激戦区のクルーザーカテゴリーにBMWが再び参入した。「R18(アール・エイティーン)」は、同社史上最大=1802ccの新開発ボクサーツインを搭載し、カスタムのしやすさにも配慮。低重心&滑空感により、唯一無二の走りを体感できる1台だ。
[〇] 絶大な存在感のエンジン。マッスルな性格も内包
低いシートに腰を下ろしてセルボタンを押すと、車体が勢い良く左側に倒れようとし、慌てて両足を踏ん張った。バランサーが採用される以前のボクサーツインは、このような縦置きクランク特有のトルクリアクションが明確に発生した。そして、この新型エンジンにもバランサーは使われておらず、しかも排気量が1802ccともなるとその勢いは段違いで、思わずニヤリとした。
【BMW R18 FIRST EDITION】■全長2465 全幅950 全高1130 軸距1725 シート高690(各mm) 車重345kg ■空油冷4スト水平対向SOHC 1802cc 91ps[67kW]/4750rpm 16.1kg-m[158Nm]/3000rpm 変速機6段 燃料タンク容量16L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤサイズF=120/70R19 R=180/65B16 ●色:黒 ●価格:254万7000円
ホイール径は19/16インチで、トラベル量は120/90mm。灯火類はオールLEDで、ファイナルエディションのヘッドライトにはコーナリングランプが組み込まれる。サイレンサーはフィッシュテールだ。
シート高は690mmと低く、足着き性は非常に良い。プルバックされたハンドルにより上半身は直立し、クルーザーらしいライディングポジションを形成。[身長175cm/体重62kg]
まずはそのエンジンから。走行モードはロック/ロール/レインの3種類で、順にレスポンスが穏やかになるイメージだ。このほかの電子デバイスとして、トラクションコントロールの一種である”ASC”や、エンジンブレーキによる後輪ロックを制御する”MSR”が採用されており、クラシカルな外観とは裏腹にハイテクなのだ。最高出力は91psと控えめだが、最大トルクは158Nmと圧倒的。しかも、2000~4000rpmの常用域で150Nmを超えるので、実際にも高速道路ですら3000rpm以下で事足りてしまう。ロックモードでワイドオープンしたときの加速感はまさに突進と呼ぶにふさわしいが、スロットルレスポンスは常に従順であり、2600rpm以下なら振動はスムーズそのもの。そして、意外にも好印象なのがレインモードだ。CVキャブを彷彿させる穏やかな反応は癒やし系であり、帰路はこれを多用した。
新設計の1802cc空油冷OHV4バルブ水平対向2気筒は最高出力91psを公称する。アンチホッピング設計の乾式単板クラッチに6段ミッションを組み合わせ、ファイナルドライブはクラシカルな露出型ドライブシャフトだ。
ファーストエディションはセルモーターの力で後退するリバースアシストを採用。切り替えレバーはシフトペダル上方に設けられている。
ハンドリングは、ボクサーツインらしさを強く感じさせるものだ。大胆に寝かせた32.7度というキャスター角、1725mmという長大なホイールベースなど、ディメンションはかなり特殊だが、車体の傾きに対する舵角の付き方は極めてニュートラルだ。縦置きクランクゆえにロール方向の動きが軽く、345kgという車重を感じさせない。常に低重心感が支配している印象で、巡航時に伝わる滑空感とも言うべきフィーリングは、過去のどのボクサーツインよりも濃密だ。そして、この味わいはライバルとなるハーレーと対極にあり、好きな人はハマるだろう。
なお、ブレーキはフロントが前後連動式だ。もう少し軽い入力で利いてほしいと思う場面もあったが、この車重を減速させるに十分な効力があり、コントロール性も良好だ。
φ49mm正立式という極太のフォークはショーワ製。リヤサスペンションはカンチレバー式で、プリロード調整可能。ブレーキディスクは前後ともφ300mmで、レバー操作で前後が連動する。ファイナルエディションはヒルスタートアシストも備える。
後席を外せばソロ仕様に。リヤフレームも容易に取り外し可能だ。
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【BMW R5】 [写真タップで拡大]
【元ネタのR5は大戦前のスーパースポーツだ!】設計段階から参考にされたというR5は1936年に登場。超高回転型のエンジンや楕円パイプのフレームを採用した、当時のスーパースポーツだ。
[△] バンク角の浅さに注意。小回りも得意ではない
ロール方向の軽さに気を良くしてスイッと倒し込むと、交差点でもステップの先を擦ってしまうほどバンク角が浅い。また、軸距が長いために旋回力はそれなりで、タイトターンではアウト側の腕が伸び気味になる。このあたりは試乗で確認を。
[こんな人におすすめ] R1200Cとは違う路線で再参入。市場拡大なるか?
かつてのクルーザー・R1200Cシリーズが短命だっただけに、ネオクラシックへ大きく路線を変えたR18がどう受け入れられるかに注目。前後16インチ&サドルバッグ付きの「クラシック」も発売されたので、勝負はこれからだろう。
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