【BMW R12G/Sでツーリング】魔物は現在も生きていた!

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【BMW R12G/Sでツーリング】魔物は現在も生きていた!

〝人喰谷〞と呼ばれる場所がある。そこでは多くの人間が実際に喰われたのだ。42年前、艱難辛苦の末に魔物は攻略された。しかし、現地には未だその牙が残っていたのだ。

●文:ヤングマシン編集部 ●BRAND POST提供:BMW Motorrad

人を喰らう魔境の地へ

人喰谷。名前からして尋常でない雰囲気の地名が富山県の山中にある。

富山県南砺市大鋸屋

その名の通り、この谷は多くの旅人の命を奪ってきた“人を喰う谷”だったのだ。まさに魔物が支配する異界の地。また、この山は日本三大秘境とも呼ばれた川郷・五箇山地域を山中に封じ込めた北側の山岳。言わば日本三大秘境の一つを形成してきた魔物が住む山なのだ。

人喰谷の伝承

その昔、五箇山と城端町を行き来する歩荷達は朴峠を通っておりました。この峠道には“横わたりの難所”と呼ばれる岩場がありました。雪が積もる冬の日の事。歩荷達が横わたりの難所に差し掛かった時、突如大きな雪崩が起きたのです。全ては一瞬。雪崩は歩荷も周囲の木々や大岩も全て飲み込み、深い谷底へ落ちていったのです。春。谷間の雪が融けると、川下の村へ歩荷達が使っていた杖だけが、行方不明になった人の数だけ流れてきました。しかし、谷の雪がすっかり消えても歩荷達はどこにもいなかったのです。谷が歩荷達を食べてしまった…。それ以来、この谷は“シトクライ”と呼ばれ、人喰谷という名がついたのです。

しかし、昭和59年に五箇山トンネルが完成。人々の剣はついに魔物の胴体を貫通。閉ざされた幽玄の秘境からの脱出と利便性の確保に成功したのだ。だが、人喰谷へ続く旧国道は未だ健在。今回は人喰いの魔物の攻略と秘境からの脱出の物語を辿って五箇山の歴史を辿る旅をしてみよう。

秘境から解放された五箇山。だが魔物は今も健在なのだ

昭和59年の事。五箇山の深い山に棲む魔物はついに人々により攻略された。悲願の五箇山トンネルが開通したのだ。これにより、白川郷や五箇山一帯、庄川沿線に住む人々の交通利便性は飛躍的に向上。有史以来長年の間、陸の孤島と言われてきたこの一帯はついに日本海への安全なルートを手に入れたのだ。

白川郷や五箇山地域は日本三大秘境と言われていた地域。現在は東海北陸道により手軽に世界遺産を楽しめる観光地となったが、周囲の山脈を縦貫する道路が建設される以前は、流刑地となっていた程の隔絶の地だったのだ。今回探訪した人喰谷は地域を閉ざしていた北端の山脈に位置する地名。五箇山より砺波方面(日本海方面)へ出る従来の旧五箇山街道の道筋は、かつては朴峠を越すのが主流だった。このルートは険しい山岳トラバースルート。豪雪の降る冬場は雪崩が頻繁に発生し、旅人達を度々飲み込んでいたのだ。

”人喰谷”とはこの事から命名された地名なのである。しかし、梨谷集落より細尾峠(細尾トンネル)を経由して五箇山街道へ至る国道304号の開通により、車両通行が確保され利便性は一気に改善。人喰谷の魔物は次第に過去の存在となったのだ。

昭和59年に五箇山トンネルが開通した事により、庄川沿線の五箇山地区より砺波方面への交通は飛躍的に向上。国内屈指の秘境はついに普遍の地となったのである。

1.5車線混在で、現在基準では完全なる酷道ながら、当時の基準ではごく一般的な山岳路。何とこの道を大型路線バスが走っていたのだから驚きだ。しかし、雪崩・崩落による閉塞も珍しくなく、当時も魔物の影はチラついていた。だが、五箇山トンネルの開通により高規格道路が山脈を縦貫。人喰谷というパワーワードも過去のものとなったのだ。

