トライアンフ ストリートトリプルの末弟として加わった「S」は、欧州のA2ライセンスライダーを対象としつつも、バランスのいい排気量と足回りでベテランをも魅了。税抜100万円切りというプライスにも要注目だ。
[◯] 表情の変化がユニーク。回したくなるエンジン
トライアンフのストリートトリプルについては、以前最上位モデル「RS」の試乗レポートをお届けした(前記事はこちら)。765ccの水冷並列3気筒は、モト2エンジンの開発スタッフが改良に関与したというだけあり、回転上昇がスムーズな上に非常にパワフル。各種デバイスによる安心感もあって、あの広い富士スピードウェイの本コースを思う存分楽しませてもらった。
このRS以外に低シート高の「R」も用意するストリートトリプル。そのシリーズの末弟として新たに加わった「S」の最大のポイントは、排気量が上位2機種と異なるということだ。開発の背景にはEUのA2ライセンスが存在するが、わざわざボアとストロークの両方を変更し、しかも’16年モデル以前の675ccではなく660ccに設定したあたりに、若いライダーを安全にステップアップさせてあげたいというトライアンフ開発陣の意気込みが伝わってくるようだ。
まずはエンジンから。A2免許の上限である47.6psのちょうど2倍、95.2psを発揮する水冷並列3気筒は、回転数ごとの表情の変化がRSよりも明瞭で楽しい。低回転域では粒立った鼓動感があり、中回転域ではそれが整い始め、そして高回転域にかけて意志を持っているかのように伸び上がっていく。ライディングモードの選択肢はロードとレインの2種類で、前者は開け始めから元気がが良い。ちなみにRSはモードが5段階で、上から2番目のスポーツモードでも慣れるまではサーキットですら持て余すほどだった。そう考えると、Sの660ccという排気量とパワー設定は絶妙と言えるだろう。
ハンドリングも素晴らしい。RSよりもキャスターとトレールの設定が穏やかなこと、また標準装着タイヤの変更もあって、軽快感と安定性のバランスが絶妙だ。標準グレードとされるショーワの前後サスは、ゼブラのある路面やギャップ通過時に追従性の低さが露呈するが、全体のパッケージングとしては良好。付け加えると、フロントブレーキもRSやRとはだいぶ差があり、特にタッチについては超えられない壁を感じるが、峠道でもコントロールの幅は十分にあり、制動力も及第点だ。
【豪華装備の兄貴分・RS】排気量の違いのほか足まわりも変更されており、Sがキャスターアングル24.3°に対し23.9°に設定、トレールはSの103.4mmに対し100mmとなり、タイヤはピレリのディアブロスーパーコルサSP V3を装着している。
[△] スリッパークラッチで操作力を軽くしたい
RSはスリッパークラッチとクイックシフターを採用しているためあまり気にならなかったが、Sはこの2つが非採用なのでクラッチレバーの重さが露呈。エントリーユーザーを対象としているなら、せめてアシストスリッパークラッチの導入を。
[こんな人におすすめ] 激戦区のミドル、このエンジンはベテランも魅了
デイトナ675のネイキッド版として’07年に登場したストリートトリプル。初代から楽しいバイクではあったが、新型のSは厳しいユーロ5をクリアしながらさらに磨きをかけてきた。これが現行トライアンフ最安値。バーゲンプライスだ。
●まとめ:大屋雄一 ●写真:真弓悟史 ●取材協力:トライアンフモーターサイクルズジャパン ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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