「勝つ」ことよりも「楽しい!」を感じたい

世界GP王者・原田哲也のバイクトーク Vol.6 「レースのタイヤ選びと、趣味のタイヤ選び」

  • 2019/4/1

1993年、デビューイヤーにいきなり世界GP250チャンピオンを獲得した原田哲也さん。虎視眈々とチャンスを狙い、ここぞという時に勝負を仕掛ける鋭い走りから「クールデビル」と呼ばれ、たびたび上位争いを繰り広げた。’02年に現役を引退し、今はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。そんな原田さんのWEBヤングマシン連載は、バイクやレースに関するあれこれを大いに語るWEBコラム。第6回は、最近の愛車や仕事について。

TEXT:Go TAKAHASHI

MICHELIN

新しいバイク遊びに目覚めそう!

セローのアンダーガードが届きました! が、実家に取り付けに行ったつもりが、母親と話し込んでしまって断念……。昨年10月に買ったセロー、まだ50kmぐらいしか走ってないんですよ。今年は林道を走りたいんですが、こう見えて結構忙しくて、なかなか時間が取れないんですよねぇ……。

昔はオフロードがあまり好きじゃありませんでした。汚れるから(笑)。それがセローで林道を走ろうとしてるっていうのは、年を取って汚れが気にならなくなってきたのと(笑)、忙しくなってきたから。サーキットでも遊びたいんですが、サーキットの走行可能日になかなか自分の日程を合わせられないんです。その点、林道なら自分の時間ができた時にサッと行けるかな、と。結局、なかなか行けてないけど(笑)。

それに今、トライアル熱が高まってるんですよ! ゴルフ仲間でもあるトライアル国際A級の本多元治くんに誘われてるんです。今度、岡田忠之さんと一緒に本多くんのトライアルレッスンを受けようかと。トライアルって、ホントに難しくて面白いんですよ。僕がやってたロードレースは速度域が高いから、基本的にバイクが安定しているし、荷重もある程度自然にかかる。でも速度域が低いトライアルは、不安定なバイクをライダー自身が安定させないといけないし、荷重もライダーが作り出さないといけない。難しいし奥深いから僕もすぐにできるようになるとは思えないけど、新しいバイク遊びとしてじっくり楽しむにはいいかなって。セローを買ったのは、そのためでもあるんです。

そんなわけでセローにもなかなか乗れていませんが、バイクに乗る仕事で楽しませてもらっています。先日は、ミシュランの販売店さん向けタイヤ試乗会に先導インストラクターとして参加してきました。栃木、名古屋、熊本と各会場を回る全国行脚です(笑)。ミシュランのパワーRS、ロード5、アナキー・アドベンチャー、アナキー3をいろいろなバイクに履かせて、それぞれの特性を販売店の皆さんに実体験してもらうイベントなんですが、各会場とも高速周回路、ハンドリングコース、そしてブレーキングコースが用意されていて、さまざまなシチュエーションでタイヤを試してもらいました。ライダーは僕のほかに岡田忠之さん、高田速人くん、亀谷長純くんと、なかなかの顔ぶれでしょう?

僕はハンドリングコースを担当させてもらいましたが、高速域を試せたり、ブレーキングもウエット路面が用意されていたりと、いろいろな状況でのタイヤのフィーリングを感じてもらいやすいように工夫されています。販売店の皆さんは、お客さんに1番近いところにいるわけですから、その方たちがタイヤの理解を深めることは、とても大事なことだと思います。

でも、僕が参加者の方たちに1番感じてほしかったのは、タイヤのパフォーマンスそのものよりも「楽しいでしょう!?」ということ。バイクを楽しめるって、実はすごく大事なことなんです。もし、タイヤにちょっとでも不安要素があれば、ライディングは楽しめないでしょう? 特に公道は先が分からないブラインドコーナーがあったり、突然の雨で路面が濡れたりと、不確定要素がとても多い。だから僕が公道タイヤに求めるのは、幅広いシチュエーションで不安を感じることなく、楽しく乗れること。ミシュランはそういうタイヤ作りをしてるんです。

現役でレースをしてた頃のタイヤ選びは、楽しむのとはちょっと違いました。決勝レースは終盤になると必ずグリップが落ちてくるものです。グリップがいい時のフィーリングとしてはこのタイヤを履きたいのに、終盤に勝負を懸けることを考えるとガマンして別のタイヤを選ばざるを得ない、なんてことがザラにありました。だから常に何かを妥協するか、自分を納得させるかして、タイヤを選んでました。

「タイヤのことを気にしなくていい」のが趣味のタイヤ選びの基準になる

最終的に一番前でゴールするためには、フィーリングがいいというだけで使うタイヤを選ぶことはできない。でも、楽しむためならその基準も変わってくる。

でも今、公道でバイクを走らせるのは趣味ですからね。趣味なら楽しむことに妥協したくない(笑)。路面温度が高くても低くても、ドライでもウエットでも、どんな状況でも不安なく、気をつかわずに乗れるタイヤが好みです。

僕が気に入ったのは、意外かもしれないけど、アナキー アドベンチャー。オン、オフ両用のデュアルパーパスということで、見た目からして大きなブロックパターンなので、オンロードではグニュグニュとした腰砕け感があるのかと思ったら、まったく皆無。普通のロードタイヤを履いているぐらいの感覚で、なおかつ挙動は穏やか、乗り心地もよく、しっとりした乗り味でした。

まぁ、難しい話はさておき、「気をつかわなくていいタイヤ」っていうのが最大のお気に入りポイントかな。タイヤのことを気にしなくていい分、ほかのことに気を配ったり目を向けたり操作に集中できるから、より安全だと思うんですよね。

バイクのカスタムって、とかくハイパフォーマンスなアイテムを選びがちですよね。見栄もあるのかな(笑)。もちろん趣味だから、見栄を張るのも楽しみ方のひとつだとは思います。でも、バイクは安全に楽しんで、無事に家に帰ることが1番大事。だから僕が選びたいのは、とにかくライダーに気をつかわせないアイテム。僕も、そして皆さんも年を取るにつれて集中力の容量が減ってるんだから(笑)、周囲への気配り・目配りに集中力を振り分けられるよう、安心第一のモノ選びをしています。だって、長く楽しくバイクに乗り続けたいですからね!

「どんな場面でも気をつかわないタイヤが好み」と語る原田さん。

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原田哲也

原田哲也

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1993年ロードレース世界選手権(WGP)250の世界チャンピオン。1992年に全日本で同クラスのチャンピオンを獲得し、翌年に初挑戦のWGP250で戴冠した。現役当時のニックネームは「クールデビル」。'02年に現役を引退し、現在はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。