同じ「カブ」でもキャラは別モノ

ホンダCT125ハンターカブの兄弟車実走比較〈スーパーカブ C125|クロスカブ110〉

  • 2020/9/16
ホンダ CT125 ハンターカブ/スーパーカブ C125/クロスカブ110 【試乗比較インプレッション】

発売前から予約が殺到するほどの大人気となった「CT125ハンターカブ」。その実力をより多角的に検証するために、原付二種のカブ兄弟モデルである「スーパーカブC125」と「クロスカブ110」を用意し、比較試乗を敢行。その結果、同じ”カブ”ながらキャラはまったく別モノであることが判明した。 

価格もスペックも三者三様。直接比較でキャラがより明確に

まずは「スーパーカブC125」。初代C100の発売から60年目の’18年に発売されたシリーズの旗艦で、ファーストモデルをオマージュした流麗なスタイリングと、静粛性に優れたエンジンなどが特徴だ。車両価格は40万7000円で、CT125より3万3000円安い。

もう1台の「クロスカブ110」は車両価格34万1000円。CTとの差額が9万9000円と大きな開きがある。排気量は109ccで他の2車よりも少ないが、始動方式がセル/キック併用式だったり、キャリアとしても利用できるヘッドライトガードを備えていたりと、CT125ハンターカブデビュー以前のレジャー系ジャンルを支えてきたのがこのクロスカブ110だ。なお、法規対応により’20年モデルでテールランプが変更されたが、今回撮影で使用したのはそれ以前に生産された個人所有車である。 

ホンダ CT125 ハンターカブ/スーパーカブ C125/クロスカブ110 【試乗比較インプレッション】

(左)CT125 ハンターカブ (中)クロスカブ110 (右)スーパーカブ C125 [写真タップで拡大]

スペックを軽くチェックしよう。最高出力はC125:9.7ps、CT125:8.8ps、クロスカブ:8.0psの順となっており、逆に車重は106kgのクロスカブが一番軽く、それにC125の110kg、CT125の120kgが続く。最もコンパクトなC125と大柄なCT125を比べると、かなり差があることが分かる。3車とも2名乗車が可能だが、装備されているのはタンデムステップのみ。2人乗りをする場合は、市販されているタンデムシートを別途用意してほしい。

ホンダ CT125 ハンターカブ/スーパーカブ C125/クロスカブ110 【試乗比較インプレッション】

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ホンダ CT125 ハンターカブ

【’20 HONDA CT125 HUNTER CUB】主要諸元■全長1960 全幅905 全高1080 軸距1255 シート高800(各mm) 車重120kg(装備) ■空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 8.8ps/7000rpm 1.1kg-m/4500rpm 変速機4段 燃料タンク容量5.3L ■タイヤサイズF=70/90-17 R=80/90-17 ●価格:44万円 [写真タップで拡大]

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風景をゆったりと楽しめる見晴らしの良さを求め、シート高はC125よりも20mm高い800mmに設定。グリップエンドを含むハンドル幅(全幅)805mmはCRF250Lと10mmしか変わらず、グリップ位置も高いのでオフロード走行にも適している。

ホンダ スーパーカブ C125

【’20 HONDA SUPER CUB C125】主要諸元■全長1915 全幅720 全高1000 軸距1245 シート高780(各mm) 車重110kg(装備) ■空冷4スト単気筒SOHC2バルブ 9.7ps/7500rpm 1.0kg-m/5000rpm 変速機4段 燃料タンク容量3.7L ■タイヤサイズF=70/90-17 R=80/90-17 ●価格:40万7000円 [写真タップで拡大]

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背筋がスッと伸びることで開放的な視野が得られるという初代C100のライポジを現代的にアレンジ。他の2車よりも格段にコンパクトであり、コミューターとして非常に操縦しやすい。足着き性はもちろん、乗降車しやすいのもポイント。

ホンダ クロスカブ110

【’20 HONDA Cross Cub 110】主要諸元■全長1935 全幅795 全高1090 軸距1230 シート高784(各mm) 車重106kg ■水冷4スト単気筒OHC2バルブ109cc 最高出力8ps/7500rpm 最大トルク0.87kg-m/5500rpm 4段リターン 燃料タンク容量4.3L ■タイヤサイズF=80/90-17 R=80/90-17 ●価格:34万1000円 [写真タップで拡大]

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全高はCT125より5mm高いが、グリップ位置はハンドル1本分ほど低く、街乗り主体ならこちらの方が扱いやすい。シート高はC125より4mm高いが、ウレタンがソフトなのでお尻が深く沈み込み、足着き性はC125と同等か、わずかに上回る印象。

