ヤマハの市販レーサーである1985年型のTZ250に乗った直後にヤマハの市販最新スポーツであるYZF-R7に試乗。TZ250はまるでうまく乗れないピンポイントな操作性だったが、YZF-R7はケイファクトリーにより随所に手が入り、ノーマルを上回る馴染みやすさを披露してくれた。
YZF-R7その前に。多くの反響をいただいた1985 ヤマハ TZ250の記事
1985 ヤマハ TZ250に試乗!【まさか、鉄フレームのTZを体験できる日が来るなんて!】
この記事には本当に多くの反響をいただき、すでに10万人以上の方に読んでいただいた。
記事にも書いたけれど当時の僕は11歳。時代背景はまったくわからない。
「時代背景をわからないヤツが乗るな」という意見もいただいたし「いま乗れるなんて羨ましい」という意見などその反響は様々。
最高のリアクションをくれたのは先輩ジャーナリストの和歌山利宏さんで、以下のような記事まで書いていただいた。
’85 TZ250が乗りにくいって!? 当の開発ライダーに一言、言わせろ
当時開発に携っていた和歌山さんのご意見はもっともで、とても考えさせられた。
僕も原稿を書く前に色々調べたけれど、この頃のTZ250は目まぐるしく改良され、レーサーも市販車も猛烈な勢いで進化していた。もちろん、僕は各年式を乗り比べたことはないし今乗り比べることは不可能。僕はその進化というよりは76年〜85年までの『伝説の鉄フレーム&モノサスTZ250』を体感させていただいたというレポートを書いたつもり。
その時代感の詳細は改めて双方の記事を読んでいただくと面白いと思うけれど、もちろん、僕は皮肉で書いたわけでもなんでもなく、この時代を築いてきた方々と、いま1985年式のTZ250をレストアしてくれたブルーポイントとケイファクトリーへの感謝しかないのだ。
だってこの怒涛の時代がなかったら、今こんなにバイクを楽しめていないと思うから。それくらい、この時代のスピード感は凄かった。
その超貴重な1985年式のTZ250を僕に乗せていただけるって……、本当に幸せである。おかげで伝説の市販レーサーTZ250の片鱗を見ることができたというわけ。
そして、色々な方々の反応を知ると、当時のバイク&レースブームを知っているライダーが羨ましくなった。
ちなみに2021年に1992年式のTZ250にも乗せていただいたが市販車のNSR250やTZR250と比較すると85年式ほどではないがとっても難しかった。2ストロークの圧倒的な軽さは本来武器になるはずだが、僕の身体が素早く寝ていくその動きに対応できず、エンジンもやはりパワーバンドキープが難しかった。
その時一緒に乗った原田哲也さんに「原田さんこれで(正確にはTZ250の改良版であるTZ250M)世界回って1年目にタイトル取ったんですね……」と話をすると、「そーだよー。これは全然乗りやすい方だよ」とのことだった……。もちろん原田さんはこのTZ250で立ち上がりでは軽くフロントを浮かせながら水を得た魚のように走っていた。
85年式のTZ250と格闘し、どうにも思い通りにならないままバイクを降りた僕は、次にケイファクトリーの手がけたヤマハ YZF-R7に試乗。1周目から感動するほど思い通りになるハンドリングとエンジンに夢中になった。
270度のパラレルツインエンジンの個性を引き伸ばすチタンフルエキゾースト
ヤマハのRシリーズの最新デザインはとてもスタイリッシュで、これは多くの世代が共感するカッコよさ。そのブルーのボディにゴールドのチタンフルエキゾーストが映える。このゴールドは1本1本バーナーで炙った焼け色でつけられており、そのなんともいえない色合いはケイファクトリーだけのオリジナリティだ。
ケイファクトリーのYZF-R7を極楽に感じたのは、このマフラーの特性が大きかった。
例えばコーナーに1速高めのギヤで進入してしまってもスロットルを大きく開けると簡単についてくるキャラクターで、スロットル開け始めもとてもフレキシブル。低中速のトルク感がアップし、スロットルを開けるのが楽しい味付けになっている。
ドコドコする感じが強まっており、それは270度クランクのパラレルツインエンジンの真骨頂。エキゾーストノートもスタンダードにはない甲高い歯切れの良さがあり、低速でのトルク感と高回転での伸びが上手くマッチしている。
これはスタンダートよりもエキパイが長く、サイレンサー容量も増えていることが貢献。
このゴールドのフルエキゾーストは、YZF-R7の純正カラーであるブルーとブラック両方にとても似合うし、高級感を強めてくれるアイテムである。
また、ライディングステップにより積極的に身体を動かしてスポーツするのが楽しいポジションを実現。ステップの移動量は以下の通りだ。
アップ バック
10mm 0mm
20mm 0mm
10mm 10mm
20mm 10mm
そして、リヤサスペンションはギアーズ(GEARS)製を装着。ノーマルよりも初期作動性が良く、ライダーの荷重移動やスロットルワークにリニアに反応してくれる。またライダー乗車時の姿勢がノーマルよりもリヤ下がりな感じになっていることでグリップ感が掴みやすかったことも印象的だった。
TZ250でヘコんだ心をリセットでき、この日のテストを気持ちよく終えられたのは、ケイファクトリーのYZF-R7の仕上がりによるところが大きい。
サーキットでみんなで遊べるバイクになって欲しい! 目指すのはオジサンのチューニングパーツ!
ケイファクトリーは、自社のカスタムパーツ開発に向け、九州のSPA直入を終日占有して製品をテスト。今回は、その流れでTZ250やこのYZF-R7に試乗させていただいた。プロからアマチュアまで様々なライダーが試乗し、そこでフィードバックされたことを元に製品化していく。
製品のテストだけであればデモ車のリヤサスを交換する必要はないかもしれないけれど、ケイファクトリーはそのマシンのカスタムの可能性を探るため、YZF-R7に限らず開発車両を購入し、凄まじいスピード感でデモ車をつくっていく。
「これからはYZF-R7をサーキットに持ち込んで、仲間内で遊んでみたいですね。そういうのが気軽にできるバイクだと思うんです。タイムを競っても本気にならずに熱くなれる。このくらいのパワーやパッケージがスポーツするにしても健全。これ以上になるとシビアになりすぎますから。
今回のテストにも様々なキャリアのライダーが参加してくれています。バイクが大好きな仲間達がいろいろ乗って意見をくれる。プロライダーの意見も大切ですが、それだけでは良いパーツはできません。そんなアベレージで走るお客様ばかりじゃありませんから。一般のライダーの意見を聞くと、ラクして速く&上手く走れるチューニングパーツができますから(笑)」とケイファクトリー代表の桑原さん。
確かにこの日は、気心知れた20人以上のメンバーが参加。寒空の雨にもかかわらず終日サーキットは賑わっていた。その年齢層もキャリアも様々。元MotoGPライダーや元メーカーテストライダーまでが参加しているのだ。そしてとにかく笑顔が絶えない1日なのである。
ここにケイファクトリーのモノづくりの原点がある。
後日、改めて桑原さんに電話すると、すでにマフラーは認証試験を終え、発売秒読み状態とのこと。
「こないだのテストでYZF-R7のリヤサスペンションのバネレートを下げたいという意見があったので、それも用意しました。次のテストが楽しみですね」と桑原さん。
さすがである。
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