ドゥカティは、”ドゥカティ・ワールド・プレミア2025”の第5弾として、2024年11月5日(現地時間)にフルモデルチェンジしたスーパーバイク”Panigale V2(パニガーレ ブイツー)” を発表し、同日より開催されたミラノショーで初公開した。大幅に進化を遂げた、その詳細を見ていこう。また同時に発表されたそのネイキッドモデル、”Streetfighter V2(ストリートファイター ブイツー)”も最後に紹介。
●文:ヤングマシン編集部(山下剛) ●写真/外部リンク:ドゥカティ
ミドルSSの究極を目指しフルチェンジ
パニガーレはドゥカティが誇るスーパーバイクで、2018年からはV型4気筒エンジンを搭載し、その戦闘力を高めるとともに車名がパニガーレV4となった。そして2020年には955ccV型2気筒エンジン”スーパークアドロ”を搭載する”パニガーレV2”が登場し、かつては”Lツイン”と称したドゥカティの伝統が継承された。
このたび発表された新型パニガーレV2は、大排気量車のダウンサイジングという従来の方法とは異なり、まったくの新設計として開発された。進化したポイントとしては、とくに890cc水冷90度V型2気筒エンジンを搭載していることが最大のトピックだが、主だった変更点は次のとおりだ。
- 従来型より最大9kg軽量化された新開発エンジン
- 軽量化された新設計フレーム
- 従来型より17kgもの軽量化
- 両持ち式スイングアームの採用
- 電子制御デバイス群の最新化
- 5インチフルカラー液晶ディスプレイの採用
- 新設計されたフェアリングや燃料タンク
パワーよりも軽さと扱いやすさを追求
まずはエンジンからみていこう。水冷90度V型2気筒というレイアウトに変更はないが、排気量は従来型の955ccから65ccも小さい890ccとしている。また、ドゥカティの代名詞的な機構であったデスモドロミック(強制開閉バルブ機構)をやめ、一般的なバルブスプリング式を採用した点も大きな変更だ。
これにより最高出力は155psから120psと35psも減ったが、同時にエンジン単体重量は9kgも軽い54.4kgに仕上がっている。空冷式となるスクランブラーのエンジンと比較しても、約5.8kgも軽い。従来は大排気量エンジンの設計をベースとしていたが、この”V2”エンジンは当初からミドルクラスとして設計され、公道での扱いやすさを念頭に開発された。そのための最優先事項が、必要十分なパワーと軽さだ。
吸気側バルブの作動タイミングを最大52度の範囲で変える可変式とし(IVT)、低回転域でのリニアなトルクと、高回転域での俊敏なスロットルレスポンスを両立した。インテークバルブにはMotoGPマシン同様のDLC(ダイヤモンドライクカーボン)加工を施し、表面の円滑度と硬度を高めている。
IVTにより、新型V2エンジンは3000rpmで最大トルクの70%以上を発生し、3500~11000rpmでは常に最大トルクの80%を維持する。このため全域にわたって扱いやすく、パワフルなエンジン特性を実現した。
シリンダーのバンク角は90度だが、エンジンを後ろへ20度傾けて搭載している。これにより慣性モーメントとエンジンの前後長の増加を抑え、車体の重量配分を最適化。車両のコントロール性を向上させている。
ドゥカティが行った従来型との走行性能比較では、エンジン出力の低下によりストレートでの最高速度は下回るが、それに対してコーナリングスピードが上昇。とくに低速コーナーでのタイム短縮が際立ち、結果として従来型とほぼ同等のラップタイムを刻めるという。
また、新型V2エンジンには『120psバージョン』と『115psバージョン』の2種類が用意される。前者は、5速と6速のレブリミットが11350rpmに設定されるほか、オプションのレーシングエキゾーストを装着した場合は最高出力は126ps、最大トルクは9.99 kg-mまで向上する。
後者の出力値は115ps、9.39kg-mとなるが、より堅牢なコネクティングロッドとフライホイールを装備する。これにより慣性モーメントは12%、エンジン重量も0.51kg増加するが、とくに低回転域におけるパワーバランスの最適化が図られている。また、USB充電ポートなどの電力需要に対応するため、より強力なオルタネーター(発電機)を搭載する。
スイングアームは片持ち式から両持ち式へ
