カスノモーターサイクルは創業49年、AELLAはブランド設立32周年を迎えて【ファクトリーマシンへの憧憬から始まったスペシャルパーツづくり】
京都のカスノモーターサイクルが自社開発・製造のカスタムパーツブランド『AELLA』を立ち上げたのは1991年のこと。2023年創業31年をむかえたアルミ削り出しスペシャルパーツメーカーは、工場も新設。新たに5軸マシニングセンタも導入し、より緻密なものづくりへの道を探究しようとしている。
●文:ミリオーレ編集部(村田奈緒子) ●写真:米村栄一、カスノモーターサイクル ●BRAND POST提供:カスノモーターサイクル
レースの知見と経験を活かしたスペシャルパーツづくり
カスノモーターサイクルの創業者である糟野雅治さんは、1970年にMFJ全日本ロードレース選手権250ccクラスでチャンピオンを獲得するなど、数々のレースに参戦。糟野さんが17歳の頃の1966年から1993年の27年間に渡るレース経験がベースとなり、『AELLA』は生まれた。
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「市販レーサーを改造したい、自分の部品をつくりたいという思いが募って、まず機械を買った」と、糟野さんは『AELLA』創業当時を振り返る。納得のいくライディングをかなえるためのパーツが欲しいが、見つけることができないもどかしさ。「ないなら、じゃあ自分たちでつくればいい」というシンプルな思いがブランドを生み出したのだった。
当初は至極個人的な熱意からだったが、やがてレースシーンに必要な精度の高い操作性をかなえるパーツや、機能だけでなく美しさも兼ね備えたパーツを一般のライダーにも広めたいという思いが広がっていった。こうしたものづくりを続けることが、日本のバイク文化発展の一助になるだろうという希望もあったのだろう。
その希望の灯火はいまだ途絶えず、74歳の大将(糟野さんのことを親しいお客様は皆こう呼ぶ)は、昨年末には『AELLA』の工場を新設した。
レーサーが集い、理想のパーツづくりに邁進
現在ではアルミ削り出しパーツは多くのメーカーが手がけているが、その当時は一個人がはじめたショップが機械を購入してバイクパーツをつくるというのは皆無だった。しかし『AELLA』は、スタート当初から大きな設備投資を行い、精度の高いパーツづくりを展開。現在まで企画開発から製造、販売まで一貫して自社で手がけている。
そして高精度な機械を導入しつつも、バイクのパーツはライダーの身体の一部として機能することを一番と考え、ものづくりにおいては職人の感性を大切にしている。
「とはいえ俺は言葉で表現するのが下手。言葉で伝えられない思いをひたすらぶつけて、汲み取ってもらわないと『AELLA』のパーツは完成しないのよ。だから古屋(『AELLA』の技術顧問)がいなかったら『AELLA』はとっくに終わってたと思う」と、糟野さんは語る。
『AELLA』のキーパーソンである古屋喜一郎さんと糟野さんの出会いは、1981年のこと。古屋さんがカスノモーターサイクルでヤマハTZ250を購入したことがきっかけだった。糟野さんの「古屋がいなかったら『AELLA』は続かなかった」という言葉を、古屋さんに伝えると「そんなしおらしいこと言うてましたか?」と笑った。
「TZ250の購入がきっかけでレーシングチーム『フライングドルフィン』(糟野さんと根本健さんが1972年に設立)に僕も加わって、そこから今日まで続いていて……。社長は天邪鬼だから(糟野さんも自身のことを天邪鬼と言う)、言うことが時々で変わる。だから一つの製品を具現化するだけでも本当に大変でしたよ。今でも大変ですわ。でも、高い精度でものづくりできる『AELLA』の環境が魅力で、とにかくいろいろ覚えたかったし、高精度なパーツを生み出したい。その思いだけでしたね」と、古屋さんは語る。
操作性の向上は疲労を軽減させる。そして、それは安全に繋がる
糟野さんと古屋さんはレーサー業もこなしながら、ビジネスを展開。こうして始まった『AELLA』は、走る、曲がる、止まるという基本機能を徹底的に考慮し、操作性を高めたポジショニングを追求したことで生まれてくる「機能美」を目指したものづくりをブランドフィロソフィとしている。
バイクにおける「機能美」は言葉にするとシンプルだが、実際はとても重要なポイントだ。たとえば適切なポジショニングをかなえるパーツによって操作性が向上すると、それは疲労の軽減にも通づる。疲労の軽減は安全という面ではかなり大きく、これは公道であろうとサーキットであろうと同じこと。すべてはライダーが安全にバイクを楽しめるようにという思いが根底にあり、現在では公道を安全に走ることや日常的スポーツを主な目的とした製品開発も行なっている。
またカスノモーターサイクルがドゥカティやBMWなどのバイクを取り扱うようになれば、海外メーカーのバイクの部品開発を『AELLA』でも展開するようになっていった。
「社長も同じだと思いますが、私の原点はやっぱりファクトリーマシンなんです。時間もお金も度外視してとにかく“良いもの”をつくる。その“良いもの”が、ライダーに楽しみと安心感をもたらすんです。もちろんこれをそのままビジネスにするのは難しいんですが、その思いが原点ですね。
そして具体的に言葉で説明するのは難しいんですが、ドゥカティとBMWのパーツを同じようにはつくれないんですよね。それぞれにブランドの哲学があって、それに見合う美しさのあるパーツでありながらもライダーに喜ばれる機能も併せ持つパーツをつくりたいんです。
新しい工場には、5軸のマシニングセンタも導入しました。これまで以上に覚えないといけないことは多々ありますが、『AELLA』のものづくりがさらなる高みに近づけるよう精進するだけです」と、古屋さんは語る。
生粋のバイク好きが集結している『AELLA』が、今後どのようなプロダクトを展開していくのか。期待は高まるばかりだ。
※本記事はカスノモーターサイクルが提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。