他車がまるでツアラーのようだ!

’20ホンダCBR1000RR-R国内フルテスト【サーキットアタック前編】

待ちわびた”ガチなホンダ”が、「CBR1000RR-R」という最高のカタチで戻ってきた。その本気度を測るべく、ヤングマシン編集部では国内最速のフルテストを敢行した。0-1000m加速/最高速テストに続き、いよいよサーキットへ! RR-Rのサーキットポテンシャルを解き放つ。そしてこのとき我々は「レースで勝つ」に懸けるホンダの本気を改めて感じることになったのだ。


●まとめ: 田宮徹 ●写真: 長谷川徹 ●取材協力:TOHOレーシング※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

【TESTER:丸山浩】ホンダらしい乗りやすさは捨ててるね!」 その潔さに思わず感嘆の本誌メインテスター。国内最速フルテストでRR-Rの素性を暴く!

サーキットアタック結果

テストトラック:袖ヶ浦フォレストレースウェイ】都心などから東京湾アクアライン利用時のアクセス性に優れ、ディーラーや用品メーカーなどが主催するサーキット走行会でも頻繁に使われる。多彩な速度域のコーナーあり。■全長:2436m ストレート長:400mm コーナー数:14

袖ヶ浦フォレストレースウェイ ■千葉県袖ケ浦市市林348-1

【CBR1000RR-R:ベストタイム1分13秒359】あちこちでトラクションコントロールを効かせ、ウイリーを制御しながら加速を続ける。6000〜8000回転というのは、多くのサーキットで重要となる領域。ここでの力強さも大きな武器! ※走行モード:モード1(もっともサーキット向け)、装着タイヤ:ブリヂストンRS11

【S1000RR:ベストタイム1分13秒618】最新型はレース志向がさらに強まったと思っていたが、RR-Rと乗り比べるとツアラー的な要素を感じてしまった。ただしそれがもたらす安定感は、ラップタイム短縮につながった。 ※走行モード:RACE、装着タイヤ:メッツラー レーステックRR K3

6000~8000回転でも十分なトルクで車体をぐいぐい前に進めるRR-Rに対して、1万回転から上の領域で一気に加速力を高めるS1000RR。ラップタイムにそこまでの差はないのに、タイムアタック中に記録した最高速には、エンジン特性の違いから10km/h以上の開きが…。

メーカー設定で最もサーキット向けの走行モードでテスト

両モデルとも、写真のようにトラコンやサスなどの電子制御機構を個別に調整またはキャンセルできるが、タイムアタックでは車体にプリセットされているモードのうち最もサーキット志向と思われるセットをそのまま選択。RR-Rの場合、トラコンとウイリー制御は「2」の設定だった。

CBR1000RR-R vs S1000RRサーキットアタック結果

CBR1000RR-Rは、新設計されたコンパクトな4方向スイッチとは独立して、モードスイッチを搭載する。

CBR1000RR-R vs S1000RRサーキットアタック結果

S1000RRは、’19年型での刷新時に左手グリップ根元部にマルチコントローラーが追加された。

ライダーとタイヤに求める性能はかなりハイレベル

舞台を本拠地サーキット・袖ヶ浦フォレストレースウェイに移しても、CBR1000RR-Rの中でまず際立つのは、エンジンが持つポテンシャルだ。 

レッドゾーン突入はRR-Rが1万4500回転、S1000RRが1万4000回転で、両者にほとんど差はないのだが、1万回転あたりから上の狭い領域で力を発揮するS1000RRに対して、RR-Rは6000回転あたりでも十分なトルク感がある。そのため、スロットルの開けはじめでモタつきを感じるようなことは皆無だ。 

まるで、排気量が増したか圧縮比がかなり高めに設定されているかのような中回転域トルクがあり、どのような技術でこれが実現されているのかとても気になる。ホンダの真骨頂とも言える技術陣の本気が宿るエンジンだ。 

これといって扱いにくさを感じるようなエンジン特性ではないのだが、とにかくパワー&トルクに満ち溢れていて、「とりあえずエンジン性能は実現可能な最高レベルまで引き上げて、あとはそれに見合うハンドリングと高性能な電子制御と新機構のダクトウイングでまとめよう」というような開発プロセスがあったのではないかと、勝手に想像してしまうようなマシン。先代までのCBR1000RRには、公道走行も視野に入れた扱いやすさという要素も盛り込まれていて、袖ケ浦のような規模のサーキットを攻めたときにも、その扱いやすさを武器にタイムを削られる傾向にあった。それと比べるとRR-Rは、ライダーに高めのスキルを要求する仕様となっている。 

そしてそれは、ライダーだけでなくタイヤに対しても同様。テスト車両のRR-RにはブリヂストンのバトラックスRS11が純正装着されていたが、エンジンパフォーマンスとのマッチングを考慮するなら、本気でサーキットを攻めるときはよりレーシングスペック寄りの銘柄を選択したい。この日は路面温度が低かったこともあり、コーナーの立ち上がりで前輪が浮きはじめたときに、横方向へスライドしたりキックバックを受けたりすることが多く、タイムロスにつながってしまった。 

袖ヶ浦に配されたコーナーの立ち上がりでは、その多くで前輪を浮かせながら加速していくが、ウイリー制御が介入するので(テスト時は「2」を選択)、浮くといっても地面から10cmもあるかないかというレベルに抑えられている。同じく「2」を選択したトラクションコントロールもそうだが、電子制御の介入は非常に自然なフィーリングで、これは本気のアタックをするときにも大きな武器となる。というよりそもそも、エンジンスペックと路面温度と装着しているタイヤを総合的に考えたら、トラコンやウイリーコントロールをキャンセルしようなんて気はまるで起きない。

車体そのものが持つコーナリング特性は非常にクイック。レーシングマシン的な香りがある。RR-RのSP仕様は、オーリンズ製の電子制御サスペンションを搭載するが、ライダーに変化を感じさせない緻密な制御が実現されている。 

電子制御関連でもうひとつ感じた先代からの変化は、クイックシフターを活用したシフトダウン時のブリッピング。先代は多めに回転をあおる傾向にあったが、RR-Rはこれが最低限となり、そんな細かい部分にも、ラップタイムを少しでも詰めようとする姿勢がうかがえた。

S1000RRとともにサーキットアタックを行ったCBR1000RR-R。次ページも、テスター・丸山浩氏の走行後インプレッションを続ける。

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