排気系では、エキゾーストパイプが上方へ向かって立ち上がりコンパクトなサイレンサーに接続するアップタイプの2本出しとなった。車体下部にサイレンサーが設置されていた従来型やV4とは一線を画すディテールで、スタイリング全体の印象を大きく変えている。
新型V2エンジンはもちろんユーロ5+に適合し、メンテナンスサイクルはバルブクリアランス点検は30000km、オイル交換は15000kmとしている。
新型V4エンジンを搭載するフレームは、従来型同様に内部をエアボックスとする鋳造アルミ製モノコック式で、エンジンもシャーシとして活用する構造にも変更はないが、0.2kgの軽量化が図られた。鋳造アルミ製のリヤフレームは上部がメインフレーム、下部はエンジンに固定される。また、リヤフレームに装着されるタンデムステップは簡単に脱着できるようになっている。
エンジンにマウントされるスイングアームは低圧鋳造で製造され、部材の厚さを抑えることに成功。従来の片持ち式から両持ち式に変更したことで外観が大きく変わっただけでなく、コーナリングでの安定性とコントロール性を向上させている。
エンジンをはじめとする軽量化は車体全体で徹底され、車重は従来型よりも17kgも軽くすることに成功している。
電子制御デバイス群も最新版にアップデート
サスペンションは、スタンダードモデルがフロントにマルゾッキ製43mmフルジャスタブル倒立フォーク、リヤにKYB製フルアジャスタブルモノショックを装備。Sはフロントがオーリンズ製NIX30 TiNコーティング フルアジャスタブル43mm倒立フォーク、リヤにオーリンズ製フルアジャスタブルモノショックを備える。
電子制御デバイス群は、新型パニガーレV4同様に最新のものにアップデートされた。コーナリングABS、ドゥカティウィリーコントロール(DWC)、ドゥカティトラクションコントロール(DTC)、エンジンブレーキコントロール(EDC)、ドゥカティクイックシフト2.0(DQC)、オートタイヤキャリブレーション、ドゥカティブレーキライト(DBL)が標準装備となり、ドゥカティパワーローンチ(DPL)とドゥカティピットリミッターはSのみに装備される。ライディングモードは、レース、スポーツ、ロード、ウェットの4種から選択可能だ。
また、ラップタイマープロ、クルーズコントロール、タイヤ空気圧モニタリングシステム(TPMS)、盗難防止システム、USBポート、ドゥカティマルチメディアシステム(DMS)、ターンバイターンナビゲーション、グリップヒーターは純正オプションとして用意される。
メーターは5インチフルカラー液晶ディスプレイ(解像度800×600ピクセル)を採用。速度やエンジン回転はもちろん多彩な電子制御デバイス群の作動状況を瞬時に把握するインターフェイスで、公道とサーキットなど走行状況に応じて最適化された3種の表示レイアウトが用意されている。
また、Sにはリチウムイオンバッテリーを搭載し、重量軽減に貢献している。
ライディングポジションも扱いやすさを考慮し変更
外装デザインは、パニガーレV4からインスピレーションを受けたデザインとしながらも、完全新設計であるパニガーレV2に最適化した。ウイングレットを撤廃しつつ、フロントの負荷を軽減。エアロダイナミクスを追求したフェアリングは、シンプルながらもボリューム感のあるボディパネルで構成される。
サイドフェアリングは走行風をライダーの脚部に導くエアダクトを設け、エンジンの放熱を緩和。これはラジエターからの熱気を排出するよう設計されたアッパーベントとの相乗効果をもたらし、高温状態になるサーキット走行や真夏の公道走行において有効に機能する。
燃料タンクもパニガーレV4同様に、ブレーキングやコーナリングにおけるライダーの負荷をサポートするべく人間工学に基づいた形状を追求。ライダーとの接触面から金属パーツをなくすとともに、バイクとの一体感を高める造形を実現している。これによりブレーキングでの腕の負荷、コーナリングで身体をずらす際の負荷も軽減した。
ライディングポジションの最適化も行われ、手首の負担を軽減する高さと角度にセットされたハンドルバー、膝の疲労を抑える位置に設けられたフットペグ、十分な厚みを確保しつつも高さ837mmに抑えたシートなどで、市街地走行からスポーツ走行まで扱いやすい特性とした。パッセンジャーシートはスタンダードでは標準装備だが、Sではシングルシートが標準となる。
車体色は、スタンダードとS、いずれもドゥカティレッド(赤)のみとなる。国内における車両価格はスタンダードが211万9000円、Sが240万8000円だが、導入時期は未定だ。
