カワサキ最後の2ストレプリカ 1989年カワサキ「KR-1S/KR-1R」【柏 秀樹の昭和~平成 カタログ蔵出しコラム Vol.4】

●文/カタログ画像提供:[クリエイターチャンネル] 柏秀樹 ●外部リンク:柏秀樹ライディングスクール(KRS)
ライディングスクール講師、モータージャーナリストとして業界に貢献してきた柏秀樹さん、実は無数の蔵書を持つカタログマニアというもう一つの顔を持っています。昭和~平成と熱き時代のカタログを眺ていると、ついつい時間が過ぎ去っていき……。そんな“あの時代”を共有する連載です。第4回は、1989年にフルモデルチェンジしたカワサキ「KR-1S/KR-1R」です。
8kg重い、でもなぜか軽く感じた
跨った瞬間のこのバイクの車体の軽さに驚いたことがつい昨日のようです。今回ご紹介する1989年4月発売のKR−1SとKR-1Rはカタログ数値の乾燥重量が131kgと250ccスポーツモデルとしてかなり軽いのです。
とは言っても1980年代後期はレーサーレプリカ激戦時代だったから各社お互いをよく研究していて、ライバル他社と数値的に大差ないデータでしたが、この軽さの源は取り回しが軽いのか、走り出して軽いのか、あるいはその両方なのか。そこがまず知りたいところでした。
Eボックスフレーム、スーパーサーキットポテンシャルといった文字が目を引く。
実は低重心とマスの集中に非常にこだわったようで取り回しだけでなくコーナーで攻め込んだ時の軽さが両立していたのです。この軽さの論点は以下のようになります。
頼りないハンドリングによって感じる軽さではなく、前後輪とも接地感が強く前後サスのストローク感も掴みやすい中での凛とした車体の適切な剛性配分による軽さ。踏み固められた土台に立っているような安心感によるものでした。
タンデムツインの印象が強いかもしれないが──
そもそもカワサキの公道走行用水冷2ストローク2気筒の歴史は1984年のタンデムツインKR250(KR250A前期)から始まります。翌年1985年には低中速回転域を充実させるKVSS装備のKR250S(KR250A後期)を発売し、1988年には前後ラジアルタイヤを装備した並列2気筒のKR-1(KR250B)に。そして1989年にはKR250Cの型式を持つKR-1Sと、クロスミッション/強化クラッチスプリング/φ35mm大型キャブレター装備のスポーツプロダクション仕様車KR-1Rをリリースしました。
フロント17インチ/リヤ18インチのキャストホイールにはラジアルタイヤを組み合わせ、フロントブレーキはφ300mmダブルディスクに対向4ポットキャリパー、リヤブレーキにはフルフローティングディスクを採用。KR-1SはPWK28キャブレターだったが、KR-1RはPWK35を装備した。
前傾50度シリンダーを持つ初代KR-1の乾燥重量123kgよりもKR-1SとKR-1Rは8kg重量アップしています。それでも軽く感じてしまうのです。
この軽さを後押ししたのはもちろんエンジン系の熟成です。
ケースリードバルブ式エンジンはカーボンファイバー製リードバルブを採用してレスポンスの向上を図り、チャンバー形状の見直しなど多岐にわたる改善でサーキットでの性能向上を果たしながらワインディングや市街地での走りを容易にしています。
より低い回転からトルクが充実し、ハイペース走行には9000rpmを維持する走りが必要だった初代に対し、KR-1SとKR-1Rは8000rpm前後からパワーの伸びがさらに充実。熱対策としてデフリックコートという低フリクション化したピストンの採用や、排気デバイス(KIPS)の電子制御化など細部にわたるエンジン系の扱いやすさの充実が「軽さ」をより増強させたのです。
新型フレームやリザーバータンク付きリヤサスで刷新
初代KR-1はヤマハTZR250に似た車体レイアウト+3本スポークキャストホイールにパラレルツインという構成で登場しましたが、わずか1年少しの間に大きく成長して、まさに別物のKR-1SとKR-1Rへ生まれ変わっていたのでした。
