トライアンフは、660ccの並列3気筒エンジンを搭載したミドルネイキッド「トライデント660(TRIDENT 660)」を正式発表した。同社の同じクラスであるストリートトリプルSとはエンジンから別モノとされたブランニューモデル。2021年の年明け早々に発売される。
時代はロングストロークエンジン? 低中回転型のキャラクターで最大トルク発生は6250rpm
トライアンフは新たなミドルネイキッド「トライデント660」を正式に発表。日本での発売は2021年1月23日(土)に始まり、その価格は97万9000円になることも決定した。
トライアンフが「ロードスター」と呼ぶスポーツネイキッドのカテゴリーには、すでに「ストリートトリプルS」という手頃なモデルがある。このモデルは660ccの水冷並列3気筒エンジンを搭載し、99万9000円という戦略的な価格が与えられて話題になった。
トライデント660もロードスターシリーズの一端を担うものの、ストリートトリプルSと共有するコンポーネントはほとんどない。そのことは外装やフレームを見れば一目瞭然ながら、実はエンジンも別モノ。排気量こそ同じ660ccながら、パーツは67ヶ所に渡って見直され、なんとボア×ストロークも異なっているのだ。
その違いと主なエンジンスペックは次の通りだ。
このように、ストリートトリプルSが高回転寄りのユニットになのに対し、トライデント660はロングストローク化によって低中回転型のキャラクターになっている。特に目を引くのは、ストリートトリプルSより3000rpmも低い回転数で最大トルクを発揮しているところだろう。
しかも、3600rpm~9750rpmもの広範囲に渡って高いトルクを維持し続ける(最大トルクの90%以上)というから、スロットルのオンオフだけでスイスイとコーナーを駆け抜けていく。そんなフレキシビリティに溢れた走りを想像させる。
国産の並列2気筒勢と同レベルに収めた車重
それを後押しするのが、軽量と言って差し支えない189kgの装備重量だ。この排気量帯には数多くのメーカーが参入して欧米でも人気を集めているが、その代表的なモデルを挙げておくとトライデント660のポジショニングが分かりやすい。
このように、車重はZ650と並んで2番目に軽く、最高出力はCB650Rに次いでパワフルで、価格はそのCB650Rとまったく同じ。「輸入車だから少々高いのは当たり前」という考え方はここに当てはまらず、真っ向勝負を仕掛けている。
というよりも、バリューフォーマネーあるいはコストパフォーマンスに関してはむしろ優れていると言っていい。なぜなら、ライバル各車と比較すると装備の充実が抜きん出ているからだ。
安全性を担保する電子デバイスがそのひとつで、ライドバイワイヤ方式のスロットルを採用することによって、きめ細やかな制御を実現。エンジンの出力特性が変化するライディングモードには「ロード」と「レイン」の2パターンが用意され、オンとオフの切換が可能なトラクションコントロールも盛り込まれている。
先述のライバル4台の内、トラクションコントロールを備えるのはCB650Rだけで、ライディングモードに関してはトライデント660独自の優位性である。この他にもカラーTFTディスプレイを装備し、そこに「My Triumphコネクティビティシステム」を繋げることによって利便性が高まるところも魅力だ。これを活用すれば、通話、音楽の再生、ナビゲーション、GoProなどの操作が可能になり、ライディング以外の楽しみも広がるに違いない。
もちろん、パフォーマンスも抜かりはない。必要充分以上のパワーを発揮する水冷3気筒エンジンを懸架するフレームはシンプルなスチールパイプで構成され、前後のサスペンションにはショーワの倒立フォークとモノショックを採用。17インチの軽量アルミホイールにはミシュランのラジアルタイヤ「ロード5」が組み合わせられ、ドライ路面のグリップ力とウェット路面の排水性が確保されている。
フロントのブレーキキャリパーは、ストリートトリプルSで実績のあるニッシンの2ピストンスライディング、いわゆる片押し式のシンプルなものだが、制動力にもコントロール性にも申し分なく、もしもの時はABSがきちんと機能する。
テーパー状のアルミバーハンドルと805mmのシート高はリラックスしたライディングポジションをもたらすのは間違いなく、操作力の軽いスリップアシストクラッチやトルクフルな出力特性も手伝って、幅広いライダーをフォローするオールラウンドな一台に仕立てられているはずだ。
それはデザインにも言える。明確にアグレッシブさを打ち出しているストリートトリプル系に対し、トライデント660には奇をてらったところがない。イタリア人デザイナー、ロドルフォ・フラスコーリの手によるスタイリングはミニマルなもので、加飾を廃しながら力強い塊感にあふれている。
もしもそこに手を加えたくなったなら、すでに45種類も整っている専用のアクセサリーが希望を叶えてくれる。スクリーンやグリップヒーター、クイックシフターといった実用アイテムの他、バーエンドミラーなどのドレスアップパーツまで豊富にラインナップ。カスタムの楽しみも手厚くフォローする体制が敷かれている。
この数年、右肩上がりにシェアを伸ばしているトライアンフだが、2021年もその勢いは衰えそうにない。トライデント660がそのけん引役として大いに貢献しそうだ。
TRIUMPH TRIDENT 660[2020 model]スタイリングとカラーリング
【TRIUMPH TRIDENT 660[2020 model]】主要諸元■全長2020 全幅795 全高1089 軸距1401 シート高805(各mm) 車重189kg(装備)■水冷4ストローク並列3気筒DOHC4バルブ 660cc 81ps/10250rpm 6.53kg-m/6250rpm 変速機6段 燃料タンク容量14L■キャスター角24.6°/トレール107.3mm ブレーキF=φ310mmダブルディスク+2ポットキャリパー R=φ255mmディスク+1ポットキャリパー タイヤサイズF=120/70R17 R=180/55R17 ●価格:97万9000円 ●色:銀×赤、黒×銀、白、黒 ●発売日:2021年1月23日
TRIUMPH TRIDENT 660[2020 model]ディテール
インストゥルメントに専用のMy Triumphコネクティビティシステムを装着すると、ハンドルバーに装備されたスイッチキューブを用いて、Bluetoothを通じたターンバイターンナビゲーション、GoProコントロール、電話とミュージックの操作を行うことができる。 [写真タップで拡大]
●文:伊丹孝裕 ●取材協力:トライアンフモーターサイクルズジャパン ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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