トライクの運転に自動車免許/二輪免許が必要? 交通ルールや維持費はクルマやバイクと違う? 【元警察官が解説】
オートバイより安定性が高く、転倒リスクが少ない乗り物として、注目が集まっているトライク。「ノーヘルでOK」とか、「クルマの免許で乗れる」といったウワサを聞くこともあるが、これは本当だろうか?そんなトライクにまつわる疑問について、根拠となる法令を交えて、元白バイ警官の宅島奈津子さんが解説する。
●文:[クリエイターチャンネル] 宅島奈津子
みなさんは、トライクという乗り物をご存知でしょうか。ライダーであればほとんどの方が、目にしたことがあるかと思います。なかには乗ったことがある方も、いらっしゃることでしょう。
このトライク、語源はトライサイクル(三輪の乗り物)の略称であり、定義としては、オートバイのようなまたがるタイプのシートにバータイプのハンドル、そしてドアがない三輪の乗り物だと言われています。
日本でもっとも普及していたのは、1930年代。この頃はドア付きの「オート三輪」として流通していましたが、高度経済成長期に入るや否や、乗用車が普及し始めたことで、実用車としてのトライクのニーズは減少。流通量も激減し、目にすることもほとんどなくなりました。
その後、1970年代あたりからハーレーのカスタムトライクが一部愛好家の中で流行し始め、趣味的な乗り物としてのニーズが増加していきました。現在では、大小さまざまなタイプのトライクが流通するようになり、主にレジャー向けとして注目を集めています。
トライクに必要な免許は車種によって違う
トライクの運転には、二輪免許が必要な場合と、普通自動車免許があれば運転できる場合とがあります。トライクでもオートバイとみなす要件は、道路交通法で下記のように定められています。
道路交通法施行規則第二条の表備考の内閣総理大臣が指定する三輪の自動車は、次に掲げるすべての要件を満たすものとする。
車体の構造上その運転に係る走行の特性が二輪の自動車の運転に係る走行の特性に類似するものとして内閣総理大臣が指定する三輪の自動車を指定する内閣府告示
- 三個の車輪を備えていること
- 車輪が車両中心線に対して左右対称の位置に配置されていること
- 同一線上の車軸における車輪の接地中心点を通る直線の距離が四百六十ミリm未満であること
- 車輪及び車体の一部または全部を傾斜して旋回する構造を有すること
ざっくりまとめれば、下記のようになります。
- 二輪免許が必要:並行に並んだ左右のタイヤ幅が狭く、曲がる際に車体が傾く
- 普通自動車免許が必要:並行に並んだ左右のタイヤ幅が広く、曲がる際に車体が傾かない
ヘルメット着用義務も、この分類に依存します。たとえば、ヤマハ トリシティであればオートバイ寄りなので、ヘルメットが必要、BRP カンナムスパイダーであればクルマ寄りなので、ヘルメット不要なのです。とはいえ、いざというときを考えれば、どちらにしても被っていた方が安心ですね。
運転するうえでの交通ルールはほぼオートバイと一緒
ナンバープレートを取得できるトライクであれば、もちろん公道走行可能です。一般道はもちろん、50cc超であれば、高速道路も走れます。これは道路運送車両法上、50cc超~250cc以下のエンジンを搭載していれば、「側車付軽二輪」いわゆるサイドカー扱いとなるため。125ccでもOKというのは、うれしいですね。
参考までに、道路運送車両法上におけるトライクの分類を下記に掲載しておきます。
- 50cc以下:原動機付自転車
- 50cc超~250cc以下:側車付軽二輪
- 250cc超:側車付オートバイ
ただし、高速道路で許される最高速度は時速80km/hまで。クルマやオートバイと比べると、若干遅いということは覚えておきたいところです。また、いくら50cc超であればトライクで高速走行できるとはいえ、道路交通法第23条で定められている、最低速度50km/h以上のスピードを出せることも必須。125cc未満だと厳しい場合もあるので、一般道で最高速度を確認しておきましょう。
高速道路の料金は、道路運送車両法の区分をベースにしているため、オートバイと同じ扱いです。ちなみに1999年に道路運送車両法が改正されるまでは、トライクは三輪幌型自動車という、クルマと同じ扱いでした。2024年11月現在では、新車登録したり、ナンバープレートを取り直す分には、側車付軽二輪/側車付オートバイ扱いになるので、あまり気にしなくても大丈夫です。
トライクの維持費はオートバイに近い
自動車税は、道路運送車両法の区分に基づくため、排気量によって変わるオートバイと一緒。税額は2000~6000円程度となっており、クルマよりも安くなっています。重量税、自賠責保険は、もちろん排気量に関係なく必要です。
車検については、前述した道路運送車両法に準拠します。そのため、250cc超であれば車検が必須になります。また任意保険も、排気量相当のオートバイと同じプランに加入できるので、クルマよりは若干安価にしやすいです。
気軽に乗れるが注意点もあり
クルマとは違い、トライクには、車庫証明が必要ありません。ただしオートバイと比べれば、幅が広いのは確か。当然、駐車場を確保しなくてはなりません。路上駐車は言うまでもないですが、オートバイ向けの駐輪場への駐車も、基本的には禁止となっています。きちんと、クルマ用の駐車場に駐車しましょう。
バイクよりも安定した走りが楽しめて、クルマよりも気軽に乗れるトライク。ルールやマナーをしっかり守りながら、楽しんでくださいね。
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