KR-1S/KR-1R 主要諸元■全長2005 全幅695 全高1105 軸距1370 シート高755(各mm) 車重131kg(乾)■水冷2ストローク並列2気筒ケースリードバルブ 249cc 45ps/10000rpm 3.7kg-m/8000rpm 燃料タンク容量16L■タイヤサイズF=110/70R17 R=140/60R18 ●当時価格:KR-1S=55万9000円、KR-1R=59万9000円(※ちなみに同年ブランニューモデルとして登場したZXR250は64万9000円だった)
そもそも水冷2スト並列2気筒の歴史は、ヤマハではRZ250から、スズキではRG250Γから始まって、それぞれに独自の進化を遂げました。その後、ヤマハは後方排気型並列2気筒を経ていますが、最終的にヤマハとスズキの両社はNSRと同じ水冷1軸Vツインを選択しました。それが2ストVツインのTZR250RでありRGV250γだったのです。
エンジン幅はVツインより広くなるがエンジン前後長が最小となり、左右対称の吸排気配置ができるなどのメリットがある水冷2スト並列2気筒の歴史は、カワサキがこうした形で有終の美を飾りました。ネイキッドなどの派生モデルにも転用・発展することもありませんでした。
それからしばらくして、ホンダとヤマハとスズキはV型2気筒で、カワサキは並列2気筒という形で水冷2スト250ccレーサーレプリカの終焉を迎えたのです。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(柏秀樹)
1969年の袋井テストコース完成が英国車に負けないハンドリングを生んだ ヤマハ初の4サイクルスポーツ車といえば1970年登場のヤマハスポーツ「650 XS-1」です。XS登場の約1年前にデビューしたC[…]
真摯な取り組みから生まれたスズキの良心だった 日本初のナナハンことホンダ「CB750フォア」に対し、GT750は2年後の1971年9月に登場しました。何に感動したかって、低回転のままスルスルっと滑るよ[…]
日本メーカーによる大排気量車ブーム、その先駆けが750フォア 「威風堂々!」 「世界を震撼させた脅威のスペック!」 「日本の技術力を名実ともに知らしめた記念すべき名車!」 1969年デビューのホンダC[…]
カワサキZ400FXを凌ぐため、ホンダの独自技術をフル投入 ホンダが持っている技術のすべてをこのバイクに投入しよう! そんな意欲がヒシヒシと伝わってくるバイク、それが1981年11月に登場したCBX4[…]
美に対する本気度を感じたミドル・シングル ひとつのエンジンでロードモデルとオフロードモデル、クルーザーモデルまでを生み出す例って過去に山ほどありますけど、プランニングからデザインのディテールまでちゃん[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
待望の4気筒DOHC、クラス最強の心臓部 Z400FXが登場する以前、400ccクラスは2気筒モデルが主流となっていた。メーカー側も「400なら2気筒で十分速い」という姿勢を見せていた時代である。しか[…]
ゼファーの対極に水冷ネイキッドを発想したときの狙いドコロ…… カワサキは1989年に大ヒットとなった「ゼファー」の空冷ネイキッドが圧倒的シェアを拡大するなか、ライバルの攻勢を見据え次世代ネイキッドの模[…]
戦前から続く名門 陸王というバイクをご存知だろうか。戦前から戦後にかけて製造販売され、軍や官公庁でも広く使われた。 1960(昭和35)年に歴史の幕を下ろし、いまやファンの間で伝説となっているが、第1[…]
ベースエンジンは35年間も継続生産されたロングラン単気筒! スズキは1997年、400cc空冷SOHC4バルブ単気筒のトラディショナル・スポーツバイク、TEMPTER(テンプター)をリリースした。 こ[…]
