VRを活用したシミュレーターで操縦安定性を研究

VR酔いからテストライダーを救え! エンジン音と振動がカギだった…ヤマハと静岡大学が研究

  • 2020/7/6

ヤマハ発動機と静岡大学の共同研究グループは、5月中旬にネイチャーリサーチ社のオンライン科学ジャーナルに「エンジン音と、振動の大きさやタイミングを同期させるとVRを含む一人称視点での映像酔いを大幅に低減できる」という成果を発表。操縦安定性の研究でシミュレーターを用いる際に起こってしまう「VR酔い」の解消に音と振動が効果をもたらすことがわかった。

ゲームやアトラクション、映画などでも活用されるVRによる「VR酔い」が問題に

ヤマハは2020年7月6日にリリースを発表。ヤマハ発動機と静岡大学による共同研究グループが5月中旬にネイチャーリサーチ社のオンライン科学ジャーナルに「エンジン音と、振動の大きさやタイミングを同期させるとVRを含む一人称視点での映像酔いを大幅に低減できる」との成果を掲載したという。

アミューズメントパークのアトラクションや、自宅で楽しむ映画・ゲームといったエンタテインメントの分野、また自動車教習所の教習や住宅会社による設計図面の仮想体験など、VR(仮想現実)技術の活用領域が広がりを見せているのはご存じの方も多いと思う。ところが、VRを体験した人が車酔いにも似た「VR酔い」を引き起こす症例が多数報告されており、さらなるVR技術の発展・普及に向けての課題のひとつになっていた。

こうした問題に取り組んだのがヤマハ発動機と静岡大学の共同研究グループで、「エンジン音と、振動の大きさやタイミングを同期させるとVRを含む一人称視点での映像酔いを大幅に低減できる」とした研究の成果をネイチャーリサーチ社のオンライン科学ジャーナルに発表した。「VR酔い」は学術界でも関心の高い研究領域なのだという。

この実験は、室内でスクーターに乗った被験者(80人)が、ヘッドマウントディスプレイを装着してVR走行を行い、酔いの程度を20段階で評価する方法で行われた。この結果、「風景映像に音と振動の両方を合わせた場合のみ、酔いの低減効果が見られる」ことがわかった。

ヤマハ発動機側の研究メンバー三木将行さん(左)と木村哲也さん。

仮想現実の中をバイクで走り、操縦安定性を研究する

「当社では、二輪車の操縦安定性の研究に以前から乗車型のシミュレーターを用いてきました」と話すのは、ヤマハ発動機側の共同研究グループの一人、基盤技術研究部の三木将行さん。「仮想世界に構築したさまざまな道路環境を、さまざまな製品で走ることができますから、ライダーと車両の関係を明らかにしていく研究には非常に重要な設備です。当社独自の開発思想『人機官能』をより深めていくためにも、また『ハンドリングのヤマハ』と高く評価いただいている強みの背景にもつながっています」

これにVR酔いという課題もあったが、研究中に酔ってしまうテストライダーが少なくなく、この課題を解消したいヤマハ発動機と、この分野の研究に発展性を見出した静岡大学の宮崎研究室が出合って共同研究がスタートしたのだという。

「それまでも『音がないと酔いやすい』とか、『振動も酔いの低減に効果がありそうだ』といった経験に基づく仮説が社内にも存在しましたが、明確な根拠は持っていなかった」

「現在も進行中の本研究が「『VR酔い』の課題解決につながれば、さまざまな技能や感性を持ったライダーが、開発の初期段階から仮想上の試作車を世界中の道路で走らせることが可能になります。それは、より効率的に、よりお客様の使用実態に近い高性能・高機能、そしてヤマハらしい製品開発へと結び付いていくはずです。また、ソーシャルVRや遠隔コミュニケーションの発展にも貢献できると考えています」

80人の被験者が酔いの程度を20段階で評価。

バイクの挙動やGの変化に敏感なテストライダーだからこそ、VR酔いを起こしてしまうのだろうか? いずれにせよ、こうした研究が進んでシミュレーターによる開発が加速していくことを期待したい。

情報提供:ヤマハ発動機

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