ホンダの存在感が薄れていたアジア選手権600ccクラス。そこでの勝利を至上命題に掲げるのが新しいCBR600RRだ。勝てるエンジンに最先端の電子制御をフル搭載。代々受け継がれる乗りやすさも武器に、ライバルを制圧する!
戦闘力と乗りやすさの最適バランスがここに
最後のモデルチェンジから7年ぶり! ホンダCBR600RRも控えめながらウイングレットを装備し、電子制御もガッツリ搭載。最高出力も119(欧州仕様)→121psに引き上げられた。大幅刷新された新型の戦闘力はいかほどなのか。舞台は全長約3.6kmの国際コース・スポーツランドSUGOだ。朝からフルウエットだけれども…。
ところがどっこい、このコンディションが素性を知るに良い機会となった。走行1本目はウォーマーで温めたタイヤ(OEMのダンロップ ロードスポーツ2)でも滑るほどのハードウエット。それでもコイツは乗りやすいのだ。すべての操作が安心できて、これなら箱根に行って雨に見舞われても大丈夫と思えるくらい。中でも1万rpm以下の出力特性がまろやかで、穏やかに走らせられる。かたやストレートで1万rpm以上回せば、流石に最高出力を上げた分のパンチも確認できる。
レースパフォーマンス一辺倒になりがちな600ccスーパースポーツカテゴリにおいて、ストリートユースもできる限り保持させようというのはCBR600RRかねてからのスタンス。ポジションもステップこそ高い位置にあるものの、シートは身長168cmの私で両つま先の腹が付く高さ。ハンドルは多少遠さを感じるが、極端に低い位置ではなく絞りも効いているので、ツーリングでも手首への負担は少ないだろう。アシストスリッパークラッチでレバーも軽い。
何より、121psを1万4000rpmで発揮する高出力エンジンがウエットコンディションでも扱いやすい過渡特性を持つのには、電子制御の存在が欠かせない。3パターンある走行モードのうち、もっともアタック向きな”モード1”でもフルウエットで走れるくらい、綿密な制御を行ってくれる。では純粋なレース戦闘力はどうなのだろうか。そう思う傍らでコースはどんどん乾いてきた。何とでき過ぎた展開か!
1000ccのように中間トルクで立ち上がりをリカバーできないので、必然的にコーナーリングスピードを上げてプッシュしていく。最高出力回転付近からアクセルを開けていくと、モード1でもトラクションコントロールの介入は少々早い。そこでユーザーモードでトラクションコントロールだけを最弱に設定し直してさらにアタック。攻め込み過ぎて逆にタイムロスになろうかという領域での介入が確認できた。
最後、試しにトラクションコントロールもウイリーコントロールも完全オフで攻め切ってみた。結果、タイム的にはトラクションコントロール最弱とさほど変わらないペース。スライドさせ過ぎてタイムロスになるくらいなら、CBR600RRはトラクションコントロールに任せた方がベストタイムを狙える、つまりはレース戦闘力があると言えよう。ちなみにウイリー制御は兄貴分のCBR1000RR-Rのように浮き上がるギリギリを保持するほどではないので(一定角以上でドスンと落ちちゃう)、腕に自信があれば切った方が気持ち良く全開で立ち上がれることを補足しておこう。
ハードに攻め込んでも乗りやすい印象は、1発目のウエット走行時と同じ。ライダー&シチュエーションに合わせて電子制御を切り替えてやれば、大きく乗り味を変えることなくマシンがサポートしてくれる。600ccのスーパースポーツがこの先どこまで作り続けられるかは未知数だけど、今回の電制満載アップデートはストリートユーザーにもサーキットユーザーにも嬉しい進化だね。
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