低回転域からスムーズ&パワフル

’19トライアンフ ストリートトリプルRS試乗インプレ【意のままに操れる快感】

’17年に排気量を拡大したトライアンフ ストリートトリプルの最上位モデル・RSが早くもモデルチェンジした。基本骨格はそのままに、従来のイメージを残しつつ外装を刷新。エンジンは加工精度を上げることで回転マスを7%低減している。Moto2エンジンの実力が公道で味わえるぞ!


●まとめ:大屋雄一 ●写真:トライアンフモーターサイクルズジャパン ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

[◯]職人技が伝わる3気筒。サーキットでも大満足

ボンネビルに代表されるモダンクラシックシリーズが好調のトライアンフにおいて、ストリートトリプルのような機種は異色作のように思われがちだ。しかし、そもそも”ストリートファイター”というジャンルの元祖と言われるのが同社のスピードトリプルであり、常に時代が求めるスポーツバイクを作ってきたという意味では、創業時からフィロソフィーは不変なのだ。

765ccの水冷並列3気筒を搭載するストリートトリプル。その最上位モデルのRSが進化した。基本骨格はそのままに、従来のイメージを残しつつ外装を刷新。エンジンはユーロ5に適合させつつ、加工精度を上げることで回転マスを7%低減している。結果、最高出力と最大トルクのピーク値こそ変わらないが、発生回転数に変更があった。マイナーチェンジの域を出ないが、その改良にMoto2エンジンの開発スタッフ陣が関与したと聞けば話は別だ。

トライアンフ ストリートトリプルRS

【’19 TRIUMPH STREET TRIPLE RS】主要諸元 ■全長ー 全幅775 全高1085 軸距1405 シート高825(各mm) 車重188kg(乾燥) ■水冷4スト並列3気筒DOHC4バルブ 765cc 123ps/11750rpm 8.06kg-m/9350rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量17.4L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●価格:143万7000円 ●色:灰、黒

トライアンフ ストリートトリプルRS

【素性の良さは踏襲しつつ改良】アルミツインビームフレームやダイキャスト製のシートレール、鋳造製のスイングアームなど基本骨格は継続。標準装着タイヤはピレリのディアブロスーパーコルサSP V3で、クイックシフターやスリッパークラッチも採用。

トライアンフ ストリートトリプルRS

【Moto2エンジン開発スタッフ陣が改良を担当】’17年に排気量を675cc(φ74×52.3mm)から765cc(φ78×53.4mm)に拡大した水冷並列3気筒エンジン。クランク、クラッチ、バランサーの機械加工精度を上げて回転マスを7%低減し、中回転域でのトルクは9%向上。合わせて1速と2速のギヤをショート化した。

今回は富士スピードウェイの国際レーシングコースとショートサーキット、そして場内の移動ルートでテストした。ストリートトリプルは3グレードのうち、RSだけは先代からエンジンの微振動が少なく回転上昇がスムーズだったが、新型はさらに磨きが掛かっている。加えて低回転域から非常にパワフルだ。5種類のパワーモードのうち、上から2番目のスポーツモードですら2速でスロットルを大きく開けるとフロントが浮いてくるほどで、そこから息の長い加速が続く。トラコンなど各種デバイスによる安心感もあって、無心でエンジンを楽しめる。

ハンドリングは、標準装着タイヤの特性によるものなのか、倒し込みや切り返し、舵角の付き方がシャープで、最初は戸惑ったほど。ところが、その軽快さに慣れると新型RSの狙いが見えてくる。微速域から200km/hオーバーまで狙ったラインをビシッとトレースでき、気持ち良く旋回できる。車体が軽い上にマスが集中しているのと、ステアリングモーメントに影響しないヘッドライトのフレームマウント、荷重移動がスムーズな足回りなどが貢献しているのは確かで、まさにスポーツネイキッドのお手本のような走りだ。

トライアンフ ストリートトリプルRS

ショーワのBPFにオーリンズのSTX40、ブレンボのM50モノブロックキャリパー&レシオ可変マスターなど、贅を尽くした足まわり。

トライアンフ ストリートトリプルRS

シート高は従来と同じ825mm。車体がスリムなので足着き性は良好だ。ご覧のとおり上半身はわずかに前傾(身長175cm、62kg

トライアンフ ストリートトリプルRS

【最新スマホ並みに美麗。拡張性の高さも魅力だ】TFTメーターはグラフィックが第2世代に。純正ブルートゥースモジュールを接続すれば、ゴープロやスマートフォンとの連携も可能。出力モードはレインからサーキットまで5段階。

トライアンフ ストリートトリプルRS

【顔とテールが識別点】LEDヘッドライトやその上にあるフライスクリーン、サイドパネル、シートカウル、バーエンドミラーなど、タンク以外の外装を一新。フレームはチタニウムシルバーに。

トライアンフ ストリートトリプルRS

容量17Lを公称する燃料タンクは特に変更なし。スポーツライディングに適した面構成だ。また、サイレンサーのエンド部分はトライアンフのエンブレムが付いた上質なカーボンカバーに。

トライアンフ ストリートトリプルRS

車載工具はタンデムシート裏に集約。コイン状の工具はフォークの減衰力調整用のマイナスドライバー。

[△]ハイグリップタイヤが標準。維持費はかかるかも

キレのいい走りを支えているピレリのディアブロスーパーコルサSPは、ツーリングタイヤよりも耐摩耗性は劣るので覚悟を。それと、新型のスタイルは既存ファンを大切にしたのだろうが、もう少しインパクトのある刷新でも良かっただろう。

[こんな人におすすめ]Moto2由来のパワフル直3をアップハンで

サーキットを走ってみて、エンジンと同等レベルで感心したのがブレンボ。熱ダレしない上にバンク中も繊細にコントロールできるのだ。スペック的にはMT-09が近いのだが、マシンを操ることの濃密さではストリートトリプルRSの方が大きく上回る。

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