ストリートファイターV2も同様に進化
“ストリートファイター”は、ドゥカティのスーパーバイクからフェアリングを外し、バーハンドルによるワイドでアップライトな乗車姿勢などによって市街地走行でのパフォーマンスを重視したモデルだ。このたびの新型”ストリートファイターV2”も、新型パニガーレV2と同じエンジンとシャーシ、最新電子制御デバイス群を採用し、外装デザインの刷新を受けてのフルモデルチェンジとなった。
なので、ここでは新型パニガーレV2とのおもな相違点をみていこう。
フェアリングが簡素化されたことなどで、車重はパニガーレV2よりも約1kg軽く仕上がっている。エンジン最高出力と最大トルク、トランスミッションのギヤ比、最終減速比はパニガーレV2と同一だが、スイングアームは30mm延長、リヤホイールトラベルは10mm増の160mm、キャスター角は0.5度増の24.1度、トレールは10mm増の103mm、ホイールベースは28mm増の1493mmと異なるディメンションを持ち、サーキットよりも公道を主眼としたリセッティングが行われた。なお、シート高は1mm高い838mmとなっている。
スタンダードはサスペンションがザックス+KYBとタンデム仕様、Sは前後オーリンズ+シングルシート仕様となること、車体色がドゥカティレッド(赤)の1色のみとなるのはパニガーレV2と同じだ。車両価格はスタンダードが194万円、Sが222万9000円で、国内導入時期は未定だ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ドゥカティ)
スクランブラー誕生10周年。スタンダードモデルと特別仕様車を発表 ドゥカティ スクランブラーは、2014年に登場したネオクラシックシリーズで、1960~1970年代に人気を博したモデルをモチーフとした[…]
熟成度が深まったアドベンチャーツアラー ムルティストラーダはドゥカティのアドベンチャーツアラーで、2021年のフルモデルチェンジで1158cc水冷V型4気筒エンジン『V4グランツーリスモ』を搭載した。[…]
ライダーを様々な驚きで包み込む、パニガーレV4S 5速、270km/hからフルブレーキングしながら2速までシフトダウン。驚くほどの減速率でNEWパニガーレV4Sは、クリッピングポイントへと向かっていく[…]
全日本ロードレース最高峰クラスで外国車が優勝したのも初 全日本ロードレース選手権シリーズ後半戦のスタートとなる第5戦もてぎ2&4レースで、ついにDUCATI Team KAGAYAMAの水野涼[…]
駒井俊之(こまい・としゆき)/1963年生まれ。バイクレース専門サイト「Racing Heroes」の運営者。撮影から原稿製作まで1人で行う。“バイクレースはヒューマンスポーツ”を信条に、レースの人間[…]
最新の関連記事(新型大型二輪 [751〜1000cc])
上級仕様にふさわしい装いのMT-09 SP MT-09 SPの“スペシャル”たる所以はその豪華装備にある。無印MT-09に対して、ラジアルマウントのフロントブレーキキャリパーがブレンボ製となり、前後の[…]
オートマY-AMTを標準装備、レーダーによる支援技術も進化 ヤマハは11月7日、EICMA 2024で初公開した新型スポーツツーリングモデル「トレーサー9 GT+」を日本国内でも2025年夏以降に発売[…]
伝説のロゴが語る歴史 2024年現在でこそ、三角形にブロック体のアルファベットといった趣の、トライアンフロゴ。しかし100年以上続く、歴史あるブランドだけあって、1902年の盾型デザインに始まり、いく[…]
発表から2年で早くも外観デザインを変更! ホンダは欧州ミラノショーで新型「CB750ホーネット」を発表した。変更点は主に3つで、まずデュアルLEDプロジェクターヘッドライトの採用によりストリートファイ[…]
スポーツ性能を高めたBMWフラッグシップスポーツ BMW S1000RRのおもなスペックとアップデート S1000RRは並列4気筒エンジンを搭載するスーパースポーツで、BMWがWSBK参戦を視野に入れ[…]
人気記事ランキング(全体)
第1位:X-Fifteen[SHOEI] 2024年10月時点での1位は、SHOEIのスポーツモデル「X-Fifteen」。東雲店ではスポーツモデルが人気とのことで「とにかく一番いいモデルが欲しい」と[…]
