
ハーレーダビッドソンの「Vロッド」ファミリーは、2002年式で初代「VRSCA Vロッド」がデビューして以来15年間、さまざまな派生モデルを加えつつラインナップに名を連ね、2017年式の「VRSCDX ナイトロッドスペシャル」および「VRSCF V-RODマッスル」を最後に姿を消した。その個性豊かなファミリーの中でも、2006年式として登場した「VRSCRストリートロッド」は、レイク角を起こして倒立フォークを備え、フットペグをミッドコントロールにしたアグレッシブなモデルだった。
●文:ウィズハーレー編集部 ●写真:栗田晃 ●外部リンク:レッドバロン
2002年、「Vロッド」誕生
2002年式から2017年式まで、ハーレーのラインナップに名を連ねたVロッドシリーズ。その系譜を辿るのも興味深い。現行モデルのパンアメリカ/スポーツスターS/ナイトスターに搭載されるパワーユニット・レボリューションマックスの歴史は、ハーレー初の水冷エンジンを積み2002年に発売された「VRSCA Vロッド」から始まったのだ。
その端緒は1994年、AMAスーパーバイク初戦「デイトナ200マイルレース」に、水冷60度Vツインを心臓部とするファクトリーレーサー「VR1000」が投入された。
【1994 HARLEY-DAVIDSON VR1000】ホモロゲーション獲得のため50台の公道仕様車が販売されたが、いまや超お宝なのは言うまでもないだろう。
その後、ハーレーダビッドソンは、DOHC4バルブをはじめ、挟角60度のV型2気筒エンジンの直上からエアを効率良く供給するダウンドラフト吸気などを市販モデルへフィードバックする動きを加速させ、次世代ハーレーの象徴的なモデルとして「Vロッド」を市場に送り込む。
ボア・ストロークは100×72mmで、排気量は1130cc。最高出力115PSを誇ってのデビューであった。美しい湾曲を描くメインフレームは、水圧を利用するハイドロフォーミングという技法が用いられ、近未来感のあるアルミ製の外装をセット。
OHV空冷45度Vツインをメインストリームとするハーレーダビッドソンにおいて、DOHC4バルブ水冷60度VツインのVロッドファミリーは次世代へ向けたチャレンジングなシリーズだ。100×72mmのボア・ストロークで排気量1130ccで誕生したパワーユニット「REVOLUTION(レボリューション)」エンジンは、ツインボアスロットルボディを持つシーケンシャルタイプのフューエルインジェクションシステムにより、混合気をダウンドラフト方式で供給。最大トルク100Nm/7000rpmを発揮し、ハーレーのイメージをくつがえすかのようなハイテクニックな乗り味を堪能できる。
開発コンセプトである“アメリカンマッスル”を具現化し、ドラッグレーサーを思わせる低く長いスタイルを演出したのは、20年以上が経った今見ても斬新としか言いようがない。
2006年、「VRSCRストリートロッド」登場
水冷ハーレー・Vロッドがラインナップに定着した頃、2006年式の新たなバリエーションモデルとして「VRSCRストリートロッド」が登場した。
レイク角を4度起こした30度に設定し、フロントフォークは当時のハーレーとしては異例とも言える倒立式。スポーティな走りに対応するため、フットペグはミッドステップにリロケーションしている。ロー&ロングな車体にフォワードコントロールのライディングポジションは、「前方に伸ばした足が伸び切ってしまう」と操作性に難色を示すライダーがいたから。この異端児が生まれたことを機に、ハーレーダビッドソンはまた新たな可能性をさらに広く開拓していくこととなる。
インナーチューブ径43mmの倒立式フロントフォークや専用のキャストホイールを備える ストリートロッドは、2006年から07年までの2年間のみ販売された。
ちなみに「ストリートロッド」というモデル名は、2017年式でデビューし、3年間販売された「XG750Aストリートロッド」にも用いられている。
レッドバロンの在庫に優良車両を発見!
