あゝ羽根よもっと大きくなれ!

’20ホンダCBR1000RR-R国内フルテスト【サーキットアタック後編】

待ちわびた”ガチなホンダ”が、「CBR1000RR-R」という最高のカタチで戻ってきた。その本気度を測るべく、ヤングマシン編集部では国内最速のフルテストを敢行した。0-1000m加速/最高速テストに続き、いよいよサーキットへ! RR-Rのサーキットポテンシャルを解き放つ。後編では、テスターを務めた丸山浩氏がRR-Rへの考察をさらに深める。


●まとめ:田宮徹 ●写真:長谷川徹 ●取材協力:TOHOレーシング ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

【TESTER:丸山浩】ホンダらしい乗りやすさは捨ててるね!」 その潔さに思わず感嘆の本誌メインテスター。国内最速フルテストでRR-Rの素性を暴く!

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S1000RRが’19年モデルで新型になったときに、初代と比べてだいぶサーキット志向のマシンになったという印象を持ったのだが、RR-Rから乗り替えると、スポーツツアラーだと錯覚してしまうほど、ハンドルが高くてステップは低いと感じてしまう。 

そしてこれは、ライポジだけでなくハンドリング特性に関しても同じで、S1000RRは直進安定性が高めでありながら、寝かせていったときにバタンとフロントが切れ込む感じ。もっとレーシーな車体ディメンションに変更したいという気持ちになる。 

中回転域での力強さはRR-Rに軍配が上がるとはいえ、S1000RRもコーナーの立ち上がりでは前輪を浮かせながらフル加速することになるが、装着されていたタイヤがハイスペックなメッツラー製レーステックRR・K3だったこともあり、コーナー脱出時の安定感ではS1000RRがRR-Rを上回っていた。前輪が再び着地したときにキックバックがなく、あまり車体を暴れさせずに加速できる。ただし、コーナーをぐいぐい曲がっていくフィーリングはRR-Rのほうが上。スペックを比較すると、ホイールベースはRR-RのほうがS1000RRよりも長いのだが、ライディングから得る印象はその逆だ。 

今回のタイムアタックではRR-Rが勝利を収めたが、これはコーナーを立ち上がるたびに前輪を暴れさせ、あるいはトラクションコントロールの介入を多めに受けながら、「羽根よ、もっと大きくなれ!」と叫びつつライダーが悪戦苦闘しながら得た結果。安定感のあるスムーズな走りで今回はS1000RRも善戦したが、もっとハイスペックなタイヤを履いていたら、同じ路面温度条件下でRR-RがS1000RRに大差をつけて勝利を収めた可能性もあるし、このままのタイヤでも路面温度さえ高ければ、RR-Rが歴代トップタイムを記録できたかもしれない。 

本気のタイムアタックでは気難しさを感じる要素もあったが、ファンライドのペースならマシン挙動をライダーの制御下に置きやすい。

まぁしかし、そういうタラレバを抜きにしても、今回のテストでRR-Rから受けた衝撃はハンパなかった。エンジンに関しては、MotoGPからの転用技術とか最新の電子制御とかではなく、魔法でも使っているんじゃないかというレベル。何度も触れて申し訳ないが、ここまで滑らかなフィーリングで中回転域を犠牲にすることなく、それでいて217.6馬力を発揮するなんて、排気量の偽装すら疑ってしまうほどの衝撃的な”事件”である。 

ルーツとなる’92年の初代CBR900RRから一貫して、ライバルと比べて若干アンダーパワーでも、扱いやすさをはじめとする別の強みを生かせば十分に勝負できるということを証明してきたのがCBR1000RR。しかしRR-Rは、この流れを完全に断ち切って設計されている。それはつまり、「今度のホンダはちょっと手強いぞ」ということでもある。 

もちろん、電子制御は助けてくれる。羽根も役立っているはず。とはいえ、心して対峙するべし!

0-1000m加速/最高速計測とサーキットアタックを終えたCBR1000RR-R&S1000RR。次ページではパワーチェックを行い、カタログ値との差を検証する。

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