
2025年5月24日・25日に開催された全日本ロードレース スーパーバイクレースinSUGOでは、先にもてぎで開幕を迎えていたJSB1000に続き他のクラスも待望の開幕戦となった。最高峰クラスはドゥカティ水野涼の負傷欠場など波乱あり。ウエット混じりのコンディションを制したのは、やはり中須賀克行だった。
●文/写真:ヤングマシン編集部(佐藤寿宏)
水野涼は転倒負傷、鈴鹿8耐に間に合うか?!
アッという間に6月ですなぁ。鈴鹿8耐に参戦するチームは、今週、来週のテストに向けて準備に追われているところです。全日本ロードレース選手権は、まだ2戦しか終わっていませんが、先日開催されたSUGOラウンドもいろいろありました。
まず、開幕戦もてぎで圧勝したDUCATI Team KAGAYAMAの水野涼が事前テストで転倒し、両肩を負傷してしまいます。2度転倒しているのですがテスト2日目に起こった転倒は流れを大きく変えるものでした。
SUGOはアスファルトを全面新しく張り替え、グリップが上がったのですが、その分コーナリングスピードも上がっていました。そんな中で、SPアウトコーナーから旧6と呼ばれる110Rに切り替えしたところで水野はフロントから転倒。ハイスピードのまま、すべっていったマシンは場外に吹き飛び炎上。水野はスポンジバリアの下に潜り込む形で止まり、この時点では大きなケガはありませんでした。
実際、その翌日のテストも走ったのですが、今度は3コーナーで進入ハイサイドで転倒してしまいます。この転倒で負ったケガのためSUGOラウンドは欠場。全治3カ月と診断され、6月の鈴鹿8耐テストはもとより、鈴鹿8耐本番への出場も微妙となってしまいましたが、水野のことですから間に合わせてくれるでしょう。
両肩を負傷してしまった水野涼。鈴鹿8耐には何とか間に合わせてもらいたいところだ。
SUGOのレースウイークはかなり気温が低くなり、雨上がりもあって路面コンディションが事前テストとは変わっていたという声が多く聞かれました。さらに土曜日の夕方から降った雨は、日曜日の朝まで残り、この日、2レース目に行われたST1000クラスの決勝は、雨はほとんど止んでいたものの路面はウエット。乾くと予想しスリックタイヤで賭けに出たライダーもいましたが、SUGOの新路面は予想以上に乾かず大外れとなってしまいました。
そんな難しいコンディションのレースを制したのが亀井雄大でした。亀井は、今シーズンより、新しい環境でST1000クラスにフル参戦。その初戦を見事に制しました。2位には最後に亀井の背後まで迫ったナカリン・アティラットブワパットでした。ナカリンは、アジアタレントカップからCEVを歴て、2017年、2018年にIDEMITSU Honda Team ASIAでロードレース世界選手権Moto3にフル参戦。この頃から雨では目を見張る速さを見せていました。その後、アジアロードレース選手権(ARRC)SS600でランキング3位となり、鈴鹿8耐にも参戦。昨年からASB1000にステップアップ。今年は開幕戦タイでダブルウインを飾りタイトル争いを繰り広げています。アラゴンGPには、マリオ・アジの代役としてMoto2にも初参戦するなど、年齢は29歳と決して若くはないですが実力派タイ人ライダーの一人です。今年はARRCと全日本ST1000で大暴れしてくれそうです。
Moto3時代からウエットでの走りは特に速いナカリン。7月に、もてぎで開催されるARRC第3戦日本ラウンドでも速さを見せそうだ。
絶対王者が強さを見せつける
事前テストから着実にマシンを仕上げた中須賀克行が野左根航汰、浦本修充とのバトルを制しダブルウイン! 中須賀スマイルを爆発させた。
水野の欠場したSUGOラウンドは、絶対王者・ヤマハファクトリーの中須賀克行が強さを見せました。ポールポジションこそBMWを駆るオートレース宇部の浦本修充に譲りましたが、レース1はAstemo Pro Honda SI Racingの野左根航汰、レース2では浦本とのバトルを制してダブルウイン! JSB1000クラス通算90、91勝目を挙げました。
ナオも速かった。ファクトリーBMW M1000RRのポテンシャルを見せつけましたね。フル参戦じゃないのが重ね重ね残念。
JSB1000クラスのレース2はウエットパッチの残る中、スリックタイヤでスタートしたのですが、序盤から逃げようと思っていた野左根はホールショットを奪うものの、2コーナーでウエットパッチにフロントが乗ってしまい無念の転倒リタイア。3レース中2レースでノーポイントを喫してしまいタイトル争いからは大きく遅れることになってしまいます。
ウエットパッチが残っているのが分かると思います。シャッターを押しながら“あぁ~こおたぁ~”と叫んでおりました。好調だっただけに悔しい結果に。
かわってトップに立ったのはDUNLOP Racing Team with YAHAGIの長島哲太でした。不安定なコンディションで様子を見ているライダーの多い中、果敢に攻めていきます。決してペースは速くはありませんが、ブレーキングが深いので、なかなか前に出ることができません。ついに“長島ダム”という言葉が出て来てしまいましたが、現状のダンロップタイヤでテツだからこそできる走りなんですが、それも限界がありました。ダンロップの3年計画の2年目。縦方向のブレーキングに耐えられるものができれば、最後までダムが決壊しないレースもできるかもしれませんね。
レース2序盤にトップを走った#10長島哲太。浦本が先に動き前に出るが、中須賀もこれに呼応し2台がレースをリードしていった。
全日本ロードレース選手権、次戦となる第3戦筑波は、6月21日(土)、22日(日)にJ-GP3クラスのみの開催となります。今年は2レース制なので、土曜日に公式予選とレース1、日曜日にレース2というスケジュール。地方選手権やイベントレースもあるので、ブラッとバイクで観戦して、名物・もつ定を食べるのもオススメです!
