’19年度の国内販売台数1958台、前年対比113%と上り調子にあるトライアンフ。’20年もタイガーに900シリーズが登場したり、ストリートトリプルSを登場させるなど勢いに乗っている。本記事では伝説の人物の名を冠した「ボンネビルT120 バド・イーキンス スペシャルエディション」の試乗インプレッションをお届けする。
国産にはない重厚感が走りにも存分に表れる
’60年当時、バド・イーキンスが経営していたディーラーがあったのはカルフォルニア州シャーマン・オークス。その西海岸らしい明るい雰囲気を車体に落とし込んだモデルが、この「ボンネビルT120 バド・イーキンス スペシャルエディション」だ。
【TRIUMPH BONNEVILLE T120 BUD EKINS SPECIAL EDITION】主要諸元 ■全幅785 全高1125 軸距1445シート高785(各mm) 車重244kg ■水冷4スト並列2気筒 1200cc 80ps/6550rpm 10.7kg-m/3100rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量14L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤサイズF=100/90-18 R=150/70R17 ●色:白/赤 ●価格:156万7500円
ベースモデルのT120に、’59年登場の初代ボンネビルをイメージし、コロッシレッドとスノードニアのツートーンカラーでまとめ上げられた。900ccのボンネビルT100にも同様のスペシャルエディション(129万3500円)があり、赤と白の配色が逆になっている。

【バド・イーキンスって誰?】ハリウッドスターであるスティーブ・マックイーンのバイク友達であり、映画『大脱走』にて、トライアンフのTR6トロフィを駆り柵越えのスタントを行ったのが、バド・イーキンス(BUD EKINS)。アメリカトップのトライアンフディーラーのオーナーでもあった。写真は映画『大脱走』の撮影現場にて。左がマックイーン、右がイーキンス。
赤と白のツートーンは、’59年に登場した初代ボンネビルの復刻色。タンクサイドでひときわ存在感を放っている「TRIUMPH」のロゴにも、”T”の字が大きい伝統的なロゴを採用。このロゴをの車体に使用するのはなんと30年ぶり。それだけでこのモデルに注ぎ込む情熱がうかがい知れよう。
ベース車両は、モダンクラシックシリーズのボンネビルT120であり、走行性能に関する部分に違いはないものの、バーエンドミラーにLEDウインカーなど、このモデルだけの特別な装備が所有欲を存分に満たしてくれる。
「ブルン」というバーチカルツイン特有の突き上げるような鼓動とともにエンジンが始動。走り出せば「分厚い」という3文字では表現できないくらいの力強いトルクが、地面を蹴って車体を進ませる。重量感のある車体を力強いトルクで動かす感覚は、まさに「重厚」という言葉がふさわしい。
スペックによれば、最大トルクの発生回転数は3100rpm。信号待ちからスタートして、ものの数秒で達するエンジン回転数なのだが、おかげで一般道を軽く流しているだけで、ボンネビルの世界観に浸れること請け合い。クラシカル”テイスト”ではない。”本物”の味わいがここにある。
3100rpmという低いエンジン回転数で最大トルクを発揮するT120。スピードを出さずとも、アクセルを開けた瞬間に大地を蹴る図太いトルクを味わえる。
【ドライビングポジション】244kgの車体は取り回し時にはズッシリと重いが、走り出してしまえばこの重さが上質感へとつながる。シート高は790mmと低めだが、少々車体に幅がある印象で、両足の踵までは着けることができた。上半身はとにかくアップライトなポジションで、ツーリングでも疲れないだろう。[身長172cm/体重75kg]
シリンダーが垂直なバーチカルレイアウトの2気筒エンジン。空冷風のデザインだが水冷で、前方にラジエターを備える。クランクケースカバーにブラックのエンブレムがあるのがバド・イーキンス仕様。
ウインカーにLEDを採用するのもバド・イーキンス仕様ならでは。ターンオン時に6つの光源がオレンジに光り、小ぶりなウインカーハウジングはサテンブラック仕上げ。ヘッドライトはハロゲンを採用している。
クラシカルな2連タイプの指針式メーターを採用。右が回転数で左が速度計。それぞれにデジタルパネルが組み込まれ、走行モード、走行可能距離、燃料計、トラクションコントロール状況、ツイントリップなどなど多機能。
メッキ仕上げのハンドルが白いグリップと相まって、白と赤のペイントデザインをより一層引き立てる。ちなみにシャーマン・オークスとはカリフォルニア州ロサンゼルス郊外の地名で、バドの店があった。
ミラーはカフェレーサーなどで見かけるハンドルの端にクランプするバーエンドタイプを採用。またホワイトで目立つダイヤモンドローレットテクスチャーグリップも、バド・イーキンス仕様の証。
フェンダーにも、カリフォルニア・フラインググローブのロゴマークが入っている。しかもこのモデルにはトライアンフのCEO、ニック・ブロアーとバド・イーキンズの娘たちの署名が入った真正品証明書が付く。
コロッシレッドとスノードニアのツートーンカラーに挟まれた銀色のコーチラインは、職人による手書き。“T”が大きい伝統的なTRIUMPHロゴが市販車に採用されるのは、およそ30年ぶりとのことだ。
タンク上面には”カルフォルニア・フラインググローブ”と呼ばれるロゴが配される。タンクキャップも特別仕様で、かつてのレーサースタイルのモンザキャップを採用。フリップアップタイプのカバーだ。
縁に白のパイピング処理が施されたシートは、ステッチ処理にまで高級感があふれている。シート下にはUSBコネクターがあり、タンクのコーチライン(ピンストライプ)を入れた職人のイニシャルがある。
●文:谷田貝洋暁 ●写真:関野 温 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
ロンドンデザインミュージアムでのデザインプロトタイプ発表に続くテスト写真を公開 トライアンフは、新型トライデントがイギリス、ヒンクレーでの最終テストに登場した姿を公開した。競争の激しいミドルサイズ(6[…]
最新排ガス規制(ユーロ5)に適合化させながらも理想とする走行性能を獲得することなどを目的に、ボアまたはストローク増による排気量拡大が選択され、それと同時に車体や装備の大幅なアップデートも施されたのが、[…]
トライアンフのストリートトリプルについては、以前最上位モデル「RS」の試乗レポートをお届けした(前記事はこちら)。765ccの水冷並列3気筒は、モト2エンジンの開発スタッフが改良に関与したというだけあ[…]
トライアンフにストリートスクランブラーという車種がある。900ccのボンネビルT100をベースにフロントホイールを19インチ化し、さらに右出しのアップマフラーで往年のデュアルパーパス風に仕立てたモデル[…]
新型コロナによる経済悪化が報道される中、バイク販売は健闘している。上半期において250㏄超の新車販売は前年比6.1%減だったが、126〜250ccは1月から4か月連続で増加するなど比較的堅調を維持して[…]
最新の記事
- 「カワサキ初のレーサーレプリカ」ライムグリーンカラーを導入した初の大排気量車:カワサキZ1000R【あの素晴らしい名車をもう一度】
- 変化を一気見! カワサキ「Z900RS」歴代カラー大図鑑【2018~2025年モデル】
- 2025MotoGPヘルメット勢力図は5社がトップを分け合う戦国時代へ突入! 日本の3メーカーに躍進の予感!?
- 【SCOOP!】スズキ「GSX-8」系にネオクラが存在か!? 丸目のGS&クーリーレプリカ復活希望!!
- 「初の100ps超え!! 」全面改革で進化した第二世代のZ:カワサキZ1000J【あの素晴らしい名車をもう一度】
- 1
- 2