圧巻のハイスペックを誇るスーパーネイキッドマシン・KTM 1290スーパーデュークRが刷新。モーターサイクルジャーナリスト・鈴木大五郎氏が、ポルトガル・ポルティマオにてサーキット&公道テストを行った。速くて乗りやすい!というビーストらしさには、さらに磨きがかけられていた。
●文:鈴木大五郎 ●写真:KTM ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
【TESTER:鈴木大五郎】様々なバイク遊び、レース経験を持つMCジャーナリスト。自身のスクール主催のほか、BMWモトラッドの公認インストラクターも務める。
気軽に乗れるハイパーネイキッドビースト
1301ccという大排気量に180psのハイパワー。トルクは140Nm…。「ビースト」と名付けられたこのマシンのスペックは、まさに野獣だ。
しかし、走り出してみれば、それが多くのライダーを恐れおののかせる類いのものではないことがすぐにわかる。KTMのロードバイクが圧倒的に乗り易くなったのは、1290スーパーデュークRの登場前後からだった。
スモールデュークが登場し、より幅広い層にマシンを販売しなければならないことも影響したのだろうか。それまでの乗りにくさを感じるマニアックなものから、幅広い層に受け入れられるトータルバランスを備えたマシンになった。
スーパーデュークRは、その後’17年にマイナーチェンジを行い、そして今回。’20年モデルで大幅に刷新して登場した。
パッと見た目には大きな変更がないように見受けられる。ほかのブランドに比べ、KTMはキスカデザインによる意匠を大切にするのか。今回も、大幅なイメージチェンジは行われていない。
しかし、しっかり調査していくと、フレームやスイングアーム等の骨格はもちろん、外装パーツに関してもそのほとんどが刷新されている。
午前中は、サーキットにて20分走行が6セッションと、KTMらしい走行スケジュールが用意されていた。最初のインパクトは、その加速力がとにかく凄いこと。このネイキッドスタイルでこのパワー。そしてトルクは他にないものであるが、感心するのがそのパワーデリバリーがガツガツしたものとはなっておらず、じつにスムーズに湧き上がってくる点。
思い返せば、990時代のスーパーデュークRはとにかくスパルタン。エンジンの反応もライディングポジションもオンとオフのミックスのようなもので、面白いが異端児といったキャラクターであった。それが1290となった途端、非常にフレンドリーなものになっていたのであるが、そのコントロール性の良さにより磨きがかけられている。
また、ライディングモードによりエンジン特性が選べるだけでなく、それぞれにアクセルレスポンスを3段階で選択できるのも、マシンと仲良くなるうえで重要である。面白いのは、先導ライダーである元GPライダーのジェレミー・マクウィリアムズと、元AMAスーパーモトのチャンピオンでパイクスピークにて3度の優勝を誇るクリス・フィルモアのセットアップの違い。モードは両者ともにトラックだが、レスポンスはジェレミーがクイックなものを好むのに対し、クリスは穏やかなレスポンスを好む。
2速か3速か迷うようなコーナー。タイムアタック的走行では通常2速を選択するようなところであっても、3速でも余裕でこなす。ここも興味深いのは、ジェレミーが3速を選択するのに対し、クリスは2速を選択。6本も走行枠があるのだから、いろいろと試してみるも、どちらも許容するフレキシブルさが光る。個人的には2速使いの方が好みであったが、そうなると、アクセルレスポンスは穏やかなほうが都合が良い…。彼らのチョイスの理由がわかったような気がした。
新たに採用された6軸IMUにより、走行中の状況はしっかりコントロールされる。バンク角に応じたパワーの出方、滑った際やフロントリフトに対し、的確に制御が入るから安心感も高い。
メインストレートではメーター読み275km/hを超えてまだ伸び続けていきそうな勢い。ブレーキングポイントに達するおかげでなんとか吹き飛ばされずに済むが、ストレートですら休む暇がない凄いパワーである。
改良されたエンジンとエアフローの見直しにより、高回転域でのパワフルさにも磨きがかかった印象である。ハンドリングはエンジン搭載位置およびスイングアームピボットが上げられ、若干重心を高めたことによる倒し込みの軽快さ。運動性の高まりが明らかに感じられる。
剛性が高められた車体はよりリニアで、狙ったラインをトレースしやすくなっている。硬さからくる振れや反発も感じられない。正直、3倍もの剛性アップと聞いたときには、それが神経質なものにならないか心配もあったのだが、上手くバランスを調整した成果があらわれているのだろう。
モーターサイクルジャーナリスト・鈴木大五郎氏による、’20 KTM 1290スーパーデュークRの海外試乗レポート。次ページではサーキットを離れ、公道へとテストの舞台を移す。
昼食を挟んで、午後はワインディングを中心とした公道を走行した。サーキットでのポテンシャルアップは正直、明らかであった。反面、もともとスーパーデュークRがそのスペックに見合わないほどのフレンドリーさを持[…]
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