付けベースのボタンを押すだけで解錠できるトップボックスを日本に初めて導入。さらに同時開発されたボディマウントシールドやナックルバイザーにも注目を。●価格:4万1800円

【PCX e:HEV:ハイブリッドも4弁化。先進の専用色をまとう】今回の比較試乗には含まれないが、世界初の量産2輪ハイブリッド車として誕生したPCXハイブリッドもモデルチェンジ。車名を“e:HEV”に変更した。車体色は先代の濃紺から白×青のツートーンに。

【’21 HONDA PCX e:HEV】●色:白 ●価格:44万8800円 [写真タップで拡大]

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ヘッドライト/テールランプともブルーの差し色で純ガソリン車と差別化。さらに先代と同様にスマートキーの色も異なる。

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リチウムイオンバッテリーを搭載しているためラゲッジスペースは狭いが、それでも容量は23Lから24Lへとアップしている。


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