
2023年には2回開催、そして2024年は6/1(土)/10/26(土)にスズカツインサーキットで開催を予定している走行会「アストライド」。クラシック車からレーサーまでが集い、各々のペースで走行し、仲間と楽しむ。この記事では、その会場で見つけた珍しい車両やレーサーをピックアップし紹介する。
●文/写真:モトメカニック編集部(栗田晃) ●外部リンク:モトジョイ
スズキXR69レプリカ
アストライドの会場に現れたスズキXR69レプリカ。これは車両製作のケーススタディとしてモトジョイが輸入したクラシックTT-F1クラスのチャンピオンマシンで、1980年代初頭から40年間に渡り、オリジナルフレームのレーシングマシンを製作し続けているモトジョイの佐藤会長が持ち込んだ車両だ。
モトジョイの母体となるOVER RACING PROJECTSは、1990年代半ばにはユーロスーパーモノ選手権でシリーズ制覇を達成し、トップコンストラクターとしての名声を獲得。そんな佐藤会長率いるモトジョイが購入したのが、ヨーロッパでチャンピオンを獲得したこのスズキXR69レプリカだ。ハリスパフォーマンス製フレームにスズキカタナ系の4 バルブエンジンを搭載したマシンを輸入した理由と、今後の構想を聞いた。
「正直に言うと、向こうのレギュレーションがよく分からんのですよ」アストライドのパドックにXR69レプリカを持ち込んだ真意を尋ねると、佐藤会長はそう答えてくれた。過去にベルギーのスパ・フランコルシャンやオーストラリアのフィリップ・アイランドサーキットのクラシックTT-F1レースを視察した佐藤会長は、数多くのXR69レプリカが想像を超える速さで戦うレースに驚いたそう。XR69とは、1980年代初頭のスズキTT-F1レーサーGS1000Rのことで、それをモチーフとしたXR69レプリカがハリスパフォーマンス社製フレームキットを用いて製作されている。
カワサキZ1を搭載したOV-40やスズキバンディットを搭載したOV-41を製作した佐藤会長からすれば、国内レースだけでなく海外も…となるのは当然。ところが現地ではレースごとにレギュレーションの細部が異なり、どのような仕様が最適なのか分からない。
そんな時に売りに出されていたのこのマシンで、レギュレーションの解釈や各部の作りを研究する目的で輸入したという。だからといってすぐに行動に移すわけではないそうだが、現物からディティールを把握することで、将来的に海外参戦することがあればオリジナルフレーム製作に活かしていきたいということだ。
このマシンは2013年にスパ・フランコルシャンサーキットで開催されたヨーロッパクラシックエンデュランスレース、2014年のドイツ選手権クラシックスーパーバイククラスのチャンピオン獲得実績のある車両。
4バルブのスズキGSX1100用をベースに、JEピストンで1170ccまで排気量をアップ。軽量クランクシャフト/ビッグバルブ/レース用カムシャフト/大容量オイルポンプ/TTS スリッパークラッチを装備。ミクニTMRキャブとヨシムラ製マフラー装着で、最高出力149bhp/最大トルク140Nmを発生。
カウルは耐久仕様で、2灯式ライトはシビエ製。
カウルは耐久仕様で、2灯式ライトはシビエ製。
ホンダGB400TT Mk2:30年間乗り続けてきたカスタムGB。新たな仲間と出会い愛着さらに深まる
20歳で購入して30年間、車検を切らすことなく、街中とサーキットで走り続けている長谷川さん。20代の頃はGBと平行して所有していたSRXで、TI サーキット(当時)のモトルネッサンスにエントリー。その後SRXは手放したが、「他人が乗っているのをまず見かけないから」という理由でGBに乗り続けてきた。
足周りを中心としたカスタムは自ら行い、街乗りとサーキットではマフラーを変更するなど、単に少数派というだけでなく愛情を注ぎ続けている。アップデートされた足周りに対して、エンジンはこれまでの3万7000kmで一度も開けたことのない完全ストック状態。純正部品の欠品が多いので、今後のメンテナンス事情が一番の心配事だそう。
HONDA GB400TT Mk2|ライダー◎ T.HASEGAWA
ケーヒンFCRと2本出しマフラー、全体のカスタム具合から、チューニングされていないのが不思議なほどだが、エンジンは完全ノーマルで、現在もパフォーマンスに不満はないとのこと。キャブレターはFCRだが、エアークリーナー仕様としている点もエンジンに優しいポイント。一方足周りはCB400スーパーフォアを流用し、フロントはキャブ最終モデルのNC39用で、リヤは初期型のNC31用。これはNC31のリヤタイヤサイズが140なのに対してNC39は160で、GBの車格には太すぎると判断したため。アストライド界隈でオバQと呼ばれるMk2カウル内には、純正タコ/社外のデジタルメーター/トップブリッジ下のセパレートハンドルが収まる。
ケーヒンFCRと2本出しマフラー、全体のカスタム具合から、チューニングされていないのが不思議なほどだが、エンジンは完全ノーマルで、現在もパフォーマンスに不満はないとのこと。キャブレターはFCRだが、エアークリーナー仕様としている点もエンジンに優しいポイント。一方足周りはCB400スーパーフォアを流用し、フロントはキャブ最終モデルのNC39用で、リヤは初期型のNC31用。これはNC31のリヤタイヤサイズが140なのに対してNC39は160で、GBの車格には太すぎると判断したため。アストライド界隈でオバQと呼ばれるMk2カウル内には、純正タコ/社外のデジタルメーター/トップブリッジ下のセパレートハンドルが収まる。
ヤマハTZ250:1970年代からの憧れをついに実現。レーサーならではの走りを堪能
1970年代後半、初めてレースを見に行った鈴鹿サーキットで活躍するTZ250や350を見て以来、上野さんにとって憧れのバイクとなったTZ。ただ自身がレースを行うことは考えておらず、憧れのまま終わるものだと思っていそうだ。
ところがネットオークションで発見した1995年式TZ250に冷やかし半分で入札すると、まさかの落札!! 当初は慌てたものの、「骨董品には贋作もあるが、走らなくてもTZはTZだから」と気持ちを切り替えた。
年式は1995年式だが、後の無鉛ガソリンキットが組み込まれていたため、電気系が異なるなど復活には苦労し、補修用部品の心配も尽きないものの、レーサーの走りを満喫しているそうだ。
YAMAHA TZ250|ライダー◎ A.UENO
「出品コメントに“エンジンはかかる”とあり、手元に来た時からエンジンは始動しましたが、1995年式のパーツリストとマニュアルと実車を比較すると、あれこれ部品が違っていて困惑しました。後に無鉛ガソリンキット関連の部品だと判明しましたが、周りに仲間がいないとレーシングマシンを維持するのは難しいと思います」と上野さん。エンジンがかかれば乗ってみたくなり、愛車であるSRXのエンジンオーバーホールを佐藤会長に依頼していたこともあって、アストライドに参加するようになった。レーサーながら低速トルクが豊かなので、想像以上に走りやすいが、エンジン周りの部品がほぼ販売終了のため、スロットルを全開できないことにジレンマを感じるそうだ。
「出品コメントに“エンジンはかかる”とあり、手元に来た時からエンジンは始動しましたが、1995年式のパーツリストとマニュアルと実車を比較すると、あれこれ部品が違っていて困惑しました。後に無鉛ガソリンキット関連の部品だと判明しましたが、周りに仲間がいないとレーシングマシンを維持するのは難しいと思います」と上野さん。エンジンがかかれば乗ってみたくなり、愛車であるSRXのエンジンオーバーホールを佐藤会長に依頼していたこともあって、アストライドに参加するようになった。レーサーながら低速トルクが豊かなので、想像以上に走りやすいが、エンジン周りの部品がほぼ販売終了のため、スロットルを全開できないことにジレンマを感じるそうだ。
ホンダVF750R:ネットオークションで見つけた1台はまさかのワークスマシン!!
テイストオブツクバにGSX750Sカタナ改1166 でエントリーしていた小澤さんが、黎明期のネットオークションでVF750R を発見したのは2003年頃。1980 年代のAMAスーパーバイクレースに興味があり「VF750Fのカスタム車か?」と画像をよく見ると、市販車カスタムとは思えないディテールが満載。
現在ほどネットオークションが盛んでなかったことも幸いして、入手してみると、まさに1983年型のレーサーであるVF750Rと判明。
カムギヤトレーンのエンジンやマグネシウムボディのキャブレターなど、レアすぎる当時モノの部品を生かすために入念にメンテナンスを行いながら、V4サウンドを轟かせるのを楽しみにしているそうだ。
HONDA VF750R|ライダー◎ T.OZAWA
プラント内の機械修理や溶接を本業とするオーナーにとって、バイクは完全な趣味。特にVFが欲しくて探していたわけではなかったが、博物館にあるようなワークスマシンが自宅にあったらさぞ楽しいだろうと入手したそうだ。エンジン周りのマグネシウムパーツなどのお宝パーツはほぼ欠品なしのコンプリート状態だったが、勝手知ったるスズキ空冷4気筒とまったく異なるホンダV4を、イチから勉強して実走行にこぎ着けた。現在は気軽に走行会を楽しめるよう、ワークスエンジンを市販のVF750F用に積み替えているが、足周りや外装パーツは当時のオリジナルパーツを使用している。ゼッケン9は、ウェス・クーリーがAMAでVFに乗っていた時のナンバーだそう。
プラント内の機械修理や溶接を本業とするオーナーにとって、バイクは完全な趣味。特にVFが欲しくて探していたわけではなかったが、博物館にあるようなワークスマシンが自宅にあったらさぞ楽しいだろうと入手したそうだ。エンジン周りのマグネシウムパーツなどのお宝パーツはほぼ欠品なしのコンプリート状態だったが、勝手知ったるスズキ空冷4気筒とまったく異なるホンダV4を、イチから勉強して実走行にこぎ着けた。現在は気軽に走行会を楽しめるよう、ワークスエンジンを市販のVF750F用に積み替えているが、足周りや外装パーツは当時のオリジナルパーツを使用している。ゼッケン9は、ウェス・クーリーがAMAでVFに乗っていた時のナンバーだそう。
モリワキGPZ400F F-3:ノービスライダーの登竜門・鈴鹿4耐を走ったモリワキGPZ
モトサイクレットサワダ所有の、モリワキフレームにカワサキGPZ400エンジンを搭載したTT-F3レーサー。CBX400Fエンジンを搭載したモリワキZERO X-1が優勝した1983年、鈴鹿4時間耐久ロードレースに参戦し、7位を獲得したのがこのモリワキGPZだ。当時のTT-F3は、プロを夢見るノービスライダーが大挙エントリーする激戦クラスで、中でも鈴鹿4耐は夢の舞台だった。
当時のライダーは、モリワキからエンジンレスのF3ローリングシャシーコンプリートで購入し、マシンを製作。カラーリングは後年リペイントされたが、仕様は往年のままだそう。現在モトサイクレットサワダでフルオーバーホール中で、来年のアストライドで走行予定。
MORIWAKI GPZ400F F-3 取材協力◎モトサイクレットサワダ
4 耐で優勝したZERO X-1のフレームはアルミ製だが、市販のF-3キット用フレームはスチール製で、カワサキだけでなくCBX400FやヤマハXJ400Zのエンジンも搭載可能だった。空冷2バルブのGPZエンジンは、ピストンやカムがメーカーのレース用パーツで、クラッチはダイシン製の乾式。キャブレターはケーヒン純正負圧タイプのファンネル仕様。フロントフォークはモリワキKYBで、前後ホイールはBEETマグが装着されており、フロントブレーキキャパーとマスターシリンダーはカワサキワークスパーツ。優勝したモリワキZERO、2 位のヨシムラGSX400FWに続く3位には、オリジナルフレームにGPZエンジンを搭載したTeam38が入っている。
4 耐で優勝したZERO X-1のフレームはアルミ製だが、市販のF-3キット用フレームはスチール製で、カワサキだけでなくCBX400FやヤマハXJ400Zのエンジンも搭載可能だった。空冷2バルブのGPZエンジンは、ピストンやカムがメーカーのレース用パーツで、クラッチはダイシン製の乾式。キャブレターはケーヒン純正負圧タイプのファンネル仕様。フロントフォークはモリワキKYBで、前後ホイールはBEETマグが装着されており、フロントブレーキキャパーとマスターシリンダーはカワサキワークスパーツ。優勝したモリワキZERO、2 位のヨシムラGSX400FWに続く3位には、オリジナルフレームにGPZエンジンを搭載したTeam38が入っている。
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