レース用ECUでは1万6500rpmレッドに
従来型は欧州フルパワー仕様で119ps。国内仕様は馬力自主規制により78psに抑えられていた。一方、新型は日本仕様も121psに到達し、規制対応しつつ最大のライバル=ヤマハYZF-R6(118.4ps)を上回る。
これに貢献したのがエンジンの高回転化だ。出力目標値から最高出力発生回転数を導き出し、従来の1万2000→1万4000rpmへ大幅に引き上げた。レッドゾーンは従来と同じ1万5000rpm以降となるが、レース用ECUを使用して1万6500rpmまで高めることも可能だ。
高回転化を実現するため、クランクシャフトやバルブスプリングなど回転&往復運動に関わる部品の材質を変更し、強度をアップ。ポートやスロットル径の変更、エキゾーストパイプの見直しによる吸排気効率の向上も高回転化にひと役買う。さらに電子制御スロットルを新採用。ECUが最適なバルブ開度を瞬時に演算し、乗り手の意志に忠実なパワーフィールを実現する。スリッパークラッチの導入もトピックだ。
変更点は多岐に渡るが、追求したのは「トータルコントロール」。歴代CBR-RRシリーズに一貫した思想は、新型でも決してブレていない。
【モト2を支えた名ユニット】軽量コンパクトな心臓部は、’10~’18年の世界選手権モト2に独占供給した実績を持つ。新作は従来型をベースに内部を徹底改良した。
※エンジン写真は’13年モデル。
ホンダ公式youtubeより。スポーツランドSUGOと思しきコースを走る新600RRの速度計は、228km/hで回転計にまだまだ余裕アリ!
材質と構造を見直した内部チューン
(左)吸気ポートの容積を2.2%増加。合わせてスロート部にバルブの中心軸から傾けたポート加工(非軸線加工)を施し、つながりが滑らかな経路とすることで吸気効率を上げた。(右)吸気バルブの閉じるタイミングを5°遅らせ、 排気バルブのオープンを5°早めた。これにより混合気の吸気効率と燃焼ガスの排気効率を向上。ハイパワー化に貢献する。
(左)エンジンの高回転化に伴う吸入空気量を確保するため、スロットルボア径をφ40→φ44mmに拡大。吸気通路は、スロットルボディ内を含む断面形状を滑らかに変化させることでロスを低減した。(右)プラグを従来より7mm長いロングリーチタイプに変更。プラグホール、排気バルブシート周辺にまでウォータージャケットを拡大し、燃焼室や排気バルブ周辺の冷却性能をアップした。
高回転域で本領発揮
新旧のパワーグラフを比較すると、中速域までは従来型の方が力強い。それ以降は高回転化した新型の独壇場で、一段とレース向けの特性に変化した。
【32%軽減のスリッパークラッチ】非採用だったアシストスリッパークラッチを投入。クラッチレバーの重さを従来比で32%も軽減すると同時に、急激なエンブレによる後輪の浮き上がりを抑制する。カムはアルミ製で軽さが特徴。
代名詞のエキゾーストも各部見直しで排気効率アップ
エキゾーストパイプはサイズを見直し、高出力化に貢献。従来より大型で重いキャタライザーを採用したが、排気管各部の板厚を適正化することでエキゾーストの重量増を最小限に抑えた。
テールとマフラーを一体化したセンターアップマフラー。現行スーパースポーツで採用するのはCBR600RRのみだ。マスの集中化という点で不利だが、カッコイイのは正義。特に変更点はない模様だ。
エキゾーストパイプ集合部後方に配置した触媒は、リヤサスペンションのリンクや可変排気バルブのスペースを確保しつつ大型化。現行の平成28年排ガス規制(ユーロ4相当)に対応し、国内ではユーロ5相当の次期規制が導入される’22年11月まで生産可能だ。

【オプションのクイックシフターは上下対応】従来型で非装備だったクイックシフターをオプションで装着可能に。シフトアップ&ダウン対応型で、制御介入のタイミングを上下とも3段階ずつ調整できる。
●文:沼尾宏明 ●写真:山内潤也 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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