MotoGP ’20シーズン開幕直前
’19 MotoGPを振り返る〈欧州コンストラクター編〉【ドゥカティ|KTM|アプリリア】
- 2020/3/3
確実に煮詰まってきている。だが、もう一歩で届かない。3年連続でランキング2位に甘んじた’19シーズンのドゥカティを関係者の話とともに振り返る。さらに、KTMとアプリリアについても’20シーズンを展望する。
●写真:ドゥカティ
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ドゥカティ:課題の旋回性能をどう高めるか
#04:アンドレア・ドヴィツィオーゾ
#9:ダニロ・ペトルッチ
見た目にも分かりやすい空力パーツの先駆的マシンとして大いに注目を集めたドゥカティのMotoGPマシン「デスモセディチ」。レギュレーションでサイズや形状、そしてシーズン中のアップデートに縛りが設けられたのは、例によって開発コストの増大を抑える狙いだ。そして、空力パーツに実際的な効果があることの証でもある。
レギュレーションの縛りにより、文字通りに翼をもがれた恰好の’19年型デスモセディチGP19は、マシン本来の不得手が浮き彫りになった。もともとドゥカティは圧倒的なエンジンパワーを最大の武器としていた。しかし、ホンダが大幅なパワーアップを果たしてストレートスピードを高めると、その武器も陰りを見せ始めた。さらに空力パーツのアドバンスも失われると、もともとの不得手──コーナーでの曲がりにくさがあからさまになってしまったのだ。
ドゥカティ・チームのエースライダー、アンドレア・ドビツィオーゾは、「僕はずっと言い続けてきたんだけどね」と肩をすくめる。「こればっかりはすぐに直るものじゃない。ドゥカティのDNAのようなものだ。簡単なことじゃないんだ」
曲がりにくい特性。これは強大なエンジンパワーというメリットと裏腹の、避けがたいデメリットでもある。パワーを受け止めるには高いシャシー剛性が必要であり、いきおい、曲がらないマシンになりがちなのだ。
デスモセディチGP19もその不得手への対策を施してきたが、まだ結実はしていない。ドビツィオーゾも、チームメイトのダニロ・ペトルッチも「コーナーが遅い」と指摘している。
スポーティングディレクターのパオロ・チャバッティさんは「コーナリングスピードの低さは、我々の課題です」と認識している。
「コースによっては十分なグリップが得られない、という問題もあります。路面の状況変化に対応しきれず、タイヤが保たないケースがあることも重大です。デスモセディチGP19は競争力のあるマシン。不調なように見えますが、アンドレア(ドビツィオーゾ)、ダニロ(ペトルッチ)、そしてジャック(ミラー)の3人を表彰台に送り込んでいます。ですが、私たちは決して満足していません。どのサーキットでも、ライダーが常に100%のパフォーマンスを発揮できるマシンを作りたいと思っています」
さらにチャバッティさんは言う。「特別なライダーがひとり、次元の違うところにいますからね(笑)。意味のない仮説ですが、彼がいないチャンピオンシップなら、アンドレアが3年連続で王座に就いているわけです。本当に不運なことです(笑)。でも、あのすごいライダー──マルケスに挑戦できるのは、私たちにとって喜びでもあります。より高いレベルに挑戦できますからね」
プロトタイプマシンとはいえ、タイヤはワンメイク、ECUはハードウエアもソフトウエアも共通という現在のMotoGP。それでもドゥカティはエンジンパワーという飛び抜けた長所を備えている。
これは非常に大きい要素だ。パワーを維持したまま、コーナリングという不得手をつぶしていくことができれば──具体的に言えば、よりしなやかなフレームを得ることができれば──、王座に手をかけることも十分に可能だろう。’07年のケーシー・ストーナー以来となる悲願のタイトル獲得に向けて、地力の向上に期待がかかる。
KTM:そろそろ限界? 鉄フレームとの決別も
#44:ポル・エスパルガロ
#5:ヨハン・ザルコ
悪い予感が的中してしまった。やはりRC16はフロントの感触が得られないようだ。ついにザルコは乗りこなすことができず、シーズン途中で離脱という憂き目に遭ってしまった。
鉄フレームの限界に来ているのではないかと思う。低荷重ではよくしなるが、高荷重ではしなりストローク不足が災いし、十分な反力が得られないのだ。個性を守るのは素晴らしいが……。
アプリリア:意外な好バランスを得た「イタリアのスズキ」
#41:アレイシ・エスパルガロ
#29:アンドレア・イアンノーネ
エンジン、フレームと、アプリリアが持っている弾をすべて撃ってきた。オーストラリアGPではイアンノーネがトップを走るという珍事も起きて話題になったが、RS-GPの性能が底上げされてきていることの証にもなった。
特にフレームの進化が顕著で、バランスが取れてきている。あとは、出力不足な上にトルクの谷があるという難しいエンジンをどう手なずけるかだ。