袴腰林道は全体的にフラットで、軽トラでも十分に走破可能。数か所の洗い越しもあり、短いながらワイルドさ抜群! 車種によるがロードマシンでも走行可能だ。

だが、この地名は余りにも強い。そこで、魔物の様子を確かめに出かたけた訳である。新道が開通すると旧道は閉鎖か廃道となる場合も少なくない。だが、今回の旧道区間は十分な車両通行が可能。旧道ハンターとしては嬉しい限りであるが、その様相は中々に香ばしい。断崖トラバース区間に駒止めはあるが、ガードレールの類は一切無し。路肩には亀裂、路盤には小落石。草は生い茂り車線内へ浸食中。個人的には垂涎の風景ながら、初心者ライダーにとっては泣き確定のルートだ。これでもかつての主要国道なのだから、現在の道路整備のさを改めて実感する。

人喰谷の旧国道は細尾トンネルで南へ。トンネル以降は道幅も広がりイージーモードへ。ここよりトラバースルートは袴腰林道を経て菅沼集落へ至る。

だが、酷道区間は短い。細尾トンネルを抜れば五箇山は目前。…ながら、細尾トンネルの幅に恐れ入る。バイクならともかく、車両は離合不能。このルートはまるごと昭和期の道路遺産だ。とは言え、林道を経由すれば世界遺産観光地の菅沼集落へも近く、その利便性は現在も在。残された理由が何となく理解できる。だが、走ってみてわかった。人喰谷の魔物は現在も健在だ。旧道は人喰谷の深い断崖をトラバースする。かつて多くの人命が失われた場所はすぐ真上だ。魔物は姿を見せていないだけ。現実、すぐそこにまだ潜んでいるのだ。

昭和期でも異世界だった魔境地

五箇山一帯の秘境っぷりは国内屈指だったが、生活する人々は交通困難に対し様々な手段を通じて攻略を図ってきた。現在、地域定番の快走ツーリングロードとなっている飛越峡合掌ラインも、旧五箇山街道が基礎となっている。白川郷より南砺市へ抜ける主要街道となり、国道156号に指定されているルートだが、現在は完全高規格の2車線路で渋滞知らずで里山絶景を抜ける素晴らしい快走路だ。

庄川峡遊覧船
庄川峡の絶景を存分に堪能できる遊覧船は小牧ダム直近より出航。船でしか行けない秘湯として有名な大牧温泉も要チェック。紅葉時期は観光客で大混雑する。

一般的にはこの道を特集するのが王道だろう。ライダー達の往来も多く、ヤエーの絶えない“ヤエー街道”と呼んでも過言でない。だが、一本外れて集落を繋ぐ間道へ入ってみよう。舗装はされているが、昔ながらの一本の狭路が集落を縫って走っている。この道こそ、秘境時代に人々が往来した旧五箇山街道だ。沿線には住宅が建ち並び、念仏道場や神社が点在。合掌造りの建物も点在する。こちらに観光要素は無い。土産物店も無ければお洒落なレストランも皆無だ。

庄川沿線の国道ルートはスノーシェッドが連続する異世界感抜群のルート。沿線2ヶ所に庄川峡を一望できる駐車スポットがある。

だが、郷土の人々が暮らす生きた生活感がある。観光地的には“何も無い”がその何も無いがある貴重なエリアなのだ。特に、生活感抜群の合掌建築は観光集落では中々見られない。飛越峡合掌ラインを走る際は旧街道へも立ち寄ってみると、道路史のコントラストが際立つ旅情抜群の旅になるに違いない。こんな少しの立ち寄りだけで冒険要素が一気に増す。これがまた旅の面白さだろう。

