
●文:ライドハイ編集部(根本健)
1980年代突入の反転攻勢に込めた、ホンダの新しさをアピールしたオリジナリティ
世界GPの気筒数やミッション段数を制限する1967年の発表に対し、“レースは走る実験室”を標榜していたホンダは撤退を表明。その直後にデビューしたのが、量産車では初の4気筒エンジンを搭載したCB750フォアだった。
まさに多気筒化の高回転高出力マシンで、世界GPを全クラス制覇したホンダを象徴するスーパースポーツの登場に、世界中が湧き上がった。
しかしこの大勝負に出た裏では、4輪でアメリカのマスキー法という厳しい排気ガス規制をクリアすれば、ホンダが一躍クルマメーカーとして認められるチャンスに賭けるため、全エンジニアを4輪側に集結して、2輪開発をしばし休止する作戦が進行していたのだ。
世界を震撼させたCB750フォアから9年、DOHC化だけでは足りないという声に応える
そして実際に、CB750フォアをスケールダウンした4気筒・CB500フォア/CB350フォアが続いたものの、大型スーパースポーツのニューモデルはなく、カワサキZ1やスズキGS750などに先行を許す状況が続いた。
CB750フォア自体は、集合マフラー採用などマイナーチェンジを重ねたが、すでに新しさを失った魅力に乏しいモデルにしか見られていないのは、誰の目にも明らかだった。
そこへ、マスキー法をクリアするCVCCエンジン開発を終え、世界GP復帰宣言に続き、CB750をDOHC化したCB750Kの発表、さらにはCX系VツインにVF系V型4気筒による、留守中のお返しとばかりの矢継ぎ早な猛攻が始まったのだ。
ただ、次に控えるVツインやV4を知らない当時のホンダ海外ディーラーからは、DOHC化されたとはいえ、トラディショナルなデザインのCB750Kに対する評価が厳しく、とくにヨーロッパでは「こんな田舎臭いデザインはアメリカでしか通用しない」と酷評だった。
そこでホンダは、都会的なユーロデザインへのチャレンジを急遽決定。CB750F(後にCB900Fも加わる)が追いかけ発表となり、Kとの併売がスタートした。スーパースポーツのカッコよさの規準を根底から覆す画期的なデザインは爆発的な人気となり、ホンダのアドバンテージを瞬く間に取り戻したのだった。
ロングタンクにアルミのバックステップ、アルミハンドルとカメラの巻き上げレバーにコクピットメーター…。マイノリティなカフェスタイルに都会的なライフスタイルを融合し、メジャーなルックスへと変貌させた魔法に、人々は酔いしれた……
※本記事は2022年11月22日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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