
1975年、自動二輪免許は小/中/大の3区分となった。当時、多くのライダーはいわゆる”中免”。彼らにとって最上位にあたる400クラスは、性能も装備も向上を続けていった。ここでは、クラス初のDOHC並列4気筒を搭載し、1980年代初頭に始まる4気筒400ccブームを巻き起こしたカワサキZ400FXを紹介する。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
カワサキZ400FX:DOHC4発のスモールマークII
ヨンフォア(ホンダCB400フォア)なき後、400ccクラスに4気筒モデルは不在だった。しかしそれは決して不要だったわけではなく、ユーザーは絶えずメーカーに要望の声を送り続けていたのだ。
そして、その声に応えたのがカワサキだった。来るべき1980年代に向け、次期戦力機としてFXが投入されたのは1979年の春。
心臓部は新設計の空冷2バルブ4気筒。角張ったフォルムに大柄な車体はZシリーズの上級モデルを思わせ、発売されると瞬く間に中免ライダーを虜にした。
最高出力はクラス最強の43psを叩き出し、4気筒ならではのパワーを誇ったが、車重も乾燥で189kg(初期型)とズッシリ重かったため、必ずしも速いとは言えない面もあった。
それでも、当時普及しつつあったキャストホイールに前後ディスクブレーキを備え、始動方式はセルのみとされたのも新時代の到来を感じさせた。
【1979 KAWASAKI Z400FX(E1)】■全長2100 全幅785 全高1125 軸距1380 シート高805mm 乾燥重量189kg キャスター/トレール26度/98mm ■空冷4スト並列4気筒DOHC2バルブ399cc 内径×行程52×47mm 圧縮比9.5:1 最高出力43ps/7500rpm 最大トルク3.5kg-m/7500rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量15L ■タイヤF=3.25H-19 R=3.75H-18
そのエンジンとスタイリングは、ゼファーへと転生する
商品性の高さは、1982年に後継モデルのZ400GPが出てからも併売・再生産されたことからも明らかだった。
もちろん、FXの登場以降は各社から4気筒のライバルが続々と登場し、1980年代の初めにかけてベストセラーを記録。これが起爆剤となってのちの400cc市場は加速度的に急成長、発展を遂げたのである。
なお、FXのエンジンとスタイリングは1980年代の終わりにゼファーへと受け継がれ、転生を果たした。
【最終限定版はビキニカウル付きに】1981年生産の最終型である貴重な限定仕様車E4A。写真の車両は珍しいだけでなく程度も良好、ほぼSTD状態を保っていたのは奇跡的だった。Z1Rをイメージさせるビキニカウルの装着と、各パーツに配色された赤が特徴的である。
空冷DOHC4気筒399ccで最高出力43psを公称。限定E4Aは赤いシリンダーと、黒塗装のキャブレターが特徴的だ。
カワサキZ400FXの系譜
【1979 KAWASAKI Z400FX】初期型は後輪のリム幅が1.85-18と細い。販売開始は赤と黒の2色で銀が加わった。
【1979 KAWASAKI Z400FX】後輪リム幅が2.15になり、ライト下にエンブレムを追加。価格も1万3000円アップ。
【1980 KAWASAKI Z400FX】ヘルメットホルダーを標準装備。ストライプ入りの銀と黒を用意。7000円アップ。
【1981 KAWASAKI Z400FX】グラブバー、トランジスタ点火、セミエア式フォークを採用。価格は3万円アップ。
カワサキZ400FX 派生モデル
【1982 KAWASAKI Z400GP】FXの後継モデルで、液晶メーターやモノショックを採用。48psの高性能を誇ったが、FXほどの人気は得られなかった。■空冷4スト並列4気筒 DOHC2バルブ 399cc 48ps/10500rpm 3.5kg-m/8500rpm■179kg ■タイヤF=90/90-19 R=110/90-18 ●発売当時価格:47万8000円
【1983 KAWASAKI GPz400/F/F II】エアロフォルム外装を一新したGPの後継モデル。1年経たずに400Fへとマイナーチェンジし、54psに。IIはそのノンカウル仕様だ。■空冷4スト並列4気筒 DOHC2バルブ 399cc 51ps/1500rpm 3.5kg-m/9500rpm■178kg ■タイヤF=100/90-18 R=110/90-18 ●発売当時価格:51万5000円 ※緒元はGPz400
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事([連載]青春名車オールスターズ)
ヤマハFZR400:極太アルミフレームがレーサーの趣 ライバルがアルミフレームで先鋭化する中、ついにヤマハもFZの発展進化形をリリースする。 1986年5月に発売されたFZRは、前年に発売されたFZ7[…]
スズキ バンディット400:GSX-Rのエンジン流用ネイキッド 59psというクラス最強のパワーを持ち、1984年に華々しく登場したGSX-R。 レーシーに設定されたこのマシンの心臓部の実用域を強化し[…]
ヤマハFZ400R:ワークスマシンと同時開発 市販レーサーと同時開発したNS250Rがリリースされた1984年5月。 400クラスにも同様の手法で開発されたマシンが、ヤマハから世に放たれた。 FZ40[…]
スズキGSX-R250:過激さ控えめ“アールニーゴー” 1983年のGS250FWでクラス初の水冷DOHC4気筒を開発したスズキ。 しかし、4バルブエンジンの投入は遅れを取り、1987年のGSX-R2[…]
スズキGSX-R400R:ダブルクレードルにフルモデルチェンジ GSX-Rは、1990年に3度目のフルチェンジを敢行。新設計エンジンに加え、φ33mmダウンドラフトキャブや倒立フォークまで備えた。 フ[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
トラディショナルな空冷ネイキッドを横目にカワサキの本能を抑えられなくなった! カワサキには1997年のZRX1100を起点に、2016年のZRX1200DAEGまで20年もの長きにわたり人気の定番・水[…]
コストダウンも意識した大胆なテコ入れ テコ入れを辞書で調べると、"期待した通りに進んでいない物事、停滞している状況を、外部からの刺激や援助で打開しようとする取り組みを意味する表現"とある。そしてこの言[…]
ヤマハSR400試乗レビュー この記事では、ヤマハのヘリテイジネイキッド、SR400の2021年モデルについて紹介するぞ。43年の歴史に幕を下ろした、最終モデルだった。 ※以下、2021年5月公開時の[…]
並列4気筒と2気筒で基本設計/生産設備を共有 ’74年初頭からスタートしたスズキの4ストプロジェクトは、次世代の旗艦として、カワサキZを凌駕する大排気量並列4気筒車と、その車両と基本設計/生産設備を共[…]
動力性能を高めるためエンジンを大幅刷新 カフェレーサー然としたスタイルばかりに注目が集まりがちだが、CB400フォアの魅力はそれだけではない。前任に当たるCB350フォアの不振を払拭するべく、動力性能[…]
人気記事ランキング(全体)
扇風機+冷却ブレートの二重冷却 KLIFEのペルチェベストは、空調ファンと半導体ペルチェ素子を組み合わせた業界初の設計。背中の冷却ブレートが体感温度を瞬時に下げ、同時にファンが服内の空気を循環させるこ[…]
50ccクラスは16歳から取得可能な“原付免許”で運転できるほか、普通自動車免許でもOK バイクを運転するための免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大[…]
使い方は「水を含ませる」だけ。走行風を味方につける冷却アイテム 今回紹介するデイトナの「DI-015 ウェットクールベスト」は、水と走行風を利用した気化熱式のクールベストだ。使い方はシンプルで、ただベ[…]
昭和レトロの世界が広がる神奈川県『中古タイヤ市場 相模原店』 昭和の夏休みって、どんなでしたっけ? 朝はラジオ体操に行って、午前10時頃からは仮面ライダーやウルトラマンの再放送。昼は学校や地域のプール[…]
厳しい残暑、コストを抑えつつ対策したい 暦の上では秋が近づくお盆明け。しかし、天気予報によれば2025年の夏はまだ終わらず、厳しい残暑が続くという。 まだまだ続く汗との戦いには、高機能な冷感インナーが[…]
最新の投稿記事(全体)
トラディショナルな空冷ネイキッドを横目にカワサキの本能を抑えられなくなった! カワサキには1997年のZRX1100を起点に、2016年のZRX1200DAEGまで20年もの長きにわたり人気の定番・水[…]
カブの乗車時にできる”ブーツ傷”から守る! どんなに気を付けていても、できてしまいがちな”またがり傷”。カブ乗りの悩みのひとつを解消してくれるアイテムが登場しました。ハンターカブ/クロスカブ/C125[…]
シュアラスターの「バイク洗車図鑑」 バイクが違えば洗い方も変わる! 車種別の洗車情報をお届けするシュアラスターの「バイク洗車図鑑」。 今回は、2025年モデルで各部のブラッシュアップが行われたトライア[…]
スマホからナビ画面をミラーリング…はまだ運用が不安定 バイク系のライターという仕事柄、最近の多機能メーターの機能や使い勝手を試すことが多い筆者。ナビゲーションシステムに関しては、アンドロイドオートやア[…]
誰でも参加できるユーザーミーティング 全国に300店舗以上の直営店を持つレッドバロンは、そのネットワークで顧客のバイクライフを強力にサポートしてくれる。そのレッドバロンがすべてのライダーに向けて開催し[…]
- 1
- 2