補機類のチューニングで日常域の扱いやすさを追求
さて、クラス最高のパワーを達成することはできた。問題は、低中回転域での扱いやすさである。かつてのニーゴー4発を知るベテランは「回さないと速くなかった」と口を揃える。当時の雑誌の比較試乗記を見ても、ツーリングでは2気筒の方が楽だと記されていることが多い。
付け加えると、その2気筒勢で人気だったのが、ニンジャ250Rの前身であるGPX250RやZZR250などだ。山本さんはどんなマジックを使ったのだろうか。
「低中回転域の扱いやすさは主に排気系でチューニングしました。エキゾーストパイプのレイアウトや連結パイプ、集合のさせ方ですね。あとはカムタイミングなどでしょうか。どの程度のトルクが出ていれば扱いやすいといった数値的な目標はないのですが、ニンジャ250と同等の加速力を目指しましたし、最新技術を採り入れ、バリオスよりも乗りやすく仕上がりました」
そのマフラーについては、4.5Lもの大容量チャンバーを備えることでサイレンサーの小型化を実現。またエキゾーストパイプと連結パイプのレイアウトについては、ZX-6Rをはじめ他の並列4気筒モデルを参考にしたという。
「電子制御スロットルを採用したことで、パワーモードの切り替えやトラクションコントロール、クイックシフターなどのライダーサポートシステムの導入が可能となりました。スロットルケーブルで引いているような自然な操作感を目指しています。SEに標準装備されるクイックシフターは、サーキット走行も想定していたので初期から検討していました。実際にテストしてみると、市街地の方がシフトする回数が多いので、多くの人にその便利さを味わってもらえると思います。開発ライダーにかなりセッティングを煮詰めてもらったので、自分がうまくなったと錯覚するほどよくできていますよ」
そして、カワサキといえばラムエアダクトである。このZX-25RもニンジャH2と同様のダクトレイアウトを採用することで、全回転域でのエンジン性能向上につなげている。付け加えると、カウルのサイドにあるダクトにも機能が盛り込まれているという。
「ZXR250でいうとラムエアダクトがあった位置ですね。走行風を積極的にエンジンに当てて放熱を促進させるのが狙いで、当時はK-CAS(カワサキ・クール・エア・システム)と呼ばれていました。特許出願中のラジエターファンカバーもそうですし、冷却にはけっこう気を使いましたね」
こうして令和の世に誕生した完全新設計の250cc並列4気筒は、レッドゾーンが1万7000rpmからという超高回転エンジンに仕上がった。すでに動画サイトなどでそのサウンドが多数公開されているが、スピーカーやイヤホンを通じてすらZX-25Rの咆吼は鳥肌が立つほど官能的だ。今日の厳しい騒音規制をクリアしながらこうした音を作り上げたことに拍手を送りたい。
「ターゲットは、スポーツマインドを持ったライダー全般です。4気筒ならではの伸び上がり感や上質なフィーリング、甲高いサウンドは今までにないものですし、かつてのニーゴー4発を経験したベテランライダーたちにもぜひ楽しんでほしいと思っています」
ニンジャZX-25R開発者インタビュー、後編ではさらに車体設計担当者と開発ライダーにも話を聞く。
●インタビュー:大屋雄一 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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