
ヤマハは大阪モーターサイクルショーで、「オフロードカスタマイズコンセプト」と名付けたコンセプトモデルを展示した。事前の予告がなかったものの1台で、その姿はアジア圏で販売中のWR155Rのように見えたが──。
●文:ヤングマシン編集部
“カスタマイズコンセプト”というわりにはライトカスタムで……
ヤマハは、大阪モーターサイクルショーで「オフロードカスタマイズコンセプト」なる謎のサプライズ展示を敢行。これがさまざまな憶測を呼んでいる。
車両はインドネシアなどアジア県で販売中のWR155Rと見て間違いないが、車名ロゴやエンジンの排気量が隠されており、なんらかのメッセージ性を持った展示なのでは、と思わずにはいられない。
WR155Rとは、YZF-R15などに通じるVVA(可変バルブ機構)搭載の水冷単気筒をオフロードバイクの車体に積んだもので、手ごろな価格(インドネシア価格:3970万5000ルピア=日本円換算約36万円)と本格的なサイズ感で確固たる地位を築いているもの。同じエンジンは日本を除くアジア圏ではXSR155やMT-15などにも採用、日本国内においては125化とともにXSR125、MT-125、YZF-R125(およびYZF-R15)に搭載されている。
そんなWR155Rが車名を隠した状態で展示されているのだから、いろんな想像力を働かせてしまうのも無理はない。
また、カスタマイズコンセプトと名付けられているわりにはナックルガードやバーパッドなど申し訳程度のカスタマイズが施されているのみで、どうにも展示名と内容が釣り合っているようには思えない。
というわけで、これまでにヤングマシン編集部が得てきた情報や現場での噂など、さまざまな情報から手繰り寄せた「オフロードカスタマイズコンセプト」の正体に迫ってみたい。
考えられるのは125cc版の登場、あるいは新規200ccのオフロードマシン!!
まず、「オフロードカスタマイズコンセプト」に込められたメッセージだ。これは、セロー250やWR250Rなど、軽二輪クラスで躍動してきたヤマハのオフロードマシンが現在は消え去り、「ヤマハはもう俺たちが気軽に乗れるオフ車には興味がないのか」というファンの声が多く聞かれる現状への婉曲な回答なのではないか、ということ。
実際のところどうかといえば、大阪モーターサイクルショーの現場では「ヤマハはオフロードモデルをしっかり考えているという意思表明」とのコメントを得ることができた。ただし、展示モデルがそのまま出るということでもないという。
2020年7月31日に最後の1台が出荷されたセロー250への惜別の声はとりわけ大きく、まさしく「ヤマハはもう……」の論調の起点にもなっていた。これに対し、ヤマハはこれまでも数回にわたって「セローそのものの復活はなくても、“セロー的”なものを送り出す可能性はある」といったメッセージを発してきたが、セロー以後の空白期間はすでに5年にわたっている。
ユーザーが待っている答えは実車の登場にほかならない。
そんな機運に対し、ヤマハが用意したのが「オフロードカスタマイズコンセプト」なのだ。ヤマハによれば「現在、国内にオフロードモデルはないが、それをこれからやっていくという意思表示」ということだが、「このまま販売するということはない」ともいう。
となれば、新規マシンはどのような姿になるのか。
まず考えられるのは、XSR125やYZF-R125、MT-125に続く原付二種クラスへの投入だ。すでに125cc版のエンジンは存在しており、WR125Rの開発はそれほど難しいことでもないだろう。
そしてもうひとつの可能性は、新規200ccエンジンを搭載したブランニューマシンの登場だ。
これはヤングマシンスクープ班がかねてより掴んでいる「ヤマハの155ccエンジンが排気量拡大と進化を果たして登場する」という話とも符合する。
2025年2月12日に開催されたヤマハ発動機の決算説明会にて、新たな代表取締役社長に代表取締役副社長だった設楽元文氏が就任することが発表され、そのほかに「ASEANを中心にプレミアム領域でのシェアを拡大し、より高収益を目指していくとの説明もあり、ヤマハのプレミアム商品としてZ世代に浸透している現行155ccクラスより、さらにハイテックなモデルを求める声に応えるべく、上位モデルを含めたプレミアム戦略を展開していく」と明らかにされた。これが“新規200ccエンジン”へと結び付くと我々は考えている。
インドネシアを中心にWR155シリーズ、そしてYZF-R15やXSR155が200cc化を果たし、それがニューマシンとして日本にも導入される、という流れである。
ヤングマシン3月号の『初夢スクープ』では200cc級の水冷単気筒DOHCエンジンを新開発し、WRなどオフロード系を中心に搭載すると予想。エンジンは電子制御スロットルを採用するという噂があり、250ccクラスと同等のパワーと125ccクラス並みに軽量コンパクトな車体で、日本のストリートにうってつけの存在になるのでは。
そんな新WR200シリーズ、あるいはWR125シリーズのバリエーションモデルとして期待したいのは、やはり前出の“セロー的なもの”だ。現行のWR155Rはシート高が880mmあり、気軽に街乗りできるオフ車とは言い難い。日本であれだけ愛されたセローそのものが復活するならなお嬉しいが、それが難しいとしてもエントリー層に間口を広げたオフ車の登場は待ち望まれている。
今回の展示内容から考えれば、ニューモデルの登場には少し時間がかかりそうだが、来春には実車を拝みたいものだ。
頼んますよ、ヤマハさん!!
