
世界にたった1台しか存在しないバイク、自分にとっては何にも代えがたい愛車そのものだろう。それがノーマル車であれカスタム車であれ、跨がって走らせてみれば、体に染み込むフィット感がなんとも楽しい! バイクにあまり興味がなくても、ホンダの「スーパーカブ」や「モンキー/ゴリラ」の名前は知る人が多いだろう。ノーマルフォルムで楽しむ方向性の黄色ゴリラ。ボアアップに合わせてビッグキャブの組み込み段取りを行い、カスタム路線まっしぐらだ!!
●文/写真:たぐちかつみ(モトメカニック編集部) ●外部リンク:キースター(岸田精密工業)
メンテナンスで覚えて、カスタムで楽しむモンキー&ゴリラ
今回登場するのは、88ccにボアアップした初期型Z50J-IIIゴリラ(1978)。排気量アップに合わせてキャブセッティングを行う必要性があると思ったら、シフトアップ製のノーマルヘッド用のボアアップキットは、圧縮比の調整によって、ほぼノーセッティングのままでも気持ち良く走れることがわかり、原付二種登録によって、交通の流れに合わせて走れるようになった。
50cc時代と比べて、それはもうトルクフルで、あっと言う間に4速全開領域へ達してしまう。ここで気が付いたのが、圧倒的に力強くなったエンジンなのに、最高速的には大差がなかったということ。
そんな話をマシンオーナーさんとしていると、手元に4ミニカスタムでは定番中の定番である、ケーヒン製PC20型キャブがあるらしい。ノーマルマフラーのままで、ビッグキャブを取り付けて、どのような結果になるのかわからないが、ここは試しにやってみようということになった。
後日、預かったPC20を分解すると、外観も内部も見た目に悪い程度ではないが、しばらく放置されていた様子で、ガスケット類はカチカチに硬化。取り外そうと思ったらバラバラに…
そんなキャブのオーバーホール時に便利なのが、キースターの燃調キットだ。オーバーホールに必要なガスケットやOリングが一括同梱され、セッティング時に必要なジェット類やジェットニードルの針も数種類同梱されている。
これまでに何度もキースター製燃調キットの利用経験があるが、何よりもガスケット類の同梱がありがたい商品でもある。同キットはキャブの型式ではなく「バイクのモデル別ラインナップ」なので、PC20型キャブを標準装備するホンダTL125S用を購入し、オーバーホールを行った。
もはや生産中止となっており、ケーヒン製の新品部品は流通在庫のみとなった様子のPC20型。4ミニカスタムでは愛用者が数多いはず。今回は中古品をオーバーホールで復活させる。長年放置されていたであろう車両から外されたPC20。フロートチャンバーを外したら、Oリングタイプのガスケットが完全に劣化固着していて、ポロポロと崩れ落ちた…。
ケミカル缶をしっかり振ってから、フレッシュなガソリン7:ヤマハケミカル3で希釈する。この時には簡易メスシリンダーを利用して希釈率を間違えないように。煎餅やあられのPET製口広容器にキャブを沈めると作業性良好。
取り外した各種部品をジッパー付の小さなビニール袋に入れ、ストレート製のキャブクリーナー泡タイプをスプレーして利用。ケミカルを無駄なく利用でき、しかも作業効率が高い。作業ランプの熱で温めると汚れ落ちが加速する。
フロート支点ピンが固着して抜けなかったので、ヒーターで温めてから平ポンチで叩いて抜いた。常温のままで無理して叩くと、ピンの支持柱を折ってしまうことがある。
PET製の口広容器の中で半日ほどキャブを洗浄液に浸してから取り出し、ブラシで部品を擦って汚れ落としをした。ボディにサビ腐食がなかったので美しく仕上がった。
旧車ファンにはありがたいキースター岸田精密工業の燃調キット。キャブセッティングだけではなくオーバーホール時の必需品だ。純正でPC20を採用するTL125S用を利用した。各種調整スクリュー/スプリング/チャンバードレンなどの部品も燃調キットに同梱されているのでありがたい。1気筒単位で購入でき、お買い得感満点の部品だ。
基本的には一般的なハンドツールで分解洗浄組み立てができるが、車載工具だけではうまく行かない。平ポンチセットや小型ハンマーなども使い勝手が良い。あると便利な工具を揃えよう!!
