●文:ライドハイ編集部(根本健)
ヤマハがパフォーマンスと洗練さでエンスー向けシングルを開発
空冷シングル(単気筒)スポーツといえば、ヤマハSR400に代表されるクラシカルなバイクをイメージするかもしれない。しかし1980年代後半には、シングルであっても原点復帰を楽しむのではなく、スポーツライディングでツインや4気筒を追いかけ回し抜き去る…、そんな硬派な路線を目指したバイクが人気を集めた。
ヤマハSRX400/600は、人気車種で生産台数も多かったことから、今もそのハンドリングを楽しむファンに愛されている名車だ。
そもそものきっかけは、1978年に発売開始となったSR400/500の後継機種の開発がスタートだった。
お気楽な風潮に喝を入れるエンスーコンセプト
絶対性能を追わないクラシカルな佇まいのSRは確かに人気を得たが、時代はスーパースポーツの開発競争の渦中で、新しいメカニズムや素材などが毎年投入されるニューモデルラッシュだった。
バイクブームということもあって、女性を意識したスポーツバイクも加わり、世相とともに「もっと気楽に行こうぜ」的な価値観で“本モノ”を求めない風潮に、このSRX開発チームは“アンチお気楽”をスローガンに、エンスージアスト路線を突っ走ることになったのだ。
もとより開発エンジニアは、自分で分解組み立てなど朝飯前のエンスー揃い。性能はもちろん、持ち物には趣味人としてのこだわりは必須と、大量生産で中庸が主流の日本メーカーには珍しいコンセプトが貫かれた。
エキゾーストパイプの焼け色がファンの心を掴む
エンジンはオフ系シングルがベースだが、そのチューンに力強さと洗練されたフィーリングが込められ、オフ系のエンジン下にオイル溜めを持たないため、オイルタンクをエンジン後部にマウント、エンジン下のスペースに最新スーパーバイクでお馴染みの排気チャンバーを格納して、長いサイレンサーが常識の時代にショートマフラーを実現したのだ。
さらに、ツインポートから出る2本のエキゾーストは、量産車では初のステンレス製で、焼け色を楽しませるというエンスーならではのつくり。
フレームも、当時の世界GPワークスマシンだけが採用していた角断面パイプによるダブルクレードルと、トップクラス仕様が奢られていた。
そしてデザインは、ヤマハを世界で再認識させたVmaxを手掛けた、これも“超”のつくこだわり派。スリムさにこだわり、局面に膨らみだけでなく凹みも活用するなど、まさに新時代を予感させるレベルへとまとめ上げたのだ……
※本記事は2021年2月12日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(ネモケンのこのバイクに注目)
新型4気筒を待ち焦がれていたホンダファン CBにXが加わった車名のCBX400Fは、1981年10月にデビュー。バイクブーム真っ只中で爆発的な人気を誇ったホンダの切り札となったマシンだ。 実はカワサキ[…]
ボクサーエンジンの誕生、最強バイクとして世界中でコピー BMWといえば、2輪メーカーとしてスーパーバイクS1000系からボクサーのRシリーズなど、スポーツバイクで世界トップに位置づけられるメーカーだ。[…]
特別な存在をアピールする“衝撃”=IMPULSEと名付けたバイク スズキには、1982年から400ccネイキッドのシリーズに「IMPULSE(インパルス)」と銘打ったバイクが存在した。 IMPULSE[…]
250ccの4気筒はパフォーマンスで不利。それでも届けたかった4気筒の贅沢な快適さ 250ccで4気筒…。1982年当時、それは国産ライバルメーカーが手をつけていないカテゴリーだった。 1976年にD[…]
一般公道は乗りやすさ最優先、そのコンセプトを後方排気でピュアレーシーへ ヤマハは、1980年にレーサーレプリカ時代の幕開けともいうべきRZ250を発売。一躍250ccをビッグバイクを凌ぐパフォーマンス[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
一大ブームが巻き起こった1986年 滑走路で戦闘機と加速競争する姿、美人教官とのタンデム、苦悩を抱えて丘の上に佇む夕暮れ──。数々の印象的なシーンに初代ニンジャ=GPZ900Rがいた。 1986年に公[…]
ヤマハRZ250:4スト化の時代に降臨した”2ストレプリカ” 1970年代、国内における250ccクラスの人気は低迷していた。 車検がないためコスト的に有利だが、当時は車体設計が400ccと共通化され[…]
250と共通設計としたことでツアラーから変貌した400 2019年モデルの発売は、2018年10月1日。250ccと基本設計を共通化した2018年モデルにおけるフルモデルチェンジ時のスペックを引き継ぐ[…]
先進技術満載の長距離ツアラーに新色 発売は、2018年10月12日。ホンダのフラッグシップツアラーであるゴールドウイングは、2018年モデルで17年ぶりのフルモデルチェンジが実施され、型式もGL180[…]
量産車とは異なる無骨さを持ったカワサキ Z750 turbo 【1981】 洗練されたスタイルで後に登場した量産車とは異なり、武骨な雰囲気の外装が目を引くカワサキのプロトタイプは、1981年の時点では[…]
人気記事ランキング(全体)
使わないのは「どうせ利かない」もしくは「踏んでもよくわからない」…… リヤブレーキをかけているライダーは、驚くほど少ない。 ブレーキペダルを踏んでも利いているかわからない、すぐABS(アンチロック)が[…]
振動の低減って言われるけど、何の振動? ハンドルバーの端っこに付いていいて、黒く塗られていたりメッキ処理がされていたりする部品がある。主に鉄でできている錘(おもり)で、その名もハンドルバーウエイト。4[…]
足着きがいい! クルーザーは上半身が直立したライディングポジションのものが主流で、シート高は700mmを切るケースも。アドベンチャーモデルでは片足ツンツンでも、クルーザーなら両足がカカトまでベタ付きと[…]
ホンダ新型「CB400」 偉い人も“公認”済み ホンダ2輪の総責任者である二輪・パワープロダクツ事業本部長が、ホンダ新ヨンヒャクの存在をすでに認めている。発言があったのは、2024年7月2日にホンダが[…]
一回の違反で免許取消になる違反 交通違反が点数制度となっているのは、よく知られている。交通違反や交通事故に対して一定の基礎点数が設定されており、3年間の累積に応じて免許停止や取消などの処分が課せられる[…]
最新の投稿記事(全体)
片手で食べられるハンバーガーはバイク乗りにおすすめ いよいよ始まるゴールデンウィーク。気候も暖かくなり、梅雨や猛暑を迎える前のこの時期はツーリングにうってつけだ。 ちょっとバイクで遠出しようか…そんな[…]
1位:スズキ『MotoGP復帰』&『850ccで復活』の可能性あり?! スズキを一躍、世界的メーカーに押し上げたカリスマ経営者、鈴木修氏が94歳で死去し騒然となったのは、2024年12月27日のこと。[…]
1105点の応募から8点の入賞作品を選出 株式会社モリタホールディングスは、このたび「第20回 未来の消防車アイデアコンテスト」を実施、受賞作品が決定となりました。 全国の小学生から集まった、1105[…]
「ETC専用化等のロードマップ」の現状 2020年に国土交通省が発表した「ETC専用化等のロードマップ」。その名の通り、高速道路の料金所をETC専用化にするための計画書だ。これによると、ETC専用化は[…]
一大ブームが巻き起こった1986年 滑走路で戦闘機と加速競争する姿、美人教官とのタンデム、苦悩を抱えて丘の上に佇む夕暮れ──。数々の印象的なシーンに初代ニンジャ=GPZ900Rがいた。 1986年に公[…]
- 1
- 2