トライクは転ぶ? 素朴な疑問 二輪(バイク)に乗っている方や、四輪(クルマ)に乗っている方から聞かれる質問のひとつが、「トライクって転倒しないの?」というものです。 トライクには3つのタイヤがあり、二[…]
スマホ連携TFTやスマートキー装備のDX ホンダがミラノショーで新型PCX125(日本名:PCX)を発表した。2023年には欧州のスクーターセグメントでベストセラーになったPCX125だが、日本でも原[…]
第1位:MFK-293 ミニフィールドシートバッグEX [TANAX] 本山さん曰く「シートバッグは小/中/大/特大の4つのサイズに分けられますが、中でも容量19〜27Lの小サイズが人気」とのこと。そ[…]
【第1位】ホンダ モンキー125:49票 チャンピオンに輝いたのは、現代に蘇ったホンダのかわいい”おサルさん”です! 初代は遊園地用のファンバイクとして、1961年に誕生しました。以来長く愛され、20[…]
最新の投稿記事(全体)
最強の刺客・マルケスがやってくる前に みなさん、第19戦マレーシアGP(11月1日~3日)はご覧になりましたよね? ワタシは改めて、「MotoGPライダーはすげえ、ハンパねえ!」と、心から思った。 チ[…]
ミドルSSの究極を目指しフルチェンジ パニガーレはドゥカティが誇るスーパーバイクで、2018年からはV型4気筒エンジンを搭載し、その戦闘力を高めるとともに車名がパニガーレV4となった。そして2020年[…]
上級仕様にふさわしい装いのMT-09 SP MT-09 SPの“スペシャル”たる所以はその豪華装備にある。無印MT-09に対して、ラジアルマウントのフロントブレーキキャリパーがブレンボ製となり、前後の[…]
料金所の停車、30cm行き過ぎたらバックが必要に たとえば地下駐車場入り口のチケット発行機や、出口の料金支払い機、こうしたゲートのある料金所で停車するとき、何かの拍子で30cmほど行きすぎると、機械に[…]
第1位:X-Fifteen[SHOEI] 2024年10月時点での1位は、SHOEIのスポーツモデル「X-Fifteen」。東雲店ではスポーツモデルが人気とのことで「とにかく一番いいモデルが欲しい」と[…]
ドゥカティは、”ドゥカティ・ワールド・プレミア2025”の第5弾として、2024年11月5日(現地時間)にフルモデルチェンジしたスーパーバイク”Panigale V2(パニガーレ ブイツー)” を発表し、同日より開催されたミラノショーで初公開した。大幅に進化を遂げた、その詳細を見ていこう。また同時に発表されたそのネイキッドモデル、”Streetfighter V2(ストリートファイター ブイツー)”も最後に紹介。
●文:ヤングマシン編集部(山下剛) ●写真/外部リンク:ドゥカティ
ミドルSSの究極を目指しフルチェンジ
パニガーレはドゥカティが誇るスーパーバイクで、2018年からはV型4気筒エンジンを搭載し、その戦闘力を高めるとともに車名がパニガーレV4となった。そして2020年には955ccV型2気筒エンジン”スーパークアドロ”を搭載する”パニガーレV2”が登場し、かつては”Lツイン”と称したドゥカティの伝統が継承された。
このたび発表された新型パニガーレV2は、大排気量車のダウンサイジングという従来の方法とは異なり、まったくの新設計として開発された。進化したポイントとしては、とくに890cc水冷90度V型2気筒エンジンを搭載していることが最大のトピックだが、主だった変更点は次のとおりだ。
- 従来型より最大9kg軽量化された新開発エンジン
- 軽量化された新設計フレーム
- 従来型より17kgもの軽量化
- 両持ち式スイングアームの採用
- 電子制御デバイス群の最新化
- 5インチフルカラー液晶ディスプレイの採用
- 新設計されたフェアリングや燃料タンク
パワーよりも軽さと扱いやすさを追求
まずはエンジンからみていこう。水冷90度V型2気筒というレイアウトに変更はないが、排気量は従来型の955ccから65ccも小さい890ccとしている。また、ドゥカティの代名詞的な機構であったデスモドロミック(強制開閉バルブ機構)をやめ、一般的なバルブスプリング式を採用した点も大きな変更だ。
