●文/写真:モトメカニック編集部 ●取材協力:オーヴァーレーシングプロジェクツ モトジョイ
「Z1 のエンジンを搭載したF-1を製作してほしい」というオーダーでスタートしたオリジナルマシン。長い制作期間を経てオーヴァーレーシングのコンプリートマシン「OV-40」が完成し、初走行を行った。カワサキKR1000とモリワキモンスターを融合させて、佐藤健正会長のスパイスを加えたオリジナルマシンの開発経緯を紹介する。
往年のF-1レーサーのイメージと現代的足まわりを融合
’82年の創業以来、オリジナルバイクを製作することにこだわり続けてきたオーヴァーレーシングプロジェクツ。その性能をアピールするのに最も効果的なレースという場で、シングル/ツイン/4気筒エンジンを搭載した数多くのマシンを製作してきた。
そして、’82年の1号車=OV-01から数えて40番目となる最新モデルが、アストライドでお披露目された「OV-40」である。
「海外にあったモリワキモンスターを購入予定だったお客様が、その計画が立ち消えになってしまい、『あの頃のF1レーサーの雰囲気を持つマシンをオーヴァーで作ってくれないか』となったのが事の始まりです」と語るのはオーヴァーレーシングプロジェクツの佐藤健正会長。
OVER RACING PROJECTS OV-40
佐藤氏自身も頭の中にZ1のエンジンを搭載したKR1000のイメージがあり、そのスタイルを提案することで計画がスタートした。
OVシリーズのフレームといえばアルミ製というイメージが強いが、今回のマシンは’81〜’83年のKR1000がモチーフとなるためスチール製パイプとなる。ヘッドパイプからキャブレターの外側に配置された幅広のメインチューブ、、スイングアームピボット周辺のレイアウトはKRの印象があるが、リアショックは佐藤会長のオリジナルアイデアだ。
「当初からモノショックのつもりでしたが、KRの片持ちタイプではなくドゥカティ851やカカワサキユニトラック的な、OV-16でも採用したリンクタイプをオリジナルデザインで設計しました。将来的にイベントレースへの参戦も考えているオーナー様の意向で、サーキットでも通用する仕様にしたかったのです」
アストライド当日の鈴鹿ツインサーキットは最高気温が35℃に迫ろうかという酷暑で、オーバーヒート気味になったものの車体には問題はなく、その後の筑波サーキットではセッティングの余地を残して1分03秒を記録、上々の滑り出しを見せた。
世界レベルのレーシングマシンを作り出してきた佐藤会長が手がけたOV-40が、今後どのように熟成していくかが楽しみである。
OV-40の各部詳解
Z1のクランクケースに角Z時代のインジェクションモデルKZ1000Hのヘッドをドッキング。JE製φ72mm ピストンで1074ccとして、吸排気バルブはGPZ1100F流用でビッグバルブ化。タペットもインナーシムに変更してある。
ヘッドがZ1000H用のため、ワンオフしたインシュレーターを介してTMRキャブをセット。点火系は英国エレクトレックス社製インナーローターCDI。
モトジョイではホンダCB750フォア、カワサキZ1/Z2用TMR32が好評だが、レーサーなのでφ36を装着。
クラッチリリースボードを含む油圧クラッチキットはPMC製。ドライブスプロケットを見るとオフセットされていないことが分かる。
チタンフルエキゾーストに装着されるサイレンサーは、メガホンや異型タイプではなく年代にあわせたオーソドックスなデザイン。
スイングアーム製造はオーヴァーレーシングの得意ジャンルで、スタビライザーやリンクのマウントも美しくデザインされている。
リンク式リアサスペンションは佐藤会長が設計したオリジナル。リアショックは全長とレバー比と車重の情報でオーダーしたナイトロンのワンオフ品。
1980年代のカワサキらしく、チェーンアジャスターはエキセントリック式で、キャリパーもトルクロッド付きフローティング式。
フロントフォークはカワサキZRX1200ダエグ用を再セッティング。17インチホイールはゲイルスピードでローターはサンスター。
タコメーターは英国スキッツ社製レーシングタイプ。緑色のキーホルダーの先にプラグがあり、引き抜くことで通電して作動する。
エアプレーンキャップを装備したガソリンタンクは、メインチューブの曲げに合わせてKR1000をモチーフに製作した。
シングルシートはKRの中古品を元に型を作り直して製作。フロントカウルはモリワキモンスターレプリカをモディファイしてある。
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