●ライダー:渡辺学 ●写真:長谷川徹 ●文:ゴーライド編集部(小川浩康)
低中速域での扱いやすさに定評があった’20ヤマハYZ250F。その長所を生かしつつ、高回転の伸びを手に入れた’21モデルが登場。全日本モトクロス選手権が開催された菅生のコースで、元ヤマハワークスライダーの渡辺学選手が徹底テストを行なった。『オフロードマシン ゴー・ライド』より紹介しよう。
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低中速の扱いやすさに高回転の伸びをプラス
「新型YZ250Fは競り合った時に勝つために、中高回転やオーバーレブ領域でのパワー感を向上させ、長い加速を得られるエンジンに進化させました。前モデルは低中回転のパワフルさに定評がありましたが、高回転をパワーアップさせることで、全域でスムーズな扱いやすさを獲得。エキスパートライダーにはレースで勝利できる高い戦闘力、初中級者にはファンライドを楽しめる乗りやすさ、それらを両立しているのが21モデルです」と、YZ250F開発リーダー・横井正人氏が説明してくれた。
主な変更点として、エンジンは吸気ポート形状を変更し、エアクリーナーボックスのキャップケースにダクトを追加。さらに吸気管長をショート化することで高回転のパワーアップに寄与している。サイレンサーは容量を拡大し、高回転の滑らかなエンジンフィーリングに貢献。クラッチと3・4速ギヤは強度が高められ、エンジンパワーを確実に路面へと伝達し、トラクション性を向上している。
エンジン特性はスマホアプリ「パワーチューナー」でセッティング変更でき(ヤマハ推奨マップが3つ設定されている)、自分の好みに合わせた独自のセッティングも可能。その内の2種類を車体に記録し、ハンドルのスイッチで即座に切り替えることができる。
こうしたエンジンパワーを受け止める車体には、21年型YZ450Fと同型のバイラテラルビームフレームを採用。ただし、軽量化と剛性バランスが最適化され、合わせて前後サスもセッティング変更されている。フロントブレーキはパッド面積を拡大し、リヤブレーキは軽量化しつつ耐フェード性を向上。全域でパワーアップしつつ、マシンコントロールしやすい乗り味になっているのが大きな特徴だ。
「完成の域に入った250モトクロッサーだ」
テストライドを終えた渡辺学選手にコメントを聞いてみた。
「低中回転の粘り強さを生かしつつ、高回転の伸びが良くなったのが分かります。そしてパワーもしっかり出ているのですが、アクセル開度とパワーの出方がイメージどおりなので、すごく扱いやすくなりました。
今日のコースはジャンプの飛び出しやコーナーのブレーキングポイントがカチカチになっていて、テカテカした滑りやすい路面でした。そうした路面でもアクセル操作だけで欲しいパワーを引き出すことができて、トラクション性もいいので、無駄なテールスライドを誘発せずに攻めていけるんです。さらに、マディやサンドなどのパワーを食われる路面でも、パワー不足を感じませんでした。コースコンディションに左右されない走りやすさがあるので、誰でも乗りやすさを感じられますよ。
パワーの出方はドンと押し出されるような感じではないですが、今まで2スト車に乗っていた人でも不満はないレベルだと思いますし、逆に抜群のトラクション性のよさに驚かされると思います。エンジンのレスポンスもクイックで、クラッチ操作をせずにアクセル操作だけでマシンコントロールができます。こうした全域での扱いやすさを生み出しているのが、プーリングパワーというエンジン特性なのでは? と思いました。とにかく、250クラス最高の速さと扱いやすさを両立した’21年型YZ250Fは、完成の域に入ったと感じましたよ」
フレームの肉厚を最適化し、軽量化と走行性能を両立
燃料タンク部分のフレームは2.5mm→2.0mmに薄肉化し、ダウンチューブ部分は逆に3.5mm→4.0mmに肉厚化。こうして軽量化と剛性バランスを最適化することにより、ギャップ通過時やジャンプ着地時のマシン挙動の安定感を実現している。「燃料タンクまわりに大きさを感じますが、取りまわしに重さはなく、コーナリングの倒し込みもやりやすいです」と渡辺選手。YZ450F譲りのフレームは、パワーアップした新型YZ250Fとのバランスもよく、「操安性も向上している」という。
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