Offroad Customize Concept [YAMAHA]
Offroad Customize Concept [YAMAHA]
ライディングポジションはフルサイズながらコンパクト。自然なオフロードポジションであり、足着きは身長170cmで両足つま先にそこそこ体重が載る程度。
排気量が隠された水冷単気筒エンジン。車両がWR155Rだと仮定すれば(たぶんそうだけど)155ccだが、いずれ125ccあるいは進化系の200ccの姿を見ることになっていくのだろうか。
フラットで体重移動しやすそうなシートだが、車両がWR155Rだと仮定すればシート高は880mm。スイングアームはスチール製で、コントロールしやすそうなリヤディスクブレーキを採用している。
YAMAHA WR200R / WR200X[予想CG]
新200ccが登場するとしたらこんな姿になる?! 世界的に知名度が高いのはセローよりもWRなので登場はテッパンか。デザインはWR155RらWRシリーズ共通のシャープ系だろう。
【YAMAHA WR200R|イメージCG】(CG不許複製/All rights reserved) ●予想発表時期:2025年~2026年 ●想定価格帯:55~65万円前後 ●デビュー可能性:70%
【YAMAHA WR200X|イメージCG】(CG不許複製/All rights reserved) ●予想発表時期:2025年~2026年 ●想定価格帯:55~65万円前後 ●デビュー可能性:70%
YAMAHA Serow200[予想CG]
国内での人気が高く、今なお生産終了が惜しまれるトレッキングマシンのセロー250。新型は初代セロー225並みの軽量コンパクト車になるか?
【XT200Serow|イメージCG】(CG不許複製/All rights reserved) ●予想発表時期:調査中 ●想定価格帯:55~65万円 ●デビュー可能性:40%
YAMAHA YZF-R20[予想CG]
YZF-R15らはSOHC155cc水冷単気筒を搭載。後継として200cc程度のエンジンを開発し、電制スロットルまで備えるとの噂も。
【YZF-R20|イメージCG】(CG不許複製/All rights reserved) ●詳細は調査中
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(ヤマハ [YAMAHA] | 新型軽二輪 [126〜250cc])
126~250ccスクーターは16歳から取得可能な“AT限定普通二輪免許”で運転できる 250ccクラス(軽二輪)のスクーターを運転できるのは「AT限定普通二輪免許」もしくは「普通二輪免許」以上だ。 […]
LCDメーターがTFTにグレードアップ、外観も一新! リーニングマルチホイール=LMW採用の原付二種/軽二輪スクーターとして独自の地位を築いているヤマハの「トリシティ125」「トリシティ155」がマイ[…]
“グローバルカラー”をうたうマットパールホワイト インディアヤマハモーター(IYM)は、水冷単気筒エンジンを搭載するフルカウルスポーツ「R15 V4(V4=第4世代の意 ※日本名YZF-R15)」の新[…]
シグナスシリーズ、20年の歴史を背負うニューフェイス 以前は空冷エンジン搭載のコンパクトな原付二種スポーツスクーターとして人気を博した「シグナスX」だが、水冷の新世代「シグナス グリファス」に交代した[…]
懐かしの四角ライトに極太のブロックタイヤ 1987年に発売されたヤマハ「TW200」は、フロントに130/80-18、リヤには180/80-14という極太タイヤを履いたファットなオフロードスタイルで人[…]
最新の関連記事(ヤマハ [YAMAHA] | 新型アドベンチャー/クロスオーバー/オフロード)