3年はかかる進化を1年以内に詰め込む猛スピード開発! 世界GPを4ストNR500ではなく、2ストローク3気筒のNS500で闘うと急遽方針転換したホンダは、市販ロードスポーツにも2スト路線を敷く宿命とな[…]
最新の関連記事(カワサキ [KAWASAKI])
待望の4気筒DOHC、クラス最強の心臓部 Z400FXが登場する以前、400ccクラスは2気筒モデルが主流となっていた。メーカー側も「400なら2気筒で十分速い」という姿勢を見せていた時代である。しか[…]
ゼファーの対極に水冷ネイキッドを発想したときの狙いドコロ…… カワサキは1989年に大ヒットとなった「ゼファー」の空冷ネイキッドが圧倒的シェアを拡大するなか、ライバルの攻勢を見据え次世代ネイキッドの模[…]
2019年モデル:2本立てで復活 一時は2017年モデルのファイナルエディションを最後に、一部マーケット(インドネシア等)向けを除き、生産が終了していたが2019年モデルから国内でも復活。 空冷773[…]
日本ではブラックボールエディションが標準モデルの位置づけだが…… カワサキは、欧州で新型「Z900RS」シリーズを発表した。日本では「Z900RS SE」および「Z900RS CAFE」、そして「Z9[…]
戦前から続く名門 陸王というバイクをご存知だろうか。戦前から戦後にかけて製造販売され、軍や官公庁でも広く使われた。 1960(昭和35)年に歴史の幕を下ろし、いまやファンの間で伝説となっているが、第1[…]
人気記事ランキング(全体)
待望の「ドア付き」がついに入荷、カラーは全6色展開へ ビークルファンが販売する「アーバントライカー(URBAN TRIKER)」は、フロント1輪・リア2輪の電動トライクだ。以前から存在したモデルだが、[…]
スタイリッシュでコンパクトなボディで、最長9時間記録可能 今回紹介するモデルは、バイク用品やカー用品を幅広くラインナップするMAXWINブランドの、オールラウンド小型ドライブレコーダー「id-C5Pr[…]
ワークマンプラス上板橋店で実地調査! 全国で800を超える店舗を展開。低価格でありながら高機能のワークウエアを多数自社ブランドにてリリースし、現場の作業着のみならずカジュアルやアウトドアユースでも注目[…]
日本ではブラックボールエディションが標準モデルの位置づけだが…… カワサキは、欧州で新型「Z900RS」シリーズを発表した。日本では「Z900RS SE」および「Z900RS CAFE」、そして「Z9[…]
驚異の「8000円台」を実現した戦略的モデル ライディングシューズといえば、高い機能性と防御性能が求められることもあり、高価になりがちだ。しかし、今回スコイコが投入した「MT100」は、税込で8980[…]
最新の投稿記事(全体)
チェック柄シートが復活、継続色はタンク色などを変更、バナナイエロー新登場 ホンダは、タイ&欧州で先行発表されていた「モンキー125」の2026年ニューカラーを発表した。とはいうものの、一部は海外仕様と[…]
新色ホワイト登場、ブラックはフェンダー色やロゴ色を変更 ホンダは、原付二種125ccのレジャーバイク「ダックス125」に新色のパールホライゾンホワイトを追加し、2026年2月20日に発売する。従来あっ[…]
初代CT125ハンターカブにあったマットフレスコブラウンが復活 ホンダ「CT125ハンターカブ」の2026年モデルが登場した。変更点はカラーリングで、上質感のあるアステロイドブラックメタリック、落ち着[…]
スタビライザーとは?【基本知識と種類】 スタビライザーとは、オートバイの走行安定性を高めるために取り付けられる補助パーツです。特に高速走行時やコーナリング時に、車体のふらつきやねじれを抑え、快適かつ安[…]
ブラウン系のシートを採用するニューカラー ホンダは、タイや欧州で先行発表していた「スーパーカブC125」のニューカラーを日本でも正式発表。パールボスポラスブルーは継続しつつ、新たにパールスモーキーグレ[…]
- 1
- 2































