SP忠男の忠さんと、人生初の林道ツーリング

世界GP王者・原田哲也のバイクトーク Vol.8 「心からバイクを楽しむ、今はそれができる」

  • 2019/5/1

1993年、デビューイヤーにいきなり世界GP250チャンピオンを獲得した原田哲也さん。虎視眈々とチャンスを狙い、ここぞという時に勝負を仕掛ける鋭い走りから「クールデビル」と呼ばれ、たびたび上位争いを繰り広げた。’02年に現役を引退し、今はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。そんな原田さんのWEBヤングマシン連載は、バイクやレースに関するあれこれを大いに語るWEBコラム。第8回は、念願叶って林道デビューしたお話です。

TEXT:Go TAKAHASHI

MICHELIN

林道は「いい大人の趣味として最高だよ」に賛成です!

ついに夢が叶いました! 人生初の林道ツーリング、しかも社長──SP忠男の鈴木忠男さん──と一緒です。僕はCRF250ラリー、社長はセロー、そして仲間たちもそれぞれのバイクで房総の林道をトコトコ走りました。いや~、最高に楽しかった!

子供の頃や現役時代に少しだけモトクロスをしたことがありますが、汚れるのがキライで敬遠していたオフロード。最近でもやっぱり汚れるのはイヤですが(笑)、それ以上にオフロードを走るのが楽しくて仕方ありません。特に去年10月にセローを買ってからは、ツーリング途中で林道らしき道を見つけては「走ってみたいな」と思ってたんです。

でも、「いきなりひとりで分け入るのも不安だし……」と足踏みしていたところに、ようやく社長とスケジュールが合って、一緒に林道に行けることに! それを聞きつけた仲間たちも平日だっていうのにたくさん参加してくれて、すごく賑やかな林道ツーリングになりました。

僕にとっては本当に初めての林道です。いくつかの林道をつないで50kmぐらい走ったんですが、とにかく面白い! 刻々と変わる路面に対応しながらほどよく体を使うなんて、楽しいに決まっています。社長には「哲也がオフロードなんてなあ。そんなイメージがまったくなかったよ」なんて笑われましたが……。でも、自然の中に仲間たちと分け入って見たこともないような景色を眺めるなんて、ものすごく気持ちいい時間です。社長は「いい大人の趣味として最高だよ」と言ってましたが、僕もそう思います。しかも社長と一緒ですからね! 実は……、かなり緊張してました。

SP忠男と言えば、マフラーメーカーや名門ロードレースチームが有名です。でも、皆さんもご存じだと思いますが、社長は60~70年代にかけてモトクロスライダーとして大活躍した方。全日本モトクロスでチャンピオンになっているスゴイ人なんです。それに比べて僕なんかオフロードビギナーで、しかも初林道。緊張するに決まってますよ! でも社長には「哲也の走り? 全然問題ないよ」とフォローしていただいたので、まずまずだったのかなと(笑)。

重圧とは無縁のバイク遊び、だからこそ安全に

雨で大きく削れた路面を避け、やむなく右側通行。忠さんこと鈴木忠男さんが後ろにいると、さすがの原田さんでも緊張する?

今回僕が乗ったのは、お借りしたCRF250ラリーです。自分のセローとスペックを比べると、車重はCRF250ラリーが157kgで、セローは133kg。プラス24kgはさすがに重さを感じました。エンジンの極低速トルクもセローの方があるようで、エンストするかしないかというギリギリの所はセローの方が粘ります。でもCRF250ラリーはサスペンションのデキがよくて、なかなかの好印象。セローでは底突きしてしまうような場面でも余裕を持ってクリアできました。高回転域のパワーもあるので、CRF250ラリーはセローよりスピードレンジが高いんですよね。

う~ん、これで軽ければなぁ。CRF250Lは144kgなんですよね。それならいいなあ。セローとはハッキリとキャラクターが違うし、軽いLの方なら買い増ししたくなったほどです(笑)。いずれにしても、日本の林道を走るにはCRF250やセローのような250ccぐらいがピッタリです。そう言えば仲間たちのバイクも250だったなぁ。コンパクトで軽いほど林道を走りやすいことが確認できました。

今回は取材スタッフもバイクでの移動になりましたが、持って来たのはロイヤルエンフィールドのヒマラヤンというなかなかの変わり種(笑)。興味津々で乗ってみましたが、185kgはさすがに重い! けど、重さには恩恵もあって、サスペンションがしっとりとしたフィーリングでした。ただ、林道を走る人たちはかなりハードな所にも平気で入って行ってしまう猛者ばかり。おいそれと着いて行く気にはならないだろうなぁ(笑)。

そう、林道のベテランたちは皆さんタフなんですよね。武勇伝の数々を聞かせてもらうと、信じられないような出来事に余裕で対応してる(笑)。社長も「スコップ持って行くんだよ」とか「海外ではバイクじゃ進めないから押して登ったよ」なんてスパルタンな話をサラリとします。社長の走りを見ていると、本当に軽々と簡単そうに走っていて、つい自分にもできそうに思ってしまうのですが、とてもじゃないけど無理(笑)。キャリアが違い過ぎます。僕は林道1年生として、社長や仲間たちにいろいろ教えてもらいながら、もっともっと林道を楽しみたいと思っています。

よし、これでまたバイク遊びの幅が広がったぞ! ツーリング、サーキット、そして今回の林道。トライアルも本格的に挑戦したいし……。現役時代ももちろんバイクは好きでしたが、それ以上にいつも「プロなんだから勝たなくちゃ」という責任の重さを感じてました。「レースが楽しい」と心から思えたのはSP忠男で過ごしたジュニア時代まで。お金をもらって走るようになってからは楽しくなんかなかった。とにかく結果を出すことだけを考えていました。でも今は、心からバイクを楽しむことができます。世界タイトルは1度しか獲れなかったけど、無事に現役を終え、時を経てからこうしてバイクで遊べるなんて幸せなことだな、としみじみ思います。

今回の林道ツーリングで1番心に響いたのは、「林道だって公道なんだから、飛ばしちゃダメだ」という社長の言葉です。「あっ」と思いました。バイクで自然の中に分け入ると、つい自分たちだけの世界と勘違いしそうになりますが、いつ対向車が来るか分かりません。実際今回も、何度か対向車とのすれ違いがありました。もともと僕たちはのんびりペースで走っていましたが、社長の言葉を肝に銘じ、無事に帰ることを最優先に大人の遊びとして林道を楽しむつもりです。

ただ、帰宅してから泥だらけになったブーツを磨くのは、やっぱりツラかったなぁ……。汚れるのは相変わらずキライ(笑)。ライディングの装具はいつもピカピカにしておきたいですよね!

ひとりで走るのも好きだという原田さん。「みんなでワイワイするのも楽しくて好きですよ」と林道ツーリングを満喫していた。

※この林道ツーリングの模様は、5月24日(金)発売のヤングマシン7月号で詳しくご紹介します

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原田哲也

原田哲也

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1993年ロードレース世界選手権(WGP)250の世界チャンピオン。1992年に全日本で同クラスのチャンピオンを獲得し、翌年に初挑戦のWGP250で戴冠した。現役当時のニックネームは「クールデビル」。'02年に現役を引退し、現在はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。