MCショーで公開された「オフロードカスタマイズコンセプト」の回答か ヤマハは、今春に開催された大阪モーターサイクルショーにて「オフロードカスタマイズコンセプト」なる謎のコンセプトモデルをサプライズ展示[…]
その姿、まるでハンターカブ×ミニトレ?! タイ仕様は新型に切り替わるとともにカラーバリエーション変更&グラフィックが変更された。 一方ベトナム仕様は、従来モデルを標準仕様として併売。この標準モデルはカ[…]
懐かしの四角ライトに極太のブロックタイヤ 1987年に発売されたヤマハ「TW200」は、フロントに130/80-18、リヤには180/80-14という極太タイヤを履いたファットなオフロードスタイルで人[…]
総合力を高めたスポーツツーリング 欧州でのみ販売される「TRACER 7」および「TRACER 7 GT」の2025年モデルが登場した。マイナーチェンジを受け、心臓部を共有する最新MT-07と同様に電[…]
GT+にはY-AMTを標準装備 ヤマハは、今夏発売と予告していた新型「TRACER9 GT+ Y-AMT」を2025年5月28日に発売すると正式発表。今世代のトレーサー9 GTシリーズでモーターサイク[…]
人気記事ランキング(全体)
既存の常識を打ち破る驚異的な動力性能 昨今ではあまり話題にならないものの、’70年代以降の2輪業界で、もっとも長く”世界最速”の称号を保持していた…と言うより、もっとも世界最速に”こだわっていた”メー[…]
古いゴムは硬化するのが自然の節理、だが・・・ ゴム部品は古くなると硬くなります。これは熱・酸素・紫外線などによる化学変化(酸化劣化)で、柔軟性の元である分子の網目構造が変化したり、柔らかくする成分(可[…]
初の電動スクーターが「C evolution」 2017年、BMWモトラッドは初の電動スクーター「C evolution(Cエボリューション)」を発売。それまでのガソリンエンジンを搭載したC650に通[…]
低く長いデザインが個性マシマシ! レトロモダンなボバークルーザー 中国から新たな刺客がやってきた! ベンダは2016年設立の新興メーカーで、独自設計のエンジンを搭載したクルーザーを中心に、ネイキッドな[…]
多くのカラーパターンを採用するCB350C、特別な2色のスペシャルエディション ホンダはインドでCB350C(日本名:GB350C)を発表した。これは前年に登場したCB350を名称変更したもので、従来[…]
最新の投稿記事(全体)
3Way仕様で秋から春まで使える高機能モデル:RY2003 ウィンターロングジャケット ワイズギアの2025-2026秋冬モデルとして登場した「RY2003 ウィンターロングジャケット」は、一着で秋か[…]
多岐にわたる仕様変更が行われた9年間 9年に及んだ生産期間中の仕様変更は多岐に及んでいる。ただしそのおもな目的は、最高出力や最高速の向上ではなく、扱いやすさや安全性に磨きをかけることだった。 1969[…]
高機能ジャケットから防寒パンツまで多彩なラインナップ 朝晩の冷え込みに、本格的なツーリングシーズンの到来を感じるこの頃。バイクウェアの老舗ブランド「クシタニ」より、2025-26年秋冬モデルの新作テキ[…]
ゼロハンが一番熱かった夏 多くの若者がバイクを愛し、GPライダーが同世代共通のヒーローとなった1970年代後半。 それでもフルサイズの“バイク”は、経済的理由や悪名高い“三ナイ運動”の影響からなかなか[…]
新型CBは直4サウンドを響かせ復活へ! ティーザー画像から判明したTFTメーターとEクラッチ搭載の可能性 ホンダは中国がSNS『微博』にて、新たなネオクラシックネイキッドのティーザー画像を公開したのは[…]
- 1
- 2