怖がりなほうがバイクに向いている

世界GP王者・原田哲也のバイクトーク Vol.35「引退してから何年かは、ハイサイドの夢で飛び起きた」

1993年、デビューイヤーにいきなり世界GP250チャンピオンを獲得した原田哲也さん。虎視眈々とチャンスを狙い、ここぞという時に勝負を仕掛ける鋭い走りから「クールデビル」と呼ばれ、たびたび上位争いを繰り広げた。’02年に現役を引退し、今はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。そんな原田さんのWEBヤングマシン連載は、バイクやレースに関するあれこれを大いに語るWEBコラム。第35回は、アプリリア時代の契約の話と『怖がり』なライダーについて。


TEXT:Go TAKAHASHI PHOTO:YOUNG MACHINE Archives ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

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また、欧米での契約ってかなりカッチリしたもののように思われそうですが、実は意外と臨機応変が効くんですよ。例えば契約上、飛行機での移動はビジネスクラスということになってましたが、南米のように遠くに行く時は特別にファーストクラスにしてくれるなど、人間味がありました。まぁ、僕はすごく大事にされた方だと思います。僕もチームを大事にしましたしね(笑)。

サーキットではもちろん、サーキット外のプライベートでもスタッフとはよく一緒に食事をしました。イタリアのサーキットでレースが行われる時は、サーキット近くに住んでいるスタッフの自宅での食事会に招かれるので、1日早く現地入り、なんてこともよくありました。スタッフにとっては、ライダーを家に招くっていうのはちょっとした自慢だったようです(笑)。でも、こちらのモチベーションも上がるし、信頼関係は築けるし、お互いの理解も深まるしで、とてもありがたいことでした。

ふだんから密接なコミュニケーションを取っていれば、スタッフは僕の表情から多くを読み取ってくれます。走行セッションがうまく行かず険しい目つきをしていると、「あ、今ちょっとピリピリしてるぞ」とすぐに気付いてソッとしておいてくれたり、いつもより速やかに作業を済ませたり(笑)。わざと怖い顔をしてピットを引き締める、なんてこともしてました。

逆に、コッチがミスして転んでしまった時などは、「ごめんね」と謝ります。僕が転ぶ時は結構大きなクラッシュが多く、マシンは廃車寸前の大ダメージを受けることもよくありました。そんな時、メカニックたちは晩ご飯も早々に切り上げて、夜を徹しての修復作業になります。先に戻って休むのは本当に申し訳なく……。そんな気持ちも伝えるようにしていました。

現役当時は、特に意識してチームスタッフの心を掴もうと思っていたわけじゃありません。人として当たり前のことをやっていただけ、という感じでした。でも、バレンティーノ・ロッシなんか見ていると、人の心を掴むのに長けていましたよね。スタッフもファンも、みんながバレンティーノの味方って感じで、あの「愛されキャラ」はなかなかの強みになっていると思います。

僕自身が当時ファンの方たちに愛されていたかは分からないけど、レースでは作戦を考えて駆け引きして最後の最後に前に出るタイプだったので、玄人受けしていたってことはあるかもしれません。イタリアでは街の中でもよくサインを求められたものです。でも突然出会った時はみんな当然なにも用意していないから、あわててそこら辺のチリ紙みたいなのを差し出すんです(笑)。レシートの裏なんてこともあります。喜んでサインしましたが、「すぐ捨てちゃうんじゃないかなあ」なんて思ってました(笑)。

チームに大事に扱われ、チームを大事にしたことで信頼関係を築いていった

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