“新型2ストバイク”の市販に期待

「2ストロークエンジン復活の狼煙」カワサキの新世代モビリティが大阪万博で公開【心臓部は開発が進む2スト水素ターボ】

いよいよ開幕する「2025年日本国際博覧会」こと”大阪万博”で、カワサキブースの目玉となるのが未来のオフロードビークル”CORLEO”。バイクのように乗車する四足歩行マシンであることも驚きだが、注目すべきは搭載予定のパワーユニット。なんと、排気量150ccの2ストロークターボチャージド水素エンジンであるというのだ。カワサキは、2ストロークエンジン復活に本気で取り組んでいたのだ!


●文/写真:淺倉恵介 ●外部リンク:”CORLEO”公式サイト

カワサキが提案する、クリーンでファンな未来のパワーユニット=2スト!

世界中から注目を集める大阪万博。この巨大イベントはまさに国家プロジェクトだが、このイベントにカワサキが出展。

そのカワサキブースの目玉となる「2050年を想定したパーソナル水素モビリティ」として展示されるのが、未来のオフロードビークル”CORLEO”だ。

バイクのように乗車する四足歩行マシンであることも驚きなのだが、ヤングマシン的に注目なのは搭載予定のパワーユニット。なんと、排気量150ccの2ストロークターボチャージド水素エンジンであるというのだ。

CORLEOとはラテン語で”獅子の心臓”を意味する。フォルムはライオンや虎といった、猫科の大型動物を思わせる。展示されているコンセプトモデルは、スイングアームピボットを軸にした屈伸運動のデモンストレーションが可能。

旧来の2ストエンジンの”課題”をおさらいチェック

環境意識の高まりとともに消えていった2ストロークエンジン。その最大の理由が、ガソリンと一緒にエンジンオイルを燃焼させるため、排出ガスの成分に有害物質が多く残ることだ。

だが水素を燃料とすることで、理論上の排出ガス成分は水蒸気のみ。ここで気になるのがエンジンオイルの存在だ。いくら水素エンジンでも、エンジンオイルを燃やしていればCO2の発生は避けられない。

その問題を解決するカギが、ターボやスーパーチャージャーといった過給器だ。旧来の2ストロークエンジンは、空気と燃料となるガソリン、さらにエンジンオイルを混ぜた混合気をクランクケース内で圧縮し、シリンダー内に送り込み燃焼させていた。

高速で回転するクランクシャフトを潤滑するために、混合気にエンジンオイルを混ぜ込む必要があるためだ。しかし、ターボを使用して混合気を圧送すれば、クランクケース内での圧縮は不要になる。

CORLEO完成時の透視イラスト。車体前方、前肢の付け根あたりの中心部に2ストロークターボチャージド水素エンジン「O’CUVOID」を搭載。エキゾーストに設けられたターボチャージャーが確認できる。駆動は関節部にアクチュエーターを設ける可能性が高い。(提供:川崎重工業)

バイクの車体構造からインスパイアされたという、スイングアーム構造を採用。カワサキがバイクの開発で培ってきた技術が活かされている。

「ゼロエミッションの2ストロークエンジン」が実現へ

つまり、現在主流となっている4ストロークエンジンと同様に、エンジンオイルを燃やさずにクランクシャフトの潤滑が可能となる。

燃料が水素でエンジンオイルも燃やさない、ゼロエミッションの2ストロークエンジンが実現するというわけなのだ。

2ストロークエンジンと過給器の組み合わせに、違和感を抱く人もいるかもしれないが、2ストターボエンジンは戦車や大型船舶の世界では実用化済みの技術。夢や妄想の世界の話ではないのだ。

CORLEOに搭載するとされるのは「O’CUVOID」と名付けられた発電用の水素エンジンで、川崎重工業では実用化を目指して開発が進んでいるという。

屈伸運動デモンストレーション時の車体姿勢の変化。展示スペースの問題で公開されるのは屈伸運動のみとなったが、コンセプトモデルの可動能力は他にもあるという。

CORLEOの乗車感覚と乗車姿勢は、バイクを意識したもの。操縦はハンドルと”あぶみ”と呼ばれるステップへの荷重のみで行うとされる。インストルメントパネルには、ナビゲーションシステムを搭載予定。

新世代2スト搭載バイクの市販に期待したい!

だが、せっかく開発する新コンセプトのエンジンを、発電機用としてだけ使用することは考えにくいし、先行して技術を転用する可能性が高い。

ライダーとして期待したいのは、やはりバイクのパワーユニットとして搭載されることだ。折しも今年1月、USカワサキが2ストローク復活を示唆するティーザームービーを公開、大きな話題となったのは記憶に新しい。

このところのカワサキのプロモーション戦略を見返すと、まずはティーザームービーを公開し、その後ヨーロッパのモーターサイクルショーで実車を展示。翌年にデリバリーをスタートするというパターンが多い。

新世代2ストロークエンジンを搭載したバイクの市販は、思ったより早い時期に実現しそうだ。甲高いエキゾーストノートとエモーショナルな吹け上がり、“オレたちの2st”が帰ってくる?!

万人が楽しめることも、CORLEOのコンセプトのひとつであるため、タンデムライドも重視。タンデムグリップの造形は、カワサキのバイクデザインの文脈に則ったもの。

カワサキブースに展示される新コンセプトのモビリティ「ALICE SYSTEM」。陸・海・空、すべてのモビリティを手がけるカワサキのノウハウを結集した、新しい公共交通システムの提案。おおまかに言えば、全自動運転の個人用途を意識した公共交通システムとなる。

左はCORLEOのプレゼンテーションを行った川崎重工業株式会社 執行役員の鳥居 敬さん、右はCORLEOのイメージモデルを務めたトレイルランナーの上田瑠偉さん。

カワサキブースは「フューチャーライフ万博・未来の都市」パビリオン内に設けられる。国内12の企業・団体が共同で運営し、カワサキは「交通・モビリティ」の分野を担当する。未来感の溢れる建屋は全長150mという巨大さで、見応えは十分。一度は訪れてみたい。

カワサキが公開しているCORLEOのイメージムービー。自在に野山を駆ける姿に心が躍る。市販目標は2050年とのことだが、一刻も早く走らせてみたい。

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