車での移動が多い県北部で多くの高校生が参加
前回記事に引き続き、埼玉県教育委員会主催の「令和2年度 高校生の自動二輪車等の交通安全講習 北部地区」についてレポートする。
10月4日、深谷自動車教習所にて今年4回目となる講習会が実施され、深谷市、熊谷市、本庄市といった市町から対象となる高校生が集まった。ここはもうすぐ群馬県というエリアであり、鉄道の駅間距離が長く運行本数も少なめで、車での移動が多い地域だ。参加予定生徒の構成を見ると、40台のうち原付バイクが32台と多いのもうなずける。
講習会はどこの会場でも同じ流れで行われるが、今回は早朝から雨がパラついたこともあり、講習内容の順番を入れ替えて教室での講義から始まった。埼玉県警による事故違反の状況や交通社会人としての心得といった講義の後、救急救命法の講義が続き、実技講習は昼を挟んで行われた。なお、少々排気音が大きすぎるということで4台のバイクが実技講習への参加を止められてしまったが、その生徒らは教室で行われる座学講習に参加した。
バイクに乗っていない生徒、乗ってこられなかった生徒らは、教習所の教室で座学講習を受けた。
救急救命法の講義は教習所の職員が担当。映像視聴のほかAED機器、レスキューセットといった救急現場で実際に使われる機器の説明、さらには感染防止のためのビニール袋を利用しての止血法など説明が具体的だった。
さて、今回は実技講習の種目に変化が見られた。教習所のコースを利用した法規走行の中に右直事故を想定したような場面が作られたのだ。交差点にはトラックも置かれ、バイクはその左横を通って停止線の前で停まる。これは、決して推奨するわけではないが、すり抜けのような場面として、あるいは道路の左側に停まっていたら右横に車が並ぶという、実際の公道では(特に原付バイク乗車中には)よく見られるシーンを再現した演出となっていた。
バイク乗車中の死亡事故の約半数は出合い頭(約30%)とクルマの右折・右直時(約19%)だ。この場所で右折車の座席に座って生徒を指導していた埼玉県警察本部の福島正明警部補は「なるべく現実的なケースを体験してほしい」と、こうした場面を設定した理由を話した。
交差点でのライダー死亡事故で最も多い右直事故、さらにはバイク乗車中に特有のシーンとも言える”バイクの右側のスペースに車が入ってくる”という状況も再現。横のトラックで見通しが悪いので左右の確認をしてから発進する。”こう見える、こう見えない”を体験させる。
今年度から取り入れられている法規走行での「見通しの悪い交差点での一時停止・左右確認」。これができないと出合い頭事故の要因となる。市街地で建物などにより見通しが悪く信号機が設置されていない交差点を想定。
種目の変化がもうひとつ。Uターンが加えられていた。公道ではなるべくしないようにと教わることも多いが、こうした安全な場所で体験できたことは貴重な経験となったはずだ。自分の技量を見極め、無理せず集中できていれば安全運転ができる。全体的に充実した内容の講習会だった。
新たに組み込まれた種目・Uターン。公道を想定して右回りで練習。目線も体の方向も切り替えられない子が多い。体験しておくべき重要な講習内容だ。
●取材/文:コンサルタント 田中淳磨(輪) ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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