飛越峡合掌ライン
富山県砺波市と岐阜県白川村を結ぶ国道156号線の愛称。沿線には五箇山・白川郷の合掌集落があり、庄川の渓谷風景が美しい快走&絶景ツーリングロードだ。富山・岐阜県の県境付近の飛越七橋の7つの橋は、渡るたびに県が入れ替わる珍しいスポットでもある(画像は合掌大橋)。

飛越峡合掌ラインは庄川沿線のルートだが、この庄川も重要な秘境史の一端を担っている。昭和5年に小牧ダムが完成。庄川峡は水没し、長大なダム湖が形成される事となったのだが、一時期はこのダム湖を利用した水運が砺波方面へ至る物流輸送の主力だった時代もあるのだ。つまり昭和期ですら自動車輸送が困難だった地域。ある意味異世界と呼んでも過言でない場所だった訳である。現在は物流の中心はトラックに引き継がれたが、庄川峡の観光船として運行されている庄川峡遊覧船にその名残が残されている。

庄川沿線の国道ルートはスノーシェッドが連続する異世界感抜群のルート。沿線2ヶ所に庄川峡を一望できる駐車スポットがある。

また、大牧温泉は船でしか行けない秘湯として温泉ファンに人気の温泉宿。これらもこの地域が空前絶後の秘境地帯だった名残を現在に刻む道標なのだ。現在、五箇山の秘境地は気軽に行ける秘境“感”のある場所となった。が、その苦難の歴史は随所に色濃く残る。その名残を辿るのもまた、冒険的要素を含んでいるに違いない。気軽ながらこんな秘境旅も一興ではないだろうか。

庄川峡を見下す平ふれあい温泉センター ゆ〜楽では岩魚丼が密かな人気。甘辛いイワナと同時に頂ける骨せんべいも大変美味だ。

五箇山の文化が見える生きた合掌集落の見学

合掌造り集落といえば真っ先に想像するのが白川郷だろう。世界遺産に登録されており、その規模や棟数においては地域屈指。最も有名な地域だけの事はある。しかし、実際行ってみると観光客の群れ。特に近年は外国人が多く、日本的な情緒や秘境の趣を感じるには全く対極の場となっている。

菅沼集落には現在9棟の合掌造りが現存。比較的小規模な集落ながら近世の生活様式や文化が保存されており、大変濃い見学ができる。かつては硝石(火薬の原料)の生産地としても知られており、当時の生産方法や様式等の資料館もある。集落内をゆっくりと散策するのがお勧めだ。

そこでお勧めなのがこの五箇山。こちらも世界遺産に認定されている地域だが、白川郷とは対照的。規模が小さいせいもあるだろうが、観光客の群れは皆無で、非常に趣と情緒に満ちた地域なのだ。相倉地区の合掌集落は観光地感が多少あるが、この菅沼地区は非常に情緒豊か。この地区は戦国時代に成立した集落と言われている。現在9棟の合掌造り家屋が建っているがこれらは近世から明治期にかけて建設されたもの。

秋色に染まる、世界遺産の五箇山菅沼合掌造り集落

菅沼地区の合掌集落は観光的要素も当然あるが、これらの家屋で実際に住人達が生活しており、地域全体が生活の場でもあるのだ。水田も畑も生活のためのもの。観光客は彼等の生活の場を見学させて頂いている訳であり、同時に今を生きるリアルな合掌集落を見る事ができるのだ。飛越峡合掌ライン沿線でアクセスも良好だ。

【熊】伝統を紬ぐ郷土食

現在、野生獣は希少なジビエとして珍重されている。が、一面ではある意味“珍味”や“奇食”的な扱いになっている事も否定できない。我々が普段食している一般的な“肉”とは牛・豚・鶏。それは全て管理下にて育てられた“製品”とも言えるだろう。しかし古代・中世は当然ながら、近代ですら野生獣は貴重なタンパク源としてごく一般的に食されていたのだ。昭和期ですら町内会行事としてウサギ狩りがあった地区も珍しくない。“山の肉”はその地域独自の文化を象徴する郷土食なのだ。

