筋金入りのライダー/モーターサイクル愛好家として知られる俳優の武田真治氏が、ハーレーダビッドソンに乗って広大な北海道を駆け抜けた。今回はご自身の愛車・アイアン883だけでなく、登場したばかりのニューモデル・ナイトスター/スポーツスターSにも試乗。世界に名だたるレザーブランド「バックラッシュ(BACKLASH)」代表の片山勇氏も同行した。
●文:ウィズハーレー編集部(青木タカオ) ●写真:塩谷佳史 ●外部リンク:ハーレーダビッドソンMJM札幌 ハーレーダビッドソンジャパン
ライダーズジャケットやモーターサイクルにこだわるそれは”大人の嗜み”
テレビや舞台などで活躍を続ける俳優の武田真治さんが、ハーレーダビッドソンで北の大地を縦横無尽に駆け抜けた。
愛車のアイアン883、そして新型のナイトスター/スポーツスターSでも華麗なるライディングを披露。芸能界でも生粋のライダー/バイク好きとして知られるだけに、ニューモデルへの探究心/興味は尽きない。それぞれを乗り比べると、こう話してくれた。
「ずっと空冷のスポーツスターに乗ってきましたが、水冷化された新型のVツインエンジンはまた違うスムーズなフィーリングで、パワーもすごくありますね」
ロングストローク設計ならではの味わい深さのあるご自身のスポーツスター883を基準に、ツインサスペンションで細身のタイヤを履くナイトスターは、排気量975ccで軽快なライドフィール。1250ccエンジンを心臓部に、モノショック&ファットタイヤのスポーツスターSは加速がより強烈と、三者三様の持ち味を鋭く指摘してくれるあたりは、流石としか言いようがない。
またミュージシャンとして、日本における”サックス”という楽器の知名度を一気に高めたことでも、武田真治さんは音楽業界でも名声を博するが、モーターサイクルは楽器とも共通するところがあると、独特の感性で語ってくれた。
「僕はサックスもアナログのものを求めがちで、それはオートバイも同じ。これまでもドゥカティMHR900やヤマハSRなど、伝統を感じるトラディショナルなモデルに乗ってきました。いま乗っているハーレーダビッドソンも空冷のV型2気筒で、’60〜’70年代を彷彿とさせるカフェレーサースタイルにカスタムしました。ハーレーは歴史があり、アナログを思い浮かべますが、そんな老舗ブランドの最新作は未来感覚も融合していて、とても面白いですよね」
空冷と水冷/新旧スポーツスターを乗り比べ、「それぞれに良さがある」と細部までじっくり見てチェック。筋金入りのモーターサイクル愛好家であることが、見ていてわかるのだった。
「エンジンはパワフルですし、ニーグリップがしっかりできるのもいいですよ」と頷くのは、ともに走った片山勇さん。国内外の大型バイクを複数台所有し、ハーレーダビッドソンにも造詣が深い。
主宰するレザーブランド「BACKLASH(バックラッシュ)」はミュージシャンやバイカーらから根強い人気を誇り、元サッカー選手のデヴィット・ベッカム氏やオアシスのリアム・ギャラガー氏、俳優のニコラス・ケイジ氏らが愛用し、武田さんも身にまとう。
「若い世代からも憧れられる存在であり続けたい」と、革ジャンでカスタムしたビッグバイクに乗る片山さんのスタイルは、武田さんとも共通するところ。着込むほど身体に馴染むライダーズジャケットは、まさに”大人の嗜み”。それはハーレーダビッドソンにも、じつによく似合う。
五感を研ぎ澄まし鐡馬を操る! 次に目指すのは九州・阿蘇だね
NHK『みんなで筋肉体操』で鍛え抜かれた肉体に注目が集まり、またサックスプレイヤーとして多彩なミュージシャンと共演するなど、マルチに活躍する武田真治さん。1989年、高校在学中の17歳の時に『第2回ジュノンスーパーボーイコンテスト』でグランプリを受賞し、芸能界入りすると、翌’90年にテレビドラマで俳優デビュー。’95年には蜷川幸雄演出の舞台『身毒丸』で初座長を務め、映画『御法度』(’99年)では、日本アカデミー賞優秀助演男優賞とブルーリボン賞最優秀助演男優賞を受賞するなど、役者としての活躍も目覚ましい。
今回武田さんが訪ねた日本初の公設民営劇場「富良野演劇工場」では、工場長と事務局長を兼務する太田竜介さんとの話が弾む。『北の国から』で知られる脚本家・倉本聰氏が、富良野市に俳優・脚本家を育てる私塾「富良野塾」を開設したのは1984年のこと。富良野が“演劇のまち”に変わっていくきっかけになった。NPO法人・ふらの演劇工房が管理/運営する富良野演劇工場は、2000年に開館し、富良野塾(現・富良野GROUP)などの劇団を支援するほか、市民や演劇人のための稽古場や発表の場を提供するなど、芝居づくりの拠点となっている。
’21年には英国の文豪・ディケンズ原作の傑作ミュージカル『オリバー!』で、主役フェイギンを演じた武田真治さん。設計の段階から作家・倉本聰氏やプロの照明家/音響家/俳優らが参加し、創り手から見た理想を具現化した劇場を熱心に見学すると、「北海道にこういう場所があって嬉しい」と、太田さんに伝えた。
人の心に響き、大勢の人を突き動かす演劇の力をよく知るふたり。会話する時間は短かったが、意志はしっかりと通じ合った。いつか、この舞台で武田真治さんが演じる日が来るかもしれない。
宿泊は層雲峡。”北海道の屋根”こと大雪連峰の東麓・黒岳の渓谷に湧き出る温泉にゆっくり浸かってライディングの疲れを癒やす。1日目はほとんど雨だったが、2日目はスマートフォンのアプリで雨雲レーダーを確認し、晴れのエリアを選んで走った。結果、往路を引き返すようなルートとなったが、「1日目の雨のおかげで、2日目の晴天がより素晴らしいものになりました」と、武田さんは前向きに捉え、笑顔を絶やさない。同行するライダーも嬉しいかぎりだ。
こうしたツーリングを定期的に企画するのは、中学生の頃の同級生である結城安文さん。モーターサイクルが故郷の友人たちとの絆をつないでいる。
「ハーレー乗りとしての先輩は武田くんで、一緒に乗ろうよって誘ってくれたのが最初のキッカケでした。仲間を誘ったら、あっという間に規模が大きくなりました。彼は芸能界で頑張って、自分たちは地元で仕事を頑張った。大人になって再会し、こうしてオートバイでツーリングしながら美味しいものを食べたり、温泉に浸かってお酒を飲んだりして楽しんでいる。まぁ、そんな感じですかね」
そう言って照れくさそうに笑う結城さんを見て、武田真治さんも微笑む。
「次は九州・阿蘇はどう?」(結城さん)
富良野の富田ファームにて、十勝岳を望む雄大な風景を眺めつつ話すのは、もう次回のツーリングプランだ。地元産メロンを使ったソフトクリームを頬張りながら、武田真治さんがすぐに答える。
「いいね。またみんなで走ろう!」
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