これにより最高出力は155psから120psと35psも減ったが、同時にエンジン単体重量は9kgも軽い54.4kgに仕上がっている。空冷式となるスクランブラーのエンジンと比較しても、約5.8kgも軽い。従来は大排気量エンジンの設計をベースとしていたが、この”V2”エンジンは当初からミドルクラスとして設計され、公道での扱いやすさを念頭に開発された。そのための最優先事項が、必要十分なパワーと軽さだ。
吸気側バルブの作動タイミングを最大52度の範囲で変える可変式とし(IVT)、低回転域でのリニアなトルクと、高回転域での俊敏なスロットルレスポンスを両立した。インテークバルブにはMotoGPマシン同様のDLC(ダイヤモンドライクカーボン)加工を施し、表面の円滑度と硬度を高めている。
IVTにより、新型V2エンジンは3000rpmで最大トルクの70%以上を発生し、3500~11000rpmでは常に最大トルクの80%を維持する。このため全域にわたって扱いやすく、パワフルなエンジン特性を実現した。
シリンダーのバンク角は90度だが、エンジンを後ろへ20度傾けて搭載している。これにより慣性モーメントとエンジンの前後長の増加を抑え、車体の重量配分を最適化。車両のコントロール性を向上させている。
ドゥカティが行った従来型との走行性能比較では、エンジン出力の低下によりストレートでの最高速度は下回るが、それに対してコーナリングスピードが上昇。とくに低速コーナーでのタイム短縮が際立ち、結果として従来型とほぼ同等のラップタイムを刻めるという。
また、新型V2エンジンには『120psバージョン』と『115psバージョン』の2種類が用意される。前者は、5速と6速のレブリミットが11350rpmに設定されるほか、オプションのレーシングエキゾーストを装着した場合は最高出力は126ps、最大トルクは9.99 kg-mまで向上する。
後者の出力値は115ps、9.39kg-mとなるが、より堅牢なコネクティングロッドとフライホイールを装備する。これにより慣性モーメントは12%、エンジン重量も0.51kg増加するが、とくに低回転域におけるパワーバランスの最適化が図られている。また、USB充電ポートなどの電力需要に対応するため、より強力なオルタネーター(発電機)を搭載する。
スイングアームは片持ち式から両持ち式へ
排気系では、エキゾーストパイプが上方へ向かって立ち上がりコンパクトなサイレンサーに接続するアップタイプの2本出しとなった。車体下部にサイレンサーが設置されていた従来型やV4とは一線を画すディテールで、スタイリング全体の印象を大きく変えている。
新型V2エンジンはもちろんユーロ5+に適合し、メンテナンスサイクルはバルブクリアランス点検は30000km、オイル交換は15000kmとしている。
新型V4エンジンを搭載するフレームは、従来型同様に内部をエアボックスとする鋳造アルミ製モノコック式で、エンジンもシャーシとして活用する構造にも変更はないが、0.2kgの軽量化が図られた。鋳造アルミ製のリヤフレームは上部がメインフレーム、下部はエンジンに固定される。また、リヤフレームに装着されるタンデムステップは簡単に脱着できるようになっている。
エンジンにマウントされるスイングアームは低圧鋳造で製造され、部材の厚さを抑えることに成功。従来の片持ち式から両持ち式に変更したことで外観が大きく変わっただけでなく、コーナリングでの安定性とコントロール性を向上させている。
エンジンをはじめとする軽量化は車体全体で徹底され、車重は従来型よりも17kgも軽くすることに成功している。
電子制御デバイス群も最新版にアップデート
サスペンションは、スタンダードモデルがフロントにマルゾッキ製43mmフルジャスタブル倒立フォーク、リヤにKYB製フルアジャスタブルモノショックを装備。Sはフロントがオーリンズ製NIX30 TiNコーティング フルアジャスタブル43mm倒立フォーク、リヤにオーリンズ製フルアジャスタブルモノショックを備える。
電子制御デバイス群は、新型パニガーレV4同様に最新のものにアップデートされた。コーナリングABS、ドゥカティウィリーコントロール(DWC)、ドゥカティトラクションコントロール(DTC)、エンジンブレーキコントロール(EDC)、ドゥカティクイックシフト2.0(DQC)、オートタイヤキャリブレーション、ドゥカティブレーキライト(DBL)が標準装備となり、ドゥカティパワーローンチ(DPL)とドゥカティピットリミッターはSのみに装備される。ライディングモードは、レース、スポーツ、ロード、ウェットの4種から選択可能だ。