くま丼(1700円)〜味処 高千夜

この高千代の御主人の本業は猟師。こちらで頂けるジビエは地元の山で御主人が狩り、捌き、調理した逸品。今を生きる五箇山地区の生きた文化財と言っても過言でない。こちらでは熊をはじめ、キジ・鹿・イノシシといった山の肉が賞味できる。中でもこの熊丼の熊肉は柔らかく煮込まれ大変美味。旨味と味は豚や牛とはやはり違うが、大変食べやすくジビエ初心者にも十分お勧めできる。甘辛い味付けと卵の風味が実に合う。ご飯大盛でもペロリと完食。熊肉がこんなに美味いものだった事に驚くに違いない。

味処 高千代
富山県南砺市小原697-3
0763-67-3118
11:00~20:00 ※平日14:00~17:00頃までは昼休憩 不定休

また、貴重な熊の脂身を刺身で頂く事もできる。丼に刺身に一品に鍋。メニューの種類も非常に豊富だ。スーパーの肉と入手経路の違いはあれど同じ動物の肉。当然といえばその通りなのだが、山の恵みの素晴らしさを改めて感じる事ができる。

近年、害獣被害が大変目立ってきた。山の獣達は保護対象であると同時に、従来は明確に狩りの対象でもあったのだ。我々はそのバランスの上に生活させて頂いてきた訳である。五箇山のように平地が少なく、自然環境の厳しい地域であれば山の恵みは死活問題に直結する。ここは秘境山中の一軒店ではない。国道沿いの路面店で気軽に立ち寄れる。しかし、五箇山の郷土文化とその精神の一端を自身の舌で体験できる大変貴重な店に違いない。

魔境が魅せる幻想風景

人喰谷をトラバースする国道304号の旧道区間は豪快な山岳風景が魅力だが、大展望を望む箇所は大変少ない。が、細尾峠からは平野部を一望する素晴らしい展望が望めるのだ。場所は細尾トンネル北口坑門目前。南砺市街や砺波平野の一部が眼下に広がる感動のパノラマだ。砺波平野一望の散居村展望台の様相に似ているが標高はこちらの方が高く、展望感は圧倒的。ちなみに散居村展望台より望む地域も一部被っており、同じ場所を方角違いで望む場所とも言える。

散居村展望台より望む砺波平野の夕景
富山県砺波市五谷160

晴天の下、青空と共に見渡す地平線も素晴らしい解放感だが、お勧めは黄昏時。水田に反射する夕陽は幻想感抜群! 細尾峠は旅人達の苦難が染みついた魔境の中心地。魔境より望む絶景はまさにリアル異世界と呼んでも過言でない。この道は現在も困難の伴うルート。人喰谷の魔物は現在もなお生きている。しかし、恐怖と畏れが支配する魔界ではない。きまぐれながら、旅人に感動のご褒美も見せてくれるのだ。これは自分で考え組み立てた“旅”を志す人々にのみ楽しめる秘景でもあるのだ。


【旅の相棒】BMW R12G/S

BMW R12G/S

80年代のラリーマシン的フォルムが印象的なアドベンチャーモデルだ。前輪サイズが21インチである事に注目。R80G/Sを彷彿させる最新鋭のレトロエンデューロマシン。そう、本格的オフロードを存分に楽しめるマシンなのだ。特筆すべきはアジャスタブルな前後サスペンション。調整によりマシンの性格がグンと変わってくる。重量級のマシンながら、ガレ場狭路や藪漕ぎも難なく走破。これは相当に楽しい!

[SPEC]

  • 全長:2250 全幅:970 全高:1256 シート高:860(各㎜)
  • 車両重量:229㎏
  • エンジン:空油冷4ストDOHC4バルブ水平対向2気筒 総排気量1170㏄
  • 最高出力:109PS/7000rpm
  • 燃料タンク容量:15.5ℓ
  • 変速機:6段リターン
  • タイヤサイズ:F=90/90-21R=150/70R17
  • 税込価格:245万4000円〜

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