【スズキGSX-S1000GX・海外試乗インプレッション】スズキ初の電サスは、ありとあらゆる道に効くッ!!
11月のミラノショーでアンベールされたばかりの、スズキGSX-S1000GXの世界プレス試乗会がポルトガルのリスボンで開催。2日間に渡り、市街地からハイウェイ、ワインディングとあらゆるシチュエーションを走り込んで、スズキ初となる電子制御サスペンションがいかほどなのかを確かめてきた。
●文:谷田貝洋暁 ●写真:スズキ(Ula Serra、Amylee Photography)/谷田貝洋暁 ●BRAND POST提供:スズキ二輪
GTよりもスポーティで無印に近いエンジン特性
不思議だ。GSX-S1000GX(以下GX)で走り始めた瞬間、頭を捻ってしまった。このGXはスポーツツアラーのGSX-S1000GTがベースで、シリーズ共用のエンジン、フレーム、スイングアーム、燃料タンクやシートフレームも基本的に一緒と聞いたが、他のGSX-Sシリーズ同様、やはりエンジンフィーリングが異なっているのだ。
シリーズの中では比較的吹け上がりが穏やかなGTとは違い、レスポンスはシャープではあるが、カタナほどのジャジャ馬感はない。一番近いのは無印のGSX-S1000だが、このGXは、よりスロットル操作への応答がスムーズで扱いやすい印象を受けるのだ。…しかし、開発陣によればGSX-Sシリーズとカタナのエンジンは吸排気系、ECMのマップ含めて全車共通仕様だというから不思議でしょうがない。
今回の世界プレス試乗会には、 17人もの開発スタッフがスズキ本社より渡欧。テストライダーも参加していたので、このスロットルレスポンスの疑問をぶつけてみたところ、テストライダーの間でもこのフィーリングの違いは議論されており、どうやら“吸気効率”の違いに秘密があるらしい。と言ってもエアクリーナーボックスではなく、それ以前の部分。フロントカウルやタンクなどの壁面が空気抵抗の違いを生み、それぞれのエンジンフィーリングになっているという。
なるほど、確かにGXのフロントカウルにはGTにはない導風のためのエアスクープが設けられており、少なからず吸気効率は上がっている。これがGXならではのスポーティなエンジンレスポンスにつながっているというわけだ。またこのGXではスロットルポジションセンサーにも改良が加えられ、自然なスロットルグリップの遊びを設けたとのことで、スロットル操作に対するスムーズな吹け上がりも手に入れたようだ。
スズキ車で最先端の電子制御を満載
GSX-Sシリーズとの違いというと、電子制御もこのGXで大幅に進歩することになった。最初にGSX-Sシリーズ初の6軸IMU搭載。これによりトラコン、ABSなどがコーナリング対応型となり、Vストローム1050に搭載されていたスロープディペンデントコントロールなどの電子制御技術が移植されている。
ただ最大のトピックはやはり、スズキの二輪車として初搭載となる電子制御サスペンション。しかも即応型のセミアクティブタイプだ。電子制御サスペンションのメーカーは、操る楽しさを追求し接地感の高い独自のスカイフック制御を開発した日立アステモのショーワEERA。このスカイフック制御をベースにスズキが独自の味付けを施している。
実際に走らせて感じるのはレンジの幅の広さというか、モードによる車体のキャラクターの変貌ぶりだ。他社にも似たようなコンセプトで電子制御サスペンションのモードを切り替えられるモデルはあるものの、GXほどのキャラクターの違いは感じたことがないのだ。
GXでは、減衰力モードが「H(ハード)」、「M( ミディアム)」、「S(ソフト)」の3段階で変えられるのだが、「H」にすると伸び圧とも減衰力が強めで、GSX-Sシリーズの根幹である直4エンジンを存分に味わえるスポーツ走行に向いたキャラになる。一方、真逆の特性の「S」にすると、アドベン チャーバイクのようなピッチングモーションの大きなバイクへと変化する。
この「S」モードでの動きも秀逸で、普段は前後150㎜の大きめなストロークを活かした快適な乗り心地なのだ が、コーナーにツッコミ過ぎた場合や 飛び出しなど、ハードブレーキングを必要とするような場面ではいきなりス トロークを使い切るなんてことはなく、初期の沈み込みからしっかり押し返してくる特性へと瞬間的に変化する。
電子制御でキャラ変の違和感や不具合を排除
GXの電子制御サスペンションの制御は、6軸IMUで減速Gを見ながら状況に合わせて減衰力を調整している。ここまでなら他のバイクにも見られる仕組みだが、GXの場合、場面場面での減衰特性の変化が顕著だ。特に件の「S」モードでは、あまりの変化に慣れないうちは“お、おっ!?”と思わず声が出てしまうくらい。最新の電子制御サスペンションの減衰特性のレンジの広さを使って、走りのキャラクター変化の限界に挑戦したというところか。しかも通常走行時には“制御されている”を感じさせないにもかかわらず、急ブレーキなどの緊急時はガッツリ制御を入れてライダーをアシスト。そんなイメージの味付けなのだ。
しかもリヤショックにはオートレベリング機能も備わっている。これは走行中も適時プリロード調整を行う機能で、パッセンジャーを乗せようが、パニアケースを取り付けようが、バイクが走り出せば勝手に車体姿勢を取り直してくれるもの。コーナーを攻めるような場合はオフにした方がダイレクト感があって走りやすいように感じたが、ロングツーリングになると話は別。19Lという大容量の燃料タンクだけに、ガソリンの増減で14kg近くも重さが変わる。乗り手は無意識のうちにバランスを取っているわけだが、オートレベリングがあればそんな苦労がなくなるというわけである。
さて総評。このスズキの新型GXは、あくまでGSX-Sシリーズとしてのスポーティな直4エンジンやコンパクトな車体を生かしながらも、6軸IMUやスズキ初の電子制御サスペンションなどで走りのステージを大幅拡大。しかも、峠、旅、街乗りといった各ステージでの走りを電子制御でかなり高いレベルで調和させた万能マシンだったのだ。
スズキGSX-S1000GX
※本記事はスズキが提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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