また、ラップタイマープロ、クルーズコントロール、タイヤ空気圧モニタリングシステム(TPMS)、盗難防止システム、USBポート、ドゥカティマルチメディアシステム(DMS)、ターンバイターンナビゲーション、グリップヒーターは純正オプションとして用意される。
メーターは5インチフルカラー液晶ディスプレイ(解像度800×600ピクセル)を採用。速度やエンジン回転はもちろん多彩な電子制御デバイス群の作動状況を瞬時に把握するインターフェイスで、公道とサーキットなど走行状況に応じて最適化された3種の表示レイアウトが用意されている。
また、Sにはリチウムイオンバッテリーを搭載し、重量軽減に貢献している。
ライディングポジションも扱いやすさを考慮し変更
外装デザインは、パニガーレV4からインスピレーションを受けたデザインとしながらも、完全新設計であるパニガーレV2に最適化した。ウイングレットを撤廃しつつ、フロントの負荷を軽減。エアロダイナミクスを追求したフェアリングは、シンプルながらもボリューム感のあるボディパネルで構成される。
サイドフェアリングは走行風をライダーの脚部に導くエアダクトを設け、エンジンの放熱を緩和。これはラジエターからの熱気を排出するよう設計されたアッパーベントとの相乗効果をもたらし、高温状態になるサーキット走行や真夏の公道走行において有効に機能する。
燃料タンクもパニガーレV4同様に、ブレーキングやコーナリングにおけるライダーの負荷をサポートするべく人間工学に基づいた形状を追求。ライダーとの接触面から金属パーツをなくすとともに、バイクとの一体感を高める造形を実現している。これによりブレーキングでの腕の負荷、コーナリングで身体をずらす際の負荷も軽減した。
ライディングポジションの最適化も行われ、手首の負担を軽減する高さと角度にセットされたハンドルバー、膝の疲労を抑える位置に設けられたフットペグ、十分な厚みを確保しつつも高さ837mmに抑えたシートなどで、市街地走行からスポーツ走行まで扱いやすい特性とした。パッセンジャーシートはスタンダードでは標準装備だが、Sではシングルシートが標準となる。
車体色は、スタンダードとS、いずれもドゥカティレッド(赤)のみとなる。国内における車両価格はスタンダードが211万9000円、Sが240万8000円だが、導入時期は未定だ。
ストリートファイターV2も同様に進化
“ストリートファイター”は、ドゥカティのスーパーバイクからフェアリングを外し、バーハンドルによるワイドでアップライトな乗車姿勢などによって市街地走行でのパフォーマンスを重視したモデルだ。このたびの新型”ストリートファイターV2”も、新型パニガーレV2と同じエンジンとシャーシ、最新電子制御デバイス群を採用し、外装デザインの刷新を受けてのフルモデルチェンジとなった。
なので、ここでは新型パニガーレV2とのおもな相違点をみていこう。
フェアリングが簡素化されたことなどで、車重はパニガーレV2よりも約1kg軽く仕上がっている。エンジン最高出力と最大トルク、トランスミッションのギヤ比、最終減速比はパニガーレV2と同一だが、スイングアームは30mm延長、リヤホイールトラベルは10mm増の160mm、キャスター角は0.5度増の24.1度、トレールは10mm増の103mm、ホイールベースは28mm増の1493mmと異なるディメンションを持ち、サーキットよりも公道を主眼としたリセッティングが行われた。なお、シート高は1mm高い838mmとなっている。
スタンダードはサスペンションがザックス+KYBとタンデム仕様、Sは前後オーリンズ+シングルシート仕様となること、車体色がドゥカティレッド(赤)の1色のみとなるのはパニガーレV2と同じだ。車両価格はスタンダードが194万円、Sが222万9000円で、国内導入時期は未定だ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ドゥカティ)
スクランブラー誕生10周年。スタンダードモデルと特別仕様車を発表 ドゥカティ スクランブラーは、2014年に登場したネオクラシックシリーズで、1960~1970年代に人気を博したモデルをモチーフとした[…]
熟成度が深まったアドベンチャーツアラー ムルティストラーダはドゥカティのアドベンチャーツアラーで、2021年のフルモデルチェンジで1158cc水冷V型4気筒エンジン『V4グランツーリスモ』を搭載した。[…]
