75歳以上の高齢ドライバーは563万人(2018年末時点)。昨年の高齢者による死亡事故は全体の約15%を占めた。一方で昨年、免許を自主返納したのは約40万人に留まる。この事態に対応すべく、政府は新しい運転免許をつくる方針で検討をはじめた。
高齢者の交通事故は死亡事故率の高さが特徴
近頃、頻繁に報道されている高齢運転者の重大事故。なかでも、未来ある子供の命を奪ってしまった池袋(東京都)の痛ましい事故などは記憶に新しいところだ。警察庁の統計によれば、高齢者の死亡事故件数は平成26年まで増加傾向、その後は増減が続き、平成30年には増加している。また、75歳以上の免許人口10万人あたりの死亡事故件数は減少傾向が続いていたものの、平成30年は増加に転じた。
上記資料「平成30年における交通死亡事故の特徴等について(警察庁交通局)」の概要は下記のとおり。
○ 交通事故死者数は減少傾向(3,532人)。
人口10万人当たり死者数も同様に減少傾向。
高齢者の人口10万人当たり死者数は全年齢層の約2倍。
○ 全死者数の約半数が歩行中又は自転車乗用中の死者。
・うち約7割が高齢者。
・うち約3分の2に法令違反あり。
政府は新しい運転免許制度を検討しはじめた
こうした状況に対応するため、政府は2020年以降に高齢者専用の新しい運転免許をつくる方針だという。詳細は未定ながら、オートマ限定のように「対象は75歳以上、自動ブレーキなど安全機能がついた車種のみ運転可能」となる。
バイクの場合は自動ブレーキなどの装備がないため“高齢者はバイクの運転NG?”と気になるところだが、この新免許は強制力のある「義務制」ではなく、自主的な「選択制」となる模様。自動ブレーキの普及率が高まったところで「義務制」に転じる可能性も考えられるが、地域によってはクルマやバイクが必需品だけに難しい問題だ。とはいえ、何らかの高齢者対策が急務なのは間違いないだろう。
バイクで“踏み間違い事故”は起こらない?
高齢者のクルマの事故で注目されているのは「アクセルとブレーキの踏み間違い」だ。これはクルマの構造上、どちらも踏んで操作することから、筋力の衰えなどで足が上がりにくくなった高齢者には特に起こりがちなこととされている。いったん踏み間違えると予想外の加速でパニックに陥り、車両を止めたいがためにさらに踏み込む、踏み続けることで速度が増して重大事故に繋がる、という図式だ。
バイクの場合は、アクセルは捻る操作、ブレーキは握る&踏む操作となっていることから、こうした操作の間違いは起こりにくい。また、発進&停止を含め、常に転ばないように自分の身体でバランスを取りながら走らなければならないため、クルマよりも体力や身体感覚の衰えを実感しやすいのが特徴でもある。駐輪場所からの押し引きや跨るまでの引き起こしが億劫になり、年齢とともに軽くて速度の出ない小排気量車に乗り換えていくというのもよく聞く話だ。
ちなみに、バイクに自動ブレーキを装着するというのも現実的ではないだろう。自動ブレーキが作動することにより、かえってバランスを崩して危険な状況に陥りかねないからだ。
もしも新免許制度を義務制としていく可能性が検討されるならば、こうしたバイクの特徴も考慮したうえでクルマとは別の方法で対応する、たとえば排気量制限や馬力制限なども含めたうえでの議論を望みたいものだ。
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