【カスタムハーレー試乗インプレ】スタイルだけじゃない! 魂が宿る格別の佇まい<SUNDANCE SUPER PANHEAD>

これほどよく走るハーレーダビッドソン・パンヘッド・ハイドラグライドがあるなんて……!? しかし、その正体は違った。スタイルだけでなく、ヴィンテージハーレーの持つ味わい深さまでもがそこには息づいている。
●文:青木タカオ ●写真:磯部孝夫 ●BRAND POST提供:サンダンスエンタープライズ
現代の技術で、よりハーレーらしく
ロングストロークで、慣性モーメントの大きい重たいフライホイールだからこそ生まれる、ゆったりとしながらもトルクフルな回転フィール。それは乗り手に穏やかさをもたらし、どこまでも走り続けたくなる衝動を呼び覚ます。
タコメーターは備わっていないから、正確な回転数はわからないが、トップギヤ5速でおそらく2000rpm前後だろう。タンクコンソールに埋め込まれた速度計を見ようと、前方が見渡せなくなるほど大きく視線を落とし、針の位置を確かめてみると、55mph付近を指していた。高速道路のこの区間では、制限速度よりやや遅く、エンジンも車体もまだまだ余裕がたっぷりとある。
右手のスロットルグリップを開ければ、ドコドコドコっと分厚いトルクが湧き上がっていく。アクセルに応える鼓動が、胸の奥底を刺激する。じつに気持ちよく、至福のひとときとさえ思えてしまう。
本来、不安定であるはずの二輪車を操り、走行風をまともに受け、振動に揺さぶられているにも関わらず、心満たされるのだから不思議としか言いようがない。オートバイに乗った事がない人には説明のしようがないのかもしれない。それでも走るほどに昂ぶるこの感覚は言葉では伝えきれない、心に響く心地良さなのだ。
一見しただけでは、多くの人は『ハイドラグライド』だと認識するだろう。油圧式のフロントフォークを初めて装備した1949年式か……。いいや違う、太いラインが弧を描きつつ力強く流れ、タンクエンブレムはハーレーダビッドソンのロゴにVを重ねたものであるから、50年代半ばのデザインエッセンスが踏襲されたものだ。優雅な曲線美を見せるパンヘッドのロッカーカバー、間違いないだろう。 しかし、これはそうではない。
ジャンルを問わず、さまざまなクリエーションにおいて、オリジナルを凌駕するほどの価値を生み出すことがごく稀にある。サンダンスのスーパーパンヘッドは、そのうちの一つと言っていい。
ハーレーの専門店がまだほとんど存在しない1982年に、東京・高輪で創業したサンダンス。代表のZAK柴﨑氏は「ハーレーだからこんなもの」「ショベルだから故障して当たり前」と言われる風潮に、正面から立ち向かった。
顧客のハーレーたちのコンディションを整えて修理するだけにとどまらず、自らもFXSローライダーに始まり、ナックルやパンヘッド、XR1000などを所有し、すべてをバラバラにしてから幾度となく組み直した。情報や部品が乏しかった時代に、ビンテージハーレーに対する高い技術力と知識を豊富に獲得していった。
頻繁にオイル漏れを起こし、次々と緩むボルトを何度も締め直さなければならないショベルヘッド以前のエンジンと向き合っているうちに、ZAK柴﨑氏はこう考えるようになる。
「現代の技術で、よりハーレーらしく!」
旧き良き時代のスタイルでありながら、現代的な性能を追い求めた。その結果、純正オリジナルの良さを活かしつつ、魅力をもっと高めた改良版を生み出す。
1988年、排気量1450cc(88ci)のコンプリートエンジンを搭載したスーパーパンヘッドが誕生した。精度や強度、耐熱性を向上したダグタイル鋳鉄のビッグボア・シリンダー&ピストンキットをはじめ、ベリリウム銅によるバルブガイドやテフロンラバー製のシールが組み込まれている。
乗り心地に優れ、クルージング中に大きな段差を乗り越えても車体の挙動が乱れない。シャシーはソフテイルがベース、つまりトランスミッションの下に、ショックアブソーバーを水平配置する。
昨今、旧車をベースにレストアとモデファイを施したレストモッド、現代の車両をレトロなスタイルに仕上げたレトロモッド、あるいは旧き良き時代の車両を現在の技術で製作、イチから再現するリバース・エンジニアリングが四輪車を含めて業界を賑わせているが、サンダンスではまだそんな言葉が存在していない頃から製作に取りかかり、発表してきたのだから驚きを隠せない。
その集大成となったのが、「当時の技術者が今の時代に生きていたら、きっとここをこうしたかったに違いない」という想いで2000年に完成させたスーパーリアルナックルであり、以前、試乗レポートをお届けした通り、卓越した完成度を誇り、非の打ちどころがない。
スーパーパンヘッドはそれに至る系譜であり、丸ごとすべてを手がけたコンプリートエンジンを積んでいることを考えれば、エポックメイキングな一台である。
しかし、今から考えれば意外でしかないが、80年代に発表した当時はメディアをはじめ周囲からの評価は低かったとZAK柴﨑氏は振り返る。昨今ならどうだろうか。たとえば四輪車なら、旧いスカイラインやトヨタ2000GTが現代の技術で再現され、好評を博している。
そうした潮流を見る限り、サンダンスがスーパーパンヘッドを生み出したのは30年以上も前のことで、時代の先を行きすぎたのかもしれない。
スタイルだけでなく、ヴィンテージハーレーが持つ息吹さえも忠実に再現された。穏やかなフィーリングの中に、どこからでも力強いトルクが湧き出るのは、ハーレーらしさをより強調しようというZAK柴﨑氏によるチューニングの賜物だ。ブレーキは前後とも制動力、タッチ、コントロール性に優れ、フロントフォークもしなやかに動く。リヤサスがよく働き、路面追従性に優れるのも特筆すべきだろう。走りの性能、安全性を現代の水準に引き上げている。
ビンテージな雰囲気と飽きのこないスタイル。分割式の燃料タンクやハーフムーン型のフットボードなど、細部に至るまで往年の面影を追求している。シャシーはエンジンをリジッドマウントするソフテイルフレームをベースにしている。三角スイングアームやオイルタンクにソフテイルの名残りが僅かながらにあり、よく見ればなるほどと合点がいく。オーナー:松本拓也
スーパーパンヘッドに試乗した青木タカオを前に、開発当時の貴重な話をサンダンス代表ZAK柴崎さんから聞き出すのは、ウィズハーレー巻末連載コーナー「乱入チョッパージャーナル」担当のマコナベさん。動画でお届けいたしましょう!
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