そんなVRSCRストリートロッドについて、レッドバロンの在庫に極上車両を発見した。2006年式で、総走行距離は1万6600km。現存台数が少ないなかで、これほど良好なコンディションを保っている車両は特に貴重であると言えるだろう。
異径メーターは左にエンジン回転数、中央に速度、右に燃料計を配置。随所にクロームメッキが施され、美しい光沢を放っている。10本スポークのスタッガードキャストアルミホイールは、フロント19/リヤ18インチ。前輪ブレーキはブレンボ製の4ピストンキャリパーに300mmディスクローターを組み合わせ、デュアル装備している。
Vロッドファミリーは、2008年式で排気量を1131→1246ccに拡大し、新たにスリッパークラッチ/ABSを搭載した。中古車購入の際、参考にされたし。
VRSCRストリートロッド試乗インプレ
レッドバロンの「5つ星品質」が付いているストリートロッド、隅々までしっかりと整備された抜群のコンディションだ! アグレッシブに走っても不安がなく、楽しくて仕方がない!!
コーナーの進入では、寝かしやすいとは言い難い、直進安定性に優れる低く長い車体を豪快に倒し込んでいく。もちろん腕力ではなく、ステップへの入力やシッティングポイントでの荷重とスロットルワークのコンビネーション、ブレーキをキッカケに使うのもいいだろう。
低中速から太いトルクを発揮しつつ、高回転はDOHC4バルブらしく力強く伸びていく。前後サスペンションやブレーキ、操作系を含めすべてがきちんと調律され、性能を最大限に発揮しているから走りに没頭できるのだ。
ストリートロッドが属するVロッドファミリーは、デビュー当時から幾度となくテストライドを繰り返してきたが、久々に乗ればまた新たな魅力に気付かされるではないか。時が経ち、またいっそう輝き、魅了されてやまないのは絶版中古車ならではの面白味であり、ぞっこん虜になるファンがいるのも頷ける。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
ハーレーダビッドソン専門誌『ウィズハーレー』のお買い求めはこちら↓
ウィズハーレーの最新記事
ホンダやヤマハなど国内車両メーカー用のパーツ、排気量問わずに原付からスーパースポーツ、さらにはレース関連をサポートするパーツを得意とするメーカー。今回X350用のパーツでハーレー市場に参入した。 ここ[…]
ゲイルスピード タイプE/N/R 鍛造アルミホイールメーカーとして名高いゲイルスピード。ストリートからレースシーンで活躍しているカスタムホイールだ。サイズはいずれも純正と同じF3.5-17/R5.5-[…]
欧州スタイルの正規販売店イベント 週末をハーレーダビッドソンディーラーで過ごし、ブランドの世界観の中で仲間たちと過ごす。ヨーロッパにて行われているH-D正規販売店の『HARLEY NIGHT(ハーレー[…]
クラウス:オーリンズ ツーリングモデル用フロントエンド クラウスとオーリンズとのパートナーシップにより実現した、ツーリングモデル専用設計のフロントエンド。アグレッシブな走りを支える高次元の路面追従性/[…]
空冷スポーツスター用カスタムパーツを世に送り出し続けているグリーミングワークス(大阪府)。一方で水冷スポーツスターSやナイトスター用パーツもラインナップし、自然な流れでX350用パーツの開発も手がける[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車 | ハーレーダビッドソン)
ハイパワーだけでなく、本来持つテイスティさを損なわず、より“らしさ”を強調するストロークアップ エンジンを強化する際、排気量アップが効果的なのはたやすくイメージできるだろう。ハーレーダビッドソンはエボ[…]
リグニスによるカスタムコンプリートのニューモデル『フリスコスタイル』とは 「これこれっ、これなんだよなぁ」と、エボリューションVツインを知る人はもちろん、もしかしたらハーレーダビッドソンに乗ったことが[…]
XLCRとはあらゆる点で違う ブラックに統一された精悍な車体の中で、フューエルタンクに貼られたバー&シールドのエンブレムがゴールドで彩られ、誇らしげに煌めいている。 クォーターサイズのコンパクトなフェ[…]