ライダーを様々な驚きで包み込む、パニガーレV4S 5速、270km/hからフルブレーキングしながら2速までシフトダウン。驚くほどの減速率でNEWパニガーレV4Sは、クリッピングポイントへと向かっていく[…]
全日本ロードレース最高峰クラスで外国車が優勝したのも初 全日本ロードレース選手権シリーズ後半戦のスタートとなる第5戦もてぎ2&4レースで、ついにDUCATI Team KAGAYAMAの水野涼[…]
駒井俊之(こまい・としゆき)/1963年生まれ。バイクレース専門サイト「Racing Heroes」の運営者。撮影から原稿製作まで1人で行う。“バイクレースはヒューマンスポーツ”を信条に、レースの人間[…]
最新の関連記事(新型大型二輪 [751〜1000cc])
上級仕様にふさわしい装いのMT-09 SP MT-09 SPの“スペシャル”たる所以はその豪華装備にある。無印MT-09に対して、ラジアルマウントのフロントブレーキキャリパーがブレンボ製となり、前後の[…]
オートマY-AMTを標準装備、レーダーによる支援技術も進化 ヤマハは11月7日、EICMA 2024で初公開した新型スポーツツーリングモデル「トレーサー9 GT+」を日本国内でも2025年夏以降に発売[…]
伝説のロゴが語る歴史 2024年現在でこそ、三角形にブロック体のアルファベットといった趣の、トライアンフロゴ。しかし100年以上続く、歴史あるブランドだけあって、1902年の盾型デザインに始まり、いく[…]
発表から2年で早くも外観デザインを変更! ホンダは欧州ミラノショーで新型「CB750ホーネット」を発表した。変更点は主に3つで、まずデュアルLEDプロジェクターヘッドライトの採用によりストリートファイ[…]
スポーツ性能を高めたBMWフラッグシップスポーツ BMW S1000RRのおもなスペックとアップデート S1000RRは並列4気筒エンジンを搭載するスーパースポーツで、BMWがWSBK参戦を視野に入れ[…]
人気記事ランキング(全体)
第1位:X-Fifteen[SHOEI] 2024年10月時点での1位は、SHOEIのスポーツモデル「X-Fifteen」。東雲店ではスポーツモデルが人気とのことで「とにかく一番いいモデルが欲しい」と[…]
トライクは転ぶ? 素朴な疑問 二輪(バイク)に乗っている方や、四輪(クルマ)に乗っている方から聞かれる質問のひとつが、「トライクって転倒しないの?」というものです。 トライクには3つのタイヤがあり、二[…]
スマホ連携TFTやスマートキー装備のDX ホンダがミラノショーで新型PCX125(日本名:PCX)を発表した。2023年には欧州のスクーターセグメントでベストセラーになったPCX125だが、日本でも原[…]
第1位:MFK-293 ミニフィールドシートバッグEX [TANAX] 本山さん曰く「シートバッグは小/中/大/特大の4つのサイズに分けられますが、中でも容量19〜27Lの小サイズが人気」とのこと。そ[…]
【第1位】ホンダ モンキー125:49票 チャンピオンに輝いたのは、現代に蘇ったホンダのかわいい”おサルさん”です! 初代は遊園地用のファンバイクとして、1961年に誕生しました。以来長く愛され、20[…]
最新の投稿記事(全体)
最強の刺客・マルケスがやってくる前に みなさん、第19戦マレーシアGP(11月1日~3日)はご覧になりましたよね? ワタシは改めて、「MotoGPライダーはすげえ、ハンパねえ!」と、心から思った。 チ[…]
ミドルSSの究極を目指しフルチェンジ パニガーレはドゥカティが誇るスーパーバイクで、2018年からはV型4気筒エンジンを搭載し、その戦闘力を高めるとともに車名がパニガーレV4となった。そして2020年[…]
上級仕様にふさわしい装いのMT-09 SP MT-09 SPの“スペシャル”たる所以はその豪華装備にある。無印MT-09に対して、ラジアルマウントのフロントブレーキキャリパーがブレンボ製となり、前後の[…]
料金所の停車、30cm行き過ぎたらバックが必要に たとえば地下駐車場入り口のチケット発行機や、出口の料金支払い機、こうしたゲートのある料金所で停車するとき、何かの拍子で30cmほど行きすぎると、機械に[…]
第1位:X-Fifteen[SHOEI] 2024年10月時点での1位は、SHOEIのスポーツモデル「X-Fifteen」。東雲店ではスポーツモデルが人気とのことで「とにかく一番いいモデルが欲しい」と[…]
- 1
- 2