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
モトメカニックの最新記事
“機械遺産”のコンディションをどう維持するか 電気自動車や電動バイクの普及が進めば進むほど、旧車や絶版車ムーブメントは一段と熱くなりそうだ。内燃機関に対する注目度が高まるのと同時に、ユーザー自身は“機[…]
擦らず拭くだけでOK。デリケートな素材も傷つけることなく赤サビを除去できる バイクや自動車の部品はもちろん、橋梁/建築物/工具/アウトドア用品の材料として当たり前のように使われている鉄素材。豊富な埋蔵[…]
車種別専用パーツのラインナップも豊富なキジマ バイクメーカーが開発するニューモデルは、ビギナーからベテランに至る幅広いニーズに応えるべく仕様を決定しているが、それでもすべてのライダーの希望を叶えられる[…]
メンテナンスで覚えて、カスタムで楽しむホンダのモンキー&ゴリラ シフトアップ製88ccキットを組み込み、ノーマルキャブのままでセッティング変更せずに普通に走ることができた、6ボルト仕様の初期型黄色ゴリ[…]
ネットで注文できる1サイズ&1プライスガレージ。完成状態で運搬されてクレーンで据え置きされる サンデーメカニックなら誰もが知る工具ショップ・アストロプロダクツのホームページ上に「BIKE小屋」という商[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
なぜ「モンキーレンチ」って呼ぶのでしょうか? そういえば、筆者が幼いころに一番最初の覚えた工具の名前でもあります。最初は「なんでモンキーっていうの?」って親に聞いたけども「昔から決まっていることなんだ[…]
エンジンがかかりにくい→完全停止へ 今回直したのはスズキのZZです。2000年代初頭に登場した50ccスクーターで、「通勤快速」として人気を博し、油圧ディスクブレーキやアルミホイールなど、当時としては[…]
“機械遺産”のコンディションをどう維持するか 電気自動車や電動バイクの普及が進めば進むほど、旧車や絶版車ムーブメントは一段と熱くなりそうだ。内燃機関に対する注目度が高まるのと同時に、ユーザー自身は“機[…]
大和ハウスグループが手がけたD-Wash 愛車を長持ちさせるためにも、大切にしたい「洗車」という作業。 汚れの放置はサビや各部品の劣化が進むことにもつながるし、洗車をしながら、緩んでいるボルトやパーツ[…]
擦らず拭くだけでOK。デリケートな素材も傷つけることなく赤サビを除去できる バイクや自動車の部品はもちろん、橋梁/建築物/工具/アウトドア用品の材料として当たり前のように使われている鉄素材。豊富な埋蔵[…]
最新の関連記事(キースター)
バイクいじりの教科書として愛され続けるホンダ原付50ccモデル スーパーカブ/モンキー/ゴリラ/DAX/JAZZなど、数あるホンダ50ccモデルで多くのライダーに親しまれてきたのが「横型」と呼ばれるエ[…]
高いポテンシャルを持ちながら肩の力を抜いて乗れる二面性で大ヒット セローが登場した1985年は、オンロードでは本格的なレーサーレプリカブームが到来する頃でした。オフロードも同様で、パンチのある2ストロ[…]
キャブレターボディ内部の汚れは漬け込みタイプのクリーナーが効果的 キャブレターやガソリンタンク内に長期間溜まったガソリンは、時間の経過とともに劣化、変質します。どの程度の期間で劣化するかは保管状況など[…]
ビスを緩めるドライバー、電動ツールやショックドライバーも欲しい フロートチャンバーやトップカバーなど、キャブレターボディ外部に取り付けられた部品の多くはプラスまたはマイナスのビスで固定されており、ビス[…]
キープコンセプトながらすべてが一新されたスーパーXR250 街乗りでも林道でもエンデューロレースでもより幅広いライダーが、より楽しく軽快なライディングを満喫できることを目的に開発されたのが、1985年[…]
人気記事ランキング(全体)
レブル250ではユーザーの8割が選択するというHonda E-Clutch ベストセラーモデルのレブル250と基本骨格を共有しながら、シートレールの変更や専用タンク、マフラー、ライディングポジション構[…]
最新モデルはペルチェデバイスが3個から5個へ 電極の入れ替えによって冷却と温熱の両機能を有するペルチェ素子。これを利用した冷暖房アイテムが人気を博している。ワークマンは2023年に初代となる「ウィンド[…]
なぜ「モンキーレンチ」って呼ぶのでしょうか? そういえば、筆者が幼いころに一番最初の覚えた工具の名前でもあります。最初は「なんでモンキーっていうの?」って親に聞いたけども「昔から決まっていることなんだ[…]
250ccを思わせる車格と水冷2スト最強パワーに前後18インチの本モノ感! 1979年、ホンダはライバルの2ストメーカーに奇襲ともいえる2スト50ccの、まだレプリカとは言われてなかったもののレーシー[…]
ブレーキディスクの大径化が効いたのはメンタルかもしれない 第8戦アラゴンGPでも、第9戦イタリアGPでも、マルク・マルケスが勝ち続けています。とにかく速い。そして強い。誰が今のマルケスを止められるのか[…]
最新の投稿記事(全体)
φ355mmとφ340mmのブレーキディスクで何が違ったのか 行ってまいりました、イタリア・ムジェロサーキット。第9戦イタリアGPの視察はもちろんだが、併催して行われるレッドブル・ルーキーズカップに参[…]
新進気鋭のクルーザー専業ブランドから日本市場に刺客! 成長著しい中国ブランドから、またしても新顔が日本市場にお目見えしそうだ。輸入を手掛けることになるウイングフット(東京都足立区)が「導入ほぼ確定」と[…]
規制の根拠は「道路法・第46条第3項」 高速道路などを走っていると、時折インターチェンジの手前などで「危険物積載車両ここで出よ」という表示を目にすることがある。この表示を見かけた場合、その先に危険物積[…]
シュワンツとともに駆け抜けた夏 レプリカ時代の礎を築いたRG250Γの登場から5年。強力なライバルから覇権を奪還すべく、ついにスズキの次世代機が姿を現す。 RGV250Γの名が示す通り、並列2気筒に代[…]
シリーズ第11回はクイーンスターズ・スペシャルQ&A! 白バイと言えばヤングマシン! 長きにわたって白バイを取材し、現役白バイ隊員による安全ライテク連載や白バイ全国大会密着取材など、公道安全運[…]
- 1
- 2