●記事提供:モーサイ
前身となる修理工場の創設が1911年で、モーターサイクルメーカーとしての活動を開始したのは1921年。歴史の長さを考えれば、名門であることは間違いないけれど、「ベネリってどんなメーカー?」と聞かれて即答できる人は、イタリア車好きでもあまり多くはないと思う。
その一番の理由は、エンジンに明確な特徴がないからだろう。例えば同じイタリアのメーカーの歴史を振り返ると、かつてのジレラとMVアグスタは並列4気筒のイメージが強かったし、ドゥカティはベベル系シングル/Lツインで確固たる地位を確立した。
またモトグッツィの主軸は、1960年代中盤までは水平単気筒で、それ以降は縦置き90度Vツインだ(念のために記しておくと、この4社は上記以外にも多種多様なエンジンを手がけている)。
そのあたりを踏まえて、ベネリの特徴を挙げるなら、先進的にして多気筒に積極的だったメーカー……となるだろうか?
1920~1930年代のベネリ「OHC/DOHCヘッドを先駆けて採用」
黎明期のベネリの先進性を示す要素は、OHVとSVが主力だった1920~1930年代の時点で、多くのモデルにカムギアトレイン式のOHCヘッドを採用していたことである(ワークスレーサーは1930年代からDOHCヘッドを導入)。
その優位性を実証するべく、1923年からイタリア選手権への参戦を開始した同社は、175ccクラスで4度のシリーズタイトルを獲得。そして1930年代に入ると、ヨーロッパ各国のレースでも数々の栄冠を獲得したベネリは、当時のモーターサイクルメーカーが最も重要と認識していたマン島TTに目を向け、1939年に250cc:ライトウェイトクラス制覇を実現している。
なお創業当初のベネリは、極初期の2スト単気筒を除くと、基本的に4スト単気筒を主軸としていたものの、1939年のマン島TTで競ったDKWやモトグッツィなどに刺激を受けたのだろうか、同年12月にはスーパーチャージャー付きのDOHC水冷250cc並列4気筒レーサーを公開。最高出力45hp、最高速130mph(約209km/h)という数値は、当時のライバル勢を圧倒していたが、第二次世界大戦の勃発によって以後のレース活動は休止。
そして1949年から始まった世界GPでは過給器が禁止されたため、ベネリが生んだ革新的な並列4気筒車は、一度もメジャーレースを戦わずに姿を消すこととなった。
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