スーパーカブC125:ラグジュアリーを具現化。スーパーカブの集大成

スーパーカブC125は、五感から得られる情報が全てが上質で、原付二種という枠を完全に超越している。

まずはスマートキーだ。アンサーバック機能を搭載しているので、スイッチを押せばウインカーが点滅して自車位置を知らせてくれる。もう乗る前から所有欲を満たしてくれるのだ。そしてシートにまたがると、デザイン性に優れたコックピットが目に飛び込んでくる。ケーブル類の露出や未塗装樹脂パーツの使用を控えることで、ここまで上質になるものかと驚かされる。 

ラグジュアリーを具現化。スーパーカブの集大成

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エンジンも質感に優れている。CT125と同様にウェーブ125から派生したエンジンだが、プライマリーギヤをスパーからヘリカルにしたり、高精度なクランクジャーナルベアリングを採用するなど、エンジンノイズの低減に注力している。さらに、専用のシフトドラムベアリングやシフトアームラバーの採用、クラッチダンパーラバー素材の最適化など、シフトのフィーリングにまで改良の手が及んでいる。 

それらの効果は、エンジンを始動した瞬間から実感できる。アイドリング時のメカノイズや微振動が少なく、また1速のシフトした瞬間のショックもCT125より明らかに少ない。60年以上も基本設計を変えずに進化してきたエンジンだが、まだまだやれることがあるのかと感心させられてしまう。 

パワーフィールは、低中回転域での力強さや発進加速ではCT125に軍配が上がるが、高回転域にかけて気持ち良く伸び上がるフィーリングや力量感ではスペック以上の開きがあるといってもいい。CT125も決して微振動が多いわけではないが、C125はまるで職人が1本ずつクランクのバランス取りをしたかのように振動が少なく、それを味わいたいがために低いギヤで引っ張りたくなるほどだ。ちなみにトップ4速60km/hでの回転数はCTより500rpmほど低く、それも上質さを感じさせる要因の一つだ。 

ハンドリングもいい。車体の絶対的な剛性感はCT125の方が明らかに上だが、足まわりも含めてしなやかな方向で上質にまとめられている。軽い入力で気持ち良く向きを変え、直進時も旋回時も安定性に優れる。乗り心地についても3車の中で最も良く、そうした全てが合わさって、ラグジュアリーなコミューターというキャラが形成されている。よってCT125とC125の二択で悩むライダーはいないだろう。

クロスカブ110:あくまで「テイスト」の域、牧歌的な鼓動感は最も濃密

クロスカブ110は、現行モデルからレッグシールドが廃止され、見た目はハンターカブに近付いた。排気量は109ccだが、スロットルを大きく開ければ交通の流れをリードすることができるし、ブレーキは前後ドラムだが車重に対して過不足はない。それに多少のオフロード走行だって……。という具合に高く評価していたのだが、CT125と直接比べたことで、にわかに雲行きが怪しくなってきたのだ。 

あくまで「テイスト」の域、牧歌的な鼓動感は最も濃密

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まずはエンジン。CT125との最高出力の差は1psに満たないが、全域でトルクの線が細い印象で、それを補うために高めの回転数を維持するギヤ比となっている。単体で乗っている分には何の不満もないが、CT125の過剰ではない範囲の豊かなトルク感を知ってしまうと、物足りなさは否めない。ただし、トップ4速60km/hでの回転数は5500rpmと他の2車よりも高めながら、スーパーカブならではの牧歌的な鼓動感はこのクロスカブが最も濃密。これを楽しむために選ぶ人がいても不思議ではないだろう。 

ハンドリングについては、車体の剛性の違いが明確に伝わってくる。標準装着タイヤはサイズ、銘柄ともCT125と共通で、操舵特性などは近しいのだが、速度が上がるほど安定性に開きが出てくる。そして、オフロードではハンドル操作に対してフロントの舵角がワンテンポ遅れ気味で、ペースを落とさざるを得ない場面があった。 

ブレーキも同様だ。CT125の制動力に慣れてしまうと、クロスカブのドラムブレーキはかなり手前から作動させる必要があり、設定スピードの違いを見せつけられる。特にフロントはワイヤー式なので、シューがドラム内壁に触れてからもレバーが深く握り込めてしまうなど、ディスクとのブレーキタッチの差も気になるところだ。 

クロスカブは、その名前とスタイリングからトレッキング的な走りができると期待する人も多いだろうが、実際にはアウトドアテイストの域を脱しておらず、荷物がたくさん積めるレジャーバイクとして捉えるべきだろう。そして、そうした不満の声を解消するべくトレッキング性能までも磨き上げたのがCT125であり、価格差以上の満足度が得られるのは間違いない。

●文:大屋雄一 ●写真:真弓悟史
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