2003年の体制づくりもやっぱり難航!?

山田宏の[タイヤで語るバイクとレース]Vol.17「飛躍のために最後までこだわったライダー選び」

ブリヂストンがMotoGP(ロードレース世界選手権)でタイヤサプライヤーだった時代に総責任者を務め、2019年7月にブリヂストンを定年退職された山田宏さんが、かつてのタイヤ開発やレース業界について回想します。2002年、ブリヂストンは最高峰のMotoGPクラスに参戦開始。終盤には好成績も得ましたが、一方で翌年の体制はなかなか決まらずにいました。


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ところが、翌年の参戦に向けた体制づくりは、最終戦間近になってもまだ難航していました。準備活動はシーズンが後半戦に入った段階でスタートしていましたが、カネモトレーシングを率いるアーヴ・カネモトさんからは「来年はもうやりたくない」という回答。2002年のカネモトレーシングは、メインスポンサー不在のまま参戦していて、マシン貸与やアーヴさんおよびグールベルグ選手の給与などもブリヂストンが受け持っていたとはいえ、期待していたスポンサー獲得はならず、ブリヂストンとの契約金だけではチーム運営が厳しかったのでしょう。加えて、シーズン序盤にはグールベルグ選手のタイヤ不満ぶちまけ問題もあり、アーヴさんのモチベーションは完全に低下していました。

もちろん我々としては引き止めましたし、何度も話し合う機会を設けましたが、アーヴさんの意思は変わりませんでした。オーストラリアGPの予選フロントロー(グールベルグ選手は4番手)や決勝5位がもう少し早い時期だったら、表彰台登壇を夢見てアーヴさんも「あと1年!」なんてことになったかもしれませんが、夏の段階では……。

そこで我々は、ブリヂストンタイヤで戦ってくれる新たなチームを探すことに。そこで浮上してきたのが、イタリアのプラマックレーシングとスペインのポンスレーシングでした。プラマックというのは、元々は芝刈り機をはじめとするホンダ汎用製品の大手カスタマーで、ホンダとのつながりが深く、ホンダからの推薦もありました。2002年設立の新しいチームだったので、彼らとしてもブリヂストンの契約金は渡りに船という状態だったはずです。一方のポンスレーシングは同じくホンダ系で、ロリス・カピロッシ選手やアレックス・バロス選手を擁して最高峰クラスでの優勝経験もあるチーム。ただし、実績のないブリヂストンに対して契約金に対する要求が強い印象でした。

カネモトレーシングに代わるチームを探さねば……!

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