バイク、クルマに関わらず、夜間走行時のライトはロービームが基本で、対向車や前走車がいなくて街灯が少ない暗い道の時だけハイビームにするのが常識というかマナーだと思っていた……ら、「夜間走行は原則的にハイビームが基本」と法令で決まっている。みんな知ってた!?
●文:伊藤康司 ●写真:カワサキ、ホンダ、ヤマハ、スズキ
じつは昔から「夜間は原則ハイビーム」
ハイビームの方が遠くまで照らすから夜間の視認性が良いのは当たり前。とはいえ対向車や前走車が眩しいから「基本ロービーム」で走っている人は多いだろう。しかし道路交通法では、夜間走行時は適切にハイビームを使っていないと、ライトを点けていない『無灯火違反』が適用されることもあるという(違反点数と反則金あり)。
道路運送車両法の保安基準ではハイビームを「走行用前照灯」、ロービームを「すれ違い用前照灯」と呼ぶ。その名の通り、原則的にハイビームを使い、対向車など他の車両と行き違う時だけロービームを使う、ということだ。
こちらも道路交通法では「ほかの車両と行き違う時」や「他の車両等の直後を進行する場合」などにはきちんと減光(ロービームに切り替える)しないと『減光義務違反』になるのだ(反則金アリ)。
要するに夜間は『無灯火違反』と『減光義務違反』にならないように、かなりマメにハイビームとロービームを切り替える必要があるのだ。
ヘッドライトに関する保安基準
ハイビームじゃないと「3秒先」が見えない!?
とはいえ「基本ハイビーム」だと、ロービームに切り替えるのを忘れたり、切り替えるタイミングがマズいと周囲に迷惑だから、ずっとロービームで……という方も多いだろう。しかし近年の調査では、夜間の事故はロービームの使用時に多いこともわかってきている。
ちなみに安全運転に関するテクニックというか標語のひとつに『3秒先を見ろ』というモノがある。バイクやクルマは前方の異常に気づいてから停止するまでに約3秒(空走距離:1秒+制動距離:1~2秒)かかるので、危険を回避するために「3秒先を見ろ」といわれるのだ。
そこでスピードと3秒先の距離を計算すると、40k/mだと33.3mなのでロービームでも視認できるが、50k/mだと41.7mなので照射距離がギリギリ足りない。そして60k/mだと50mなので、ロービームでは3秒先を見ることが出来ない……。やはり夜間は可能な限りハイビームを使う必要があるのだ。
バイクに「オートハイビーム」が登場!
じつは2017年の道路交通法の改正で「夜間走行は原則的にハイビームが基本」が明確化されたことで、クルマ(四輪車)は自動でハイビームとロービームを切り替える装置(AHBやAFSなどメーカーによって呼称は異なる)を装備する車両が増えてきた。かつては高級車や上級グレードだけだったが、現在は軽自動車も含めてかなり普及している。
対するバイクは、この分野はクルマより遅れがちだが、EICMA2022でカワサキが発表した2023年モデルのニンジャH2 SX/SEにオートハイビーム(AHB)が装備された。おそらくこれを機に、大型ツアラー系などから普及していくのではないだろうか。
また、ハイビーム、ロービームではないがアダプティブヘッドライトもバイクに普及。これはバンク角やサスペンションのピッチングなどに応じてコーナーの先を照らしてくれるもの。コーナーだけでなく暗い路地などでも有効で、BMWやドゥカティの一部のモデルに採用され始めている。
安全と法令はもちろん、思いやりも忘れずに!
道路交通法で「原則ハイビーム」が明確化されたとはいえ、もちろんずっとハイビームのままで良いワケではない。周囲の交通に危険や支障がないよう、適切にロービームに切り替えることを周知しているし、ハイビームによる幻惑で事故が起こったら、それこそ本末転倒だ。
「最近はハイビームのままで眩しい車が多いな……」と感じている方も多いかもしれないが、間違った解釈でずっとハイビームのままにしている場合もあれば、ハイビームの自動切り替え装置が上手く動作していない可能性も考えられる。
今後はバイクもオートハイビームの装備が普及すると予想されるが、すべてを機械任せにせずに、安全と法令を守るとともに、やはり相手を思いやる気持ちを忘れないことが大切なのだ。
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