マシン作りを始めてからすでに20年…
ベース車両であるドゥカティ750を購入してから27〜28年になるこの企画? その間、紆余曲折あって”一歩前進、二歩後退”。しかし、この数ヶ月で本気モードに突入し、時間があればガレージに入り浸りの日々…。個人的には病後の体力回復リハビリを優先すべきなのだが、指先リハビリのつもりで細かな組み立て作業を楽しんでいる。
作業手順は以下の通り。通常のレストアなら、ベース車を確認したら速攻で全バラ&作業に取りかかっているが、今回のようなスペシャルメイドやレーシングマシン製作の場合は、できるかぎりすべての部品を組み付け、物理的な不具合がないことを確認してから電装系を引き回し、できることならエンジン始動。それからすべてを分解して、それぞれの部品を仕上げたら再度組み上げて、セットアップを詰めていく、という手順を取っている。
今回の場合は、20年前にこのエンジンでスポーツランドSUGOを走っていたので、エンジンに関しては始動せず、すべての電装系通電とスパークプラグへの着火を確認してから本格的な仕上げ作業に入った。つまり現段階での組み立ては、すべて”仮組み”。たとえば、オイルクーラーを取り付けるフレーム側のブラケットは仮溶接。外装パーツの干渉確認もサクッとしかやっていない。
この直後に車体を完全バラバラにして、単品になったフレームにガソリンタンクを載せてひっくり返し、タンクの裏側がフレームと干渉していないか詳細点検する予定だ。イタリア製外装部品だからというワケではないが、このあたりは厳密に点検しないと、後々面倒なトラブルになりかねないので。
ツインプラグの点火系はASウオタニSPIIの特注仕様
仮組みの”最後の砦”が点火系である。今回も迷うことなく、ASウオタニ製フルパワーイグニッションシステム「SPII」を採用した。このラウンドLツインエンジンは、普通のエンジン仕様=ノーマル仕様とはほど遠い仕様なので、様々なシーンで”許容範囲が広いSPIIシステム”に助けてもらえ場面もあるはず!? などと考えている。
ツインプラグ仕様なので、オーダーの際には900MHR用キットをベースに、1ヘッド1プラグのSPIIシングルコイル仕様ではなく、1ヘッド2プラグに対応できる「SPIIツインコイル仕様」をセットにしてもらった。以前にF750イモラレーサーを走らせていた時も同内容でオーダーし、大変良い結果を得られている。押し掛け時の始動性は抜群!! F750は乾式クラッチ仕様だったので、なおさら切れが良く押し掛けは楽勝だった。
そんな感じで電装系をすべて取り回し、ASウオタニの点火系も取り回し、すべての電気系回路の通電と点火系のスパークを確認ができたので、いよいよ車体の全バラに取りかかれることになった。
SPIIユニットは、レブリミット設定や点火カーブの設定をユーザーニーズに合わせて調整可能。この頭脳があれば、アイドル域の点火時期を始動性優先の設定にして、最大進角を任意に調整できる。 [写真タップで拡大]
ツインプラグ化のために、国産4気筒モデル用のASウオタニ製SPIIイグニッションコイルを2個装備。ハイテンションコイルは性能よりも雰囲気優先で、MVアグスタ旧4気筒用のクリアカバー付きの通称「コタツ」コード。 [写真タップで拡大]
スクエアエンジンのオイルフィルター部分にポイント室があったラウンドエンジン。ポイントもギヤも取っ払い、自作カバーで遮断。追加で必要なピックアップコイルは、ミブコーポレーション製ベースに後期スクエアのボッシュ製ピックアップをボルトオン。 [写真タップで拡大]
20数年前に購入した新品メインハーネスは当然ながら純正回路。しかし、今回はライトスイッチ&L/H切り替えやウインカーやホーンのスイッチを、後のドゥカティのように集中スイッチにするため、ヘッドライト&メーター周りの回路は大改造した。 [写真タップで拡大]
これはドゥカティ純正の点火時期確認用分度器円盤。専用のアーム工具に取り付けて上死点確認と点火時期を調整する。ダイヤルゲージでピストン上死点を見つけてポインターを曲げて合せる。バッテリーを接続してギヤを入れてリアホイールを回し着火確認。 [写真タップで拡大]
クランクを回しながらメーターギヤを凝視したら、カバー内のタコメーターギヤが回っていなかった。ジョイント部品がなかったので、ボルトを素材に旋盤で削り出し製作した。落下防止の筒はアルミ棒からの削り出し。 [写真タップで拡大]
シリンダーヘッドは市販レーサーのNCR900TT1初期型用。スタッドボルトのピッチを加工して市販車クランクケースに合せてツインプラグ化。ピックアップコイルには極性があるので、火が弱い時には2本の配線を入れ換えてみよう。 [写真タップで拡大]
●文/写真:田口勝己(モトメカニック編集長) ●取材協力:ASウオタニ
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