その前に、2週連続で鈴鹿8耐に向けたテストもあるので、ドタバタしますが、天気が微妙なんですよねぇ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(レース)
「自分には自分にやり方がある」だけじゃない 前回に続き、MotoGP前半戦の振り返りです。今年、MotoGPにステップアップした小椋藍くんは、「あれ? 前からいたんだっけ?」と感じるぐらい、MotoG[…]
スーパースポーツ好きが多い鈴鹿8耐会場だけに、Ninja ZX-6Rプレゼントが話題に 開催中の鈴鹿8耐“GPスクエア”にあるカワサキブースでは、最新Ninja ZX-6Rを壇上に構え、8月末まで実施[…]
大幅改良で復活のGSX-R1000R、ネオクラツインGSX-8T/8TT、モタードのDR-Z4SMにも触ってまたがれる! 開催中の鈴鹿8耐、GPスクエアのブースからスズキを紹介しよう! ヨシムラブース[…]
今年の8耐レーサーYZF-R1&1999 YZF-R7フォトブース 6年ぶりに鈴鹿8耐へファクトリー体制での参戦を果たすヤマハ。それもあってか、今年の8耐は例年以上の盛り上がりを見せている。 会場のヤ[…]
“モンスターマシン”と恐れられるTZ750 今でもモンスターマシンと恐れられるTZ750は、市販ロードレーサーだったTZ350の並列2気筒エンジンを横につないで4気筒化したエンジンを搭載したレーサー。[…]
最新の関連記事(モトGP)
「自分には自分にやり方がある」だけじゃない 前回に続き、MotoGP前半戦の振り返りです。今年、MotoGPにステップアップした小椋藍くんは、「あれ? 前からいたんだっけ?」と感じるぐらい、MotoG[…]
MotoGPライダーが参戦したいと願うレースが真夏の日本にある もうすぐ鈴鹿8耐です。EWCクラスにはホンダ、ヤマハ、そしてBMWの3チームがファクトリー体制で臨みますね。スズキも昨年に引き続き、カー[…]
クシタニが主宰する国内初のライダー向けイベント「KUSHITANI PRODAY 2025.8.4」 「KUSHITANI PRODAY」は、これまで台湾や韓国で開催され多くのライダーを魅了してきたス[…]
決勝で100%の走りはしない 前回、僕が現役時代にもっとも意識していたのは転ばないこと、100%の走りをすることで転倒のリスクが高まるなら、90%の走りで転倒のリスクをできるだけ抑えたいと考えていたこ[…]
電子制御スロットルにアナログなワイヤーを遣うベテラン勢 最近のMotoGPでちょっと話題になったのが、電子制御スロットルだ。電制スロットルは、もはやスイッチ。スロットルレバーの開け閉めを角度センサーが[…]
人気記事ランキング(全体)
発売当初のデザインをそのままに、素材などは現在のものを使用 1975年に大阪で創業したモンベル。最初の商品は、なんとスーパーマーケットのショッピングバックだった。翌年にスリーピングバッグを開発し、モン[…]
軽量で取り扱いやすく、初心者にもピッタリ 「UNIT スイングアームリフトスタンド」は、片手でも扱いやすい約767gという軽さが魅力です。使用後は折りたたんでコンパクトに収納できるため、ガレージのスペ[…]
まるで自衛隊用?! アースカラーのボディにブラックアウトしたエンジン&フレームまわり 北米などで先行発表されていたカワサキのブランニューモデル「KLX230 DF」が国内導入されると正式発表された。車[…]
LEDのメリット「長寿命、省電力、コンパクト化が可能」 バイクやクルマといったモビリティに限らず、家庭で利用する照明器具や信号機といった身近な電気製品まで、光を発する機能部分にはLEDを使うのが当たり[…]
コンパクトな車体に味わいのエンジンを搭載 カワサキのレトロモデル「W230」と「メグロS1」が2026年モデルに更新される。W230はカラー&グラフィックに変更を受け、さらに前後フェンダーをメッキ仕様[…]
最新の投稿記事(全体)
竹繊維を配合した柔らかく軽量なプロテクターシリーズ 「お気に入りのジャケットを、もっと涼しく、もっと快適にしたい」、そんなライダーの願いを叶えるアップグレードパーツ「バンブーエアスループロテクター」シ[…]
対策意識の希薄化に警鐘を鳴らしたい 24年前、当時、編集長をしていたBiG MACHINE誌で「盗難対策」の大特集をしました。 この特集号をきっかけに盗難対策が大きな課題に そして、この大盗難特集号は[…]
「自分には自分にやり方がある」だけじゃない 前回に続き、MotoGP前半戦の振り返りです。今年、MotoGPにステップアップした小椋藍くんは、「あれ? 前からいたんだっけ?」と感じるぐらい、MotoG[…]
夏ライダーの悩みを解決する水冷システム 酷暑の中、ヘルメットやライディングウェアを身につけて走るライダーにとって、夏のツーリングはまさに過酷のひとこと。発汗や走行風による自然な冷却だけでは追いつかない[…]
コスパも高い! 新型「CUV e:」が“シティコミューターの新常識”になる可能性 最初にぶっちゃけて言わせてもらうと、筆者(北岡)は“EV”全般に対して懐疑的なところがある者です。カーボンニュートラル[…]
- 1
- 2