’20合法マフラー最新事情&逸品図鑑

性能アップに貢献する「合法マフラー」最新事情#3〈排ガス規制ユーロ5到来〉

バイクカスタムパーツの真髄といえば、今も昔も「マフラー」。ただ、度重なる規制や政府認証制度の導入で、車検対応の「合法」かどうかが分かりにくくなっていることも事実。そこで、今回はもう一度「合法マフラー」を再整理。ユーロ5に準拠した新しい排ガス規制がアフターマフラーに与える影響について掘り下げる。


●取材・文:宮田健一/川島秀俊 ●撮影:川島秀俊/松井 慎/山下博史 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

ユーロ5時代到来も当面は安心。違法マフラー取り締まりは強化

どんどん厳しくなる環境規制。ついこの間変わったばかりかと思っていると、排ガス規制は国内でも’20年の暮れからユーロ5に準拠した新しいものとなってしまう。具体的な適用時期は新型車が’20年12月から、原付一種を除く継続生産車が’22年11月から。原付一種の継続生産車が少し余裕を持った’25年11月から開始といった具合だ。これまでクラスごとに基準値が設けられていた一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(Nox)については全クラス一律化され、HCは最大で3分の1以下にまで削減するという厳しいもの。さらに非メタン炭化水素(NMHC)と粒子状物質(PM)の2項目も新たに追加される。

こうなると、もう交換用マフラーは作れなくなるのではと危惧してしまうが、それについては心配ないということだ。と言うのも、現在でも既にマフラー単体でどうにかできるレベルではなく、新規制後もマフラーの作り方は変わらないと考えられているからだ。騒音についても同様で、すでに排気音よりもチェーンやタイヤのロードノイズで音量を減らしている段階だ。

一方で、違法マフラーを取り巻く環境はますます厳しくなる。すでに’16年4月20日から性能不明なマフラーへの改造禁止が明確化され、加速走行騒音の防止性能が明らかでないマフラーは保安基準不適合として扱われることとなった。具体的にはJMCAプレートのような「性能等確認済表示」がないと一発でアウト。より「合法マフラー」の価値は高まると言えるだろう。

【JMCAプレートが政府認証を証明】政府認証を受けたJMCAマフラーは、プレートが「性能等確認済表示」を意味することとなる。これがあれば車検も取り締まりも安心だ。

違法マフラーは即検挙可能に。罰金50万円以下の場合も

平成28年4月20日から性能不明なマフラーへの改造禁止が明確化されたことにより、現在は政府認証制度対象となる車両については「性能等確認済表示」が確認できない段階で即検挙が可能となっている。以前は警察が街頭取り締まりをする際、手のかかる音量測定を行って確認しなければ検挙できなかったが、周知期間も十分過ぎたということで、どんどん取り締まりが強化されている状況だ。取り締まられた後で整備命令に従わないと、50万円以下の罰金が課せられることに。また、消音器不備でその場で反則点数2点+反則金6000円が課せられる可能性も高いのだ。

合法マフラー最新事情〈排ガス規制ユーロ5到来〉
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Eマークでも安心できない】輸入マフラーに見られるEマーク(ECE規制)やeマーク(EU司令)があれば車検OKと思われてきたが、厳密には日本の基準とまだ一致していないため、車検に通らない場合もあると報告されている。輸入マフラーでも日本の政府認証を取得したものが安心だ。

マフラー界の現状は?→ユーザー側も合法が大前提。でも楽しさは変わらない

合法マフラー最新事情〈排ガス規制ユーロ5到来〉
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取材協力アールズ・ギア代表 樋渡 治氏】スズキワークスライダーとしてWGP500や全日本GP500で活躍した後、アールズ・ギアを設立。愛車で年間2万km以上ツーリングを楽しむほか、マフラー開発車両でも納得いくまで長距離を走りこむ生粋のライダーだ。

「アフターパーツ用のマフラーに政府認証制度が適用されるようになって、もうかなり経ちました。それまでもライダーが成熟して環境意識も高まっていたことから、現在の車検が必要なクラスでは、ほとんどJMCAマフラーが選ばれているんじゃないでしょうか。こと、大排気量クラスに至っては、イリーガルなマフラーは、ほとんど淘汰されたと思います。

特に音に関しては、自宅から走り出す際にご近所さんに迷惑にならないかといったように皆さん敏感になりましたね。それに、うるさすぎると長時間乗っていて疲れてしまう。とは言っても、静かすぎてもそれはそれで物足りなかったり、走行中の他車に気づいてもらうのが遅かったりするなど不満もある。だから適度な音量で『音質』を求める傾向が非常に高く、我々マフラーメーカーも力を入れている大きな部分のひとつです。旧車オーナーにはまだ大音量のマフラーを求める人もいるのですが、それでも最近は当時の基準内にキチンと音量を収めたマフラーを求めるオーナーも増えてきました。やっぱり皆さんオトナになっていますよ。

そんな風に時代が変わったなかで、なぜアフターパーツのマフラーが存在するかというと『合法マフラー=ノーマルと一緒ではない』からです。100%性能がアップすると断言できます。ノーマルのマフラーは、大量生産による性能のバラツキをきっちり抑えないと型式認定が取れません。それにコストも下げなければならないなど、様々な制約下のもとマージンが大きく必要とされています。アフターマフラーでは、その部分を規制範囲内で突き詰めた開発をすることが可能です。ノーマルではサイレンサー内が複数室であるところをストレート構造にできたり、チタンなど材質によって大幅な軽量化を達成できたりとパワーや運動性能が高まらないわけがありません。

当社では政府認証制度前から合法にこだわっていますが、ユーザーニーズというのは実は昔から変わっていないのです。エンジンの基本特性が上がれば、バイクがより乗りやすく楽しくなる。当然、パワーもしっかりついてくるし、音質も良くなってくる。と言うのも、基本特性を上げるということは余分にエンジンを回さなくても済むということです。こうしたアフターマフラーの恩恵は、スポーツユーザーだけでなくツーリングユーザーでも大きく享受できます。取り回しの軽さや、荷物を積んでも余裕ある巡航性能、それに快適なサウンドと、より楽しい旅を体験できると思います。何しろ私自身が年中全国を走り回って楽しんでいますから」(樋渡氏談)

’20年の合法マフラー最新事情について解説する本特集。次ページではアフターマフラーのメリットについてまとめる。

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