品質がよければ年式は関係ナシ!! レッドバロンで取り扱う中古車のじつに90%以上が『5つ星品質』の条件をクリアしている。それを証明するべく、メディア向けに5つ星品質中古車の試乗会が行われた。 『レッド[…]
ハーレー女子に聞きました Q1.これまでのバイク歴/ハーレー歴など教えてくださいQ2.いま乗っている愛車を選んだ理由は?Q3.お気に入りのポイント?Q4.高年式モデルにない魅力とは?Q5.同じ趣味を持[…]
最新の関連記事(レッドバロン)
岡崎会場はイベント内容も参加台数もスペシャル! 全国300店以上の直営店舗を持つレッドバロンが運営するユーザー参加型のリアルイベント「ファンファンミーティング」。レッドバロンでバイクを購入したレッドバ[…]
バイク専用サーキット・那須モータースポーツランド 東北自動車道の那須ICから約15分。那須高原を通って那須甲子線(ワインディング)の入り口まで30分強という好立地にある那須MSL。この2輪用サーキット[…]
レッドバロンお膝元・岡崎(愛知県)で開催 全店直営300店舗のバイク販売店・レッドバロンのユーザー参加型イベント『Fan Funミーティング』。2025年第1回目となる今回は、なんとレッドバロン本社が[…]
同じバイクでも走りは全然違う! 購入後に高額な修理代がかかってしまうケースも ’22年の生産終了後、中古車市場でより人気が高まっているCB400SF。試乗車の1台は走行距離1万1600km、もう1台は[…]
レッドバロンの「ダイレクト買取」は安心、確実で何より清々しい! 庭先に置いたまま、放置しちゃってるバイクに心当たりありません? 乗ろうと思っているうちに、バッテリーが上がってしまい、そうこうしているう[…]
人気記事ランキング(全体)
2005年に新しいフラッグシップとして東京モーターショーに出現! 2005年の東京モーターショーに、スズキは突如6気筒のコンセプトモデルをリリースした。 その名はSTRATOSPHERE(ストラトスフ[…]
フルフェイスが万能というわけでもない ライダーにとって必需品であるヘルメット。みなさんは、どういった基準でヘルメットを選んでいますか。安全性やデザイン、機能性等、選ぶポイントはいろいろありますよね。 […]
Mio MiVue M802WD:記録に特化したベーシックモデル 「いつも安全運転に徹しているし、自分が事故やアクシデントに遭遇することはない」と信じていられるほど、現実世界は甘いものではない。万が一[…]
日本に存在する色とりどりの特殊車両たち 警察車両である白バイ以外にも取締りや犯罪抑止のためのオートバイが存在しています。それは、黒バイ、青バイ、赤バイ、黄バイと言われる4種のオートバイたち。意外と知ら[…]
Z1から11年を経た”新基準”【カワサキGPz900R】 カワサキが水冷6気筒のZ1300を発売したのは1979年だったが、この頃からすでにZ1系に代わる次世代フラッグシップが模索されていた。 Zに改[…]
最新の投稿記事(全体)
V12モデルのエッセンスを凝縮、伝統と未来を結びつけるデザイン 「CAR DESIGN AWARD」は、自動車デザインの進化に貢献したプロジェクトを表彰する賞であり、1984年に創設された。審査は自動[…]
125ccのMTバイクは16歳から取得可能な“小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)[…]
高回転まで伸びるエンジン、フレンドリーな乗車姿勢 日本ではまだ馴染みがないかもしれないが、中国のCFMOTOはヨーロッパやアメリカなど先進国を含め、グローバルな展開を行っている二輪メーカーだ(そのほか[…]
画期的だったスズキの油冷エンジン 1983年のRG250Γ(ガンマ)、翌年のGSX-R(400)でレプリカブームに先鞭をつけたスズキは、1985年にGSX-R750を発売。いよいよ大型クラスに進撃を開[…]
もしものクマ襲撃に備える 強力な熊撃退成分を配合した「フロンティアーズマン マックス ベアスプレー」は、高圧ガスで12mの長距離噴射を実現。バイクツーリングはもとより、サイクリング/トレッキング/キャ[…]