
●レポート:阪本一史(『別冊モーターサイクリスト』元編集長) ●写真:モーサイ編集部 ●記事提供:モーサイ編集部
燃料コックのポジション“ON/OFF/RES”の意味と使い方
多くの現行モデルの燃料供給方式は、FI(フューエルインジェクション|電子制御燃料噴射)だ。
言うまでもなく、燃焼効率/環境性能の向上になくてはならない必然の機構として普及したから、キャブレターならではの味わいを回顧するのはおっさんのエゴなのかもしれない。だが、当記事ではそれを承知でアナログな機構を振り返ってみたい。
キャブレターと同時に消滅したこのアナログな機構は、燃料タンクからキャブレターに送り込まれる、ガソリンの“開閉門”だ。
ここにON(流入)/OFF(流入止め)/RES(リザーブ=燃料が残り少ないときの切り替え)の各位置を選べるレバーが付き、その都度切り替えて使用するものだ。
ベテランのオヤジライダーには「何を今さら…」の説明だが、使いこなすと便利だと思うのは、やはりおっさんのノスタルジーか…?!
ホンダCG125の燃料コック。燃料コックの切り替えレバーには“FUEL”という文字と矢印が刻まれている(矢印で示されている先が選択中のポジションとなる)。
RES=リザーブは実際どのくらい走れるのか?
通常の走行時はONに入れる。これで走行し続けて、燃料がなくなるとエンジンが止まる。だが、まだ走れる。
RESに切り替えると再度ガソリンが送り込まれ、エンジンがかかる。タンクから燃料コックを外してみればわかるが、ON位置用の流入パイプが少し高い位置(油面)にあり、RES用の燃料通路は燃料タンクのほぼ底面についているのがわかる。
つまり、ガソリンを送り込む油面の高さ(ONで吸えなくなる位置)で燃料残量を警告し、リザーブになったら給油しなさいと教えてくれる仕組み。落下式燃料コックとも言い、非常にわかりやすい機構だ。
このRES=リザーブのことを“予備タンク”などと言う人もいるが、燃料タンク内に実際に予備タンクとして仕切りで区切られた別室があるわけではない。
ヤマハTW200/TW225の純正燃料コック。タンク内からガソリンを吸う“吸い口”が2本あり、高い位置から吸うのが“ON”、低い位置から吸うのが“RES”。その経路をレバーで切り替えるわけだ(吸い口先端の白い部分は燃料フィルター)。
ただし注意すべきは、RES位置で使ったコックの給油後の戻し忘れだ。ちゃんとON位置に戻さずにRES位置のまま使い続けると、次は完全なカラ状態でパニくることになるのだ。
さて、RES位置からの残り燃料はどれくらいあるか(=残りの走行可能距離)だが、これは排気量や車両の燃費性能によってまちまちだ。しかし大概の国産車は、最低でも50km程度走れるように設定されている印象だ。
たとえば自分が所有したモデルでは、ナナハンクラス(タンク容量22L、平均燃費17〜19km/L)の場合で、リザーブ容量は5L弱。軽二輪のオフロードバイク(タンク容量10L、平均燃費30〜33km/L)でリザーブは約2Lだった。最低50kmは走行可能を裏付ける設定だ。
2ストオフロード車などはリザーブがかなり少ないものも
とはいえ、例外もあった。これまで筆者自身が乗ったことのあるモデルでいうと、ホンダの2スト原付二種オフロードバイク・CRM80(絶版車)は、元々タンク容量が少なく5.2Lで、リザーブ容量は0.7L。そのくせ、燃費は4ストの軽二輪よりよくない(20km/Lを切ることもある)。これでは山中の長めのダートに入り込むのは不安、と引き返したことがある……
ホンダCRM80(写真は1997年モデル)。燃料タンク容量は5.2Lで、リザーブ容量は0.7L。
※本記事は2021年5月21日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
モーサイの最新記事
インカムが使えない状況は突然やって来る!ハンドサインは現代でも有効 走行中は基本的に1人きりになるバイク。たとえ複数人でのマスツーリングだとしても、運転中は他のライダーと会話ができないため、何か伝えた[…]
仕事を通じてわかった、足を保護すること、足で確実に操作すること 今回は、乗車ブーツの話をします。バイクに乗る上で、重要な装備の一つとなるのが乗車ブーツです。バイクの装備といえばヘルメットやジャケット、[…]
【燃料タンク容量考察】大きければ良いってもんではないが、頻繁な給油は面倒だ 当たり前の話ではあるけれど、燃費性能とともに、バイクの航続距離(無給油で連続して走れる距離)に関係してくるのが、燃料タンクの[…]
バイクいじりで手が真っ黒、そんな時どうしてる? バイクいじりにつきものの、手の汚れ。 特に、チェーンのメンテナンスやオイル交換など、油を使った作業となるとタチが悪い。 ニトリル手袋やメカニックグローブ[…]
松戸市〜成田市を結ぶ国道464号の発展 かつて、千葉県の北総地区は高速道路のアクセスが今ひとつ芳しくなかった。 常磐自動車道・柏インターや京葉道路・原木インターからもちょっとばかり離れているため、例[…]
最新の関連記事(バイク雑学)
いまや攻めにも安全にも効く! かつてはABS(アンチロックブレーキシステム)といえば「安全装備」、トラクションコントロールといえば「スポーツ装備」というイメージを持っただろう。もちろん概念的にはその通[…]
油圧ディスクブレーキだけど、“油(オイル)”じゃない いまや原付のスクーターからビッグバイクまで、ブレーキ(少なくともフロントブレーキ)はすべて油圧式ディスクブレーキを装備している。 厳密な構造はとも[…]
元々はブレーキ液の飛散を防ぐため フロントブレーキのマスターシリンダーのカップに巻いている、タオル地の“リストバンド”みたいなカバー。1980年代後半にレプリカモデルにフルードカップ別体式のマスターシ[…]
振動の低減って言われるけど、何の振動? ハンドルバーの端っこに付いていいて、黒く塗られていたりメッキ処理がされていたりする部品がある。主に鉄でできている錘(おもり)で、その名もハンドルバーウエイト。4[…]
ホンダはEクラッチとDCTの二面展開作戦だ 自動クラッチブームの火付け役として、まず一番目に挙げられるのが今のところホンダCB/CBR650Rとレブル250に採用されている”Eクラッチ”。機構としては[…]
人気記事ランキング(全体)
最強のコスパ防寒着か? 進化した「GIGA PUFF」 まず注目したいのが、「GIGA PUFF フュージョンダウンフーディ」だ。価格は驚異の4900円。このフーディの肝は、中わたの量にある。従来製品[…]
「着る換気扇」サーキュレーターメッシュ 今回紹介するのは、2025年9月の発売からわずか2ヶ月半で累計3万枚を突破したという「サーキュレーターシリーズ」だ。最大の特長は、裏地に採用された「サーキュレー[…]
バイク置き場を有効活用できる。掛けてから移動できるリアスタンド バイクとの接点は、スイングアーム下から支える付属のL形アタッチメントか、スイングアームに取り付けたスプールに引っかける別売りのV形アダプ[…]
「天然のエアコン」が汗冷えを防ぐ 厚着をしてバイクで走り出し、休憩がてら道の駅やコンビニに入った瞬間、暖房の熱気で生じる汗の不快感。そして再び走り出した直後、その汗が冷えて体温を奪っていく不安。ライダ[…]
後輪を軸に旋回する基本通りに乗れる車体のしなやかさと従順かつ繊細なエンジン特性! 2ストロークエンジン・メーカーではなかったホンダが、’60年代に世界GP完全制覇の後に再挑戦した4ストNR500が思わ[…]
最新の投稿記事(全体)
バイクいじり全般で使い勝手の良いスタンダードサイズ 自社内の多段鍛造設備で同じブランク材から鍛造するため、スタンダートサイズの全長は6角/12角/サーフェイスとも開口部5.5〜13mmは全長26mm、[…]
DRZ4シリーズが24年ぶりのフルモデルチェンジ ʼ00年に登場したDR-Z400シリーズ。オフ車の“S”が24年ぶり、モタードの“SM”が19年ぶりとなるフルチェンでDR-Z4シリーズへと進化! 早[…]
CB復権! 新型CB1000F/CB1000F SE 名車CB1300シリーズの後を継ぐHonda CBの新しいフラッグシップモデル・CB1000Fシリーズがついに正式発表となりました! CBの持つ歴[…]
BMWの牙城を崩そうとドイツの開発チームと熟成をはかる! ホンダはスーパースポーツで世界を制覇、その勢いはフラッグシップで呼ばれる豪華ツアラーモデルでもリーダーを目指し、水平対向4気筒のGLゴールドウ[…]
インカムが使えない状況は突然やって来る!ハンドサインは現代でも有効 走行中は基本的に1人きりになるバイク。たとえ複数人でのマスツーリングだとしても、運転中は他のライダーと会話ができないため、何か伝えた[…]
- 1
- 2









































