新型コロナウイルスにより先が見えない2020モトGP。やきもきした状態が続くが、青木宣篤監修の「上毛GP新聞」では、こんな時こそひときわマニアック全開。2月に行われたマレーシア公式テストでの秘蔵ネタを披露する。ラストはドゥカティが追求を続ける、スタート時の効率を高める「ホールショットデバイス」について。
ドゥカティがまた企んでいる。とりあえずここでは「ホールショットデバイス2.0」と仮称しよう。長いので「HSD2.0」と省略することにする。
ホールショットデバイスはサスペンションの動きを抑制することで、スタート時の効率を高めるアイテム。モトGPでは’19年のドゥカティの採用を皮切りに、ちょっとしたトレンドになりつつある。
レーシングライダーはみんな欲しがり屋さん(笑)。「よそのマシンに付いているモノはオレのマシンにも付けろ」 ヤマハ、アプリリアはすでに搭載しているし、もちろんその他のメーカーも水面下で開発を進めているだろう。
となると、先駆者ドゥカティはさらに先に行こうとする。ドゥカティのHSDはリヤサスペンションを固定するものだが、どうやら昨年のうちからスタート時のみならずレース中にもHSDを利用してリヤの車高を下げていたのだ。
マレーシア公式テストでも、ストレートでベタベタのシャコタン状態になっていることが確認できた。まさにHSD2.0!
どういう効用があるのか考察してみよう。まずストレートでは、車高が低くなることで前方投影面積がわずかながらでも減少し、空力特性が向上している……のかもしれない。
ドゥカティのHSDはリヤサスを低く固定するものだから、空力上はリフトアップしやすくなるはず。そこをフロントのウイングレットが抑えることでバランスしている……と思われる。
そしてコーナー。’19年、アレックス・リンスは「ドゥカティはコーナーでリヤを下げている」とコメントしていたが、ブレーキング時にはリヤの浮き上がりを抑え、脱出時はトラクション性を高めている…のだろうか?
正直、よく分からない(笑)。だが、リヤの車高は下がっていた方がいい時と、悪い時がある。ドゥカティも常に下がっているわけではないのだ。そしてサスペンションは電子制御できない。
ということは、機械的な仕組みをライダーが走行中に操作し、「固定/解除」を繰り返していることになる。ドゥカティではMTB用のボタンが装着されているようだが、走行しながらポチポチとボタンを押すのだ。20数ラップのレース中、適宜ポチポチとボタン操作するライダー。それでなくても今のモトGPマシンはライダーがやることが多くて大変なのに、さらにひと手間の忙しさ。発想は相変わらず素晴らしい盲点を突いてくるが、決してライダーフレンドリーな装備ではない。手がつりっぱなしになってしまいそうだ……。
●監修:青木宣篤 ●写真:佐藤寿宏/高橋剛/